コーヒー飲み比べテスト: セブンイレブンのコーヒーが圧勝したのは、単品販売のスケールメリットです

 結果を詳しくお知らせします(戸松君のデータから)。5社からテイクアウトするコーヒーがなるべく同じ条件になるよう、買い方も工夫しました。市ヶ谷近辺の店で購入する時間を同期させることに。ゼミ生たちがLINEを使って、ゼミ長から「買い方、はじめ!」の指令で購入開始。



<試飲の方法>
 テストの条件を揃えるために、つぎのような手続きとりました。皆んなで相談した方法です。わが学生たちは、かなり賢いぞ!!

1 <比較する商品>
 テイクアウトしてくるのは市ヶ谷周辺の店を選び、コーヒーはその店でいちばん標準的なアイテムにする。

2 <条件の統一>
 試飲時にコーヒーの温度がほぼ同じになるよう、早く帰ってきた5組(各店、2人ずつで2カップをテイクアウト)は、大学院の建物の外で待っていること。そして、全5組がカップをもって帰還後に、3Fの教室に戻ってくること。

3 <目隠しテスト>
 評価者(わたしを含む15人)は隣りの部屋で待機していて、コーヒーがあまり好きではない女子2人(非評価者)が、試飲部屋のテーブルの上に、紙コップ(マジックでA~Eと記入、ブラインドで銘柄はわからないようにしてある)を準備しておく。

4 <評価の方法>
 評価者は、A~Eのコーヒーを飲んでから、最も好きなコーヒーから順番に、「1」~「5」で順位(ランク)をつける。なお、試飲前には別室で、ふだん好きで飲んでいるコーヒーの銘柄(マーク)を申告しておくこと。(D:ドトール、S:スターバックス、T:タリーズ、7:セブンイレブン、M:マクドナルド、なければ、O:その他と記入のこと)

5 <ソムリエ・テスト>  
 比較試飲したブランドが正しく言い当てられるかどうかを、各自チェックしてみること。それぞれA~Eのカップに、「D、S、T、7、M」とブランドのマークを記入していく。  

<試飲したコーヒーのスペック>
 *飲むときの条件が同じかどうか、豆の種類とコーヒーの入れ方(マシーン)を尋ねてみました。

S、スターバックス:
 ドリップコーヒー(tall) ¥340×2 = ¥680
 ドリップ式
 デジタルバンブリア(マシン名)or ハンドドリップ
 Xmasブレンドインドネシア産エイジドコーヒー

D、ドトール:
 ブレンドコーヒー(M) ¥250×2 = ¥500
 豆はドトール独自にブレンドしたもの
 コーヒーマシーンで一杯一杯ドリップ

T、タリーズ
 本日のコーヒー(モカジャバ,tall) ¥340×2 = ¥680
 LUXUS(マシン名) 粉でドリップ→ポットで保温

M、マクドナルド
 プレミアムローストコーヒー(M) ¥150×2 = ¥300
 アメリカンブレンド ドリップ式
 機械は社外秘(笑)

7、セブンイレブン
 ホットコーヒー(L) ¥150×2 = ¥300
 マシーンを見ればわかる

<学生から支持されたコーヒー> 総数15人   

1 ランキング                  
 A:ドトール(D) ~ 0票
 B:スターバックス(S) ~ 2票
 C:タリーズ (T) ~ 1票
 D:セブンイレブン(7) ~ 9票
 E:マクドナルド(M)~ 3票

2 5点法 平均値(1位=5点 ~ 5位=1点)
 A:ドトール(D) ~ 1.6点
 B:スターバックス(S) ~ 3.3点
 C:タリーズ(T) ~ 2.6点
 D:セブンイレブン(7)~ 4.1点
 E:マクドナルド(M) ~  3.4点

<解説>
 今回の調査は、学生たちはもちろんのこと、わたしにとっても実に衝撃的でした。
 「セブンのコーヒーが一位」は予想してはいたのですが、これほどの圧勝になるとは思ってもみなかったことでした。15人中に9人(60%)が「最も好き」と支持しています。サンプル数が少ないとはいえ、これは統計的に有意な結果です。たぶん、別の機会に実施してもほぼ同じ結果が得られると思います。
 ここから、ふたつのことを考えてみたいと思います。(1)セブンのコーヒーがなぜトップになったのか?(2)そもそも各社が提供するコーヒーの味(おいしさとブレンド)に決定的なちがいがあるのかどうか? もしあるとすると、その背後にある要因はなになのかです。

 二番目の問い(2)のほうから考えてみましょう。
 セブンのコーヒーがダントツトップなので、(学生達が)コーヒーをおいしいと感じる感覚にはちがいがあるようです。ただし、目隠しテストですから、ブランド名はわからないで飲んでいます。試飲に使用したカップは、白い紙コップでした。
 わたし自身は、ふだん好きで飲んでいるコーヒー(SやT)は絶対にわかると思っていましたが、ソムリエテストでは「0点」でした。わたしも「セブン(7)」がいちばんおいしいと感じました。そう考えてみると、わたしたちは、やはり店舗の中では、「店の雰囲気やカップに入ったロゴマークを消費している」のだと思います。
 女子学生たちに聞いたところ、スタバやタリーズでは、フラぺチーノなど、コーヒー以外の飲み物を頼んでいることが明らかになりました。スタバやタリーズでは、彼女たちはコーヒーは飲まないらしいのです。だから、そもそもコーヒーの味の違いなどはわからないものなのです。
 わたしも、かなりの程度、この実験で自信を喪失しました。わたしなどは、単にカフェインを飲んでいただけなのだと。アロマを楽しんでいたはずなのです。たしかに、試飲をする前に、香りをかいだ時点で「ブランドのマーク」を記入してみましたが、これも見事に全部外れていました。

 最初の問い(1)を考えてみます。5つの中で、なぜ、セブンのコーヒーが断然の一番だったのか?
 わたしも学生たちも、必ずしも「セブン」のコーヒーをふだん好きで飲み慣れているとは答えていません。しかし、おいしさで最上位にランクしていますから、それが正しいとすると、それには理由があるはずです。
 先週のゼミで、「日本のコーヒー(ショップ、ブランド)で、売上で最後に最上位で残るのはどれか? セブンイレブン?マクカフェ?スタバ?」と学生に尋ねてみました。その結果は、以下の通りの計算になりました(小川の試算)。
 セブンイレブンの店舗数は、全国におおよそ1万5千店。新聞報道などによると、一店舗当たり一日平均で91杯のコーヒーが売れています。一杯100円ですから、一店舗の年間売上は平均で、9100円×365日=332万円。1万5千店舗ですから、セブンイレブン全体では、100円コーヒーの年間売上が約500億円になります。

 それに対して、スターバックはどうかと言えば、国内の店舗数は約1000店。一日の来店客数は約700人。客の半分がコーヒーを頼むとして(女性はほとんどが非コーヒー党だから)、コーヒーの一日の売上は、一店舗当たり300円×350人=10万5千円。365日では、4030万円になります(平均日販は約35万円)。したがって、スタバ全店でコーヒーの年間売上は約400億円です。
 ちなみに、2013年10月期のスタバの売上は、1165億円でした(IR情報から)。コーヒーの構成比は、約35%(約3分の1)です。このフェルミ推定は正しいでしょうかね?

 二社を比較すると、コーヒーの売上では、セブンよりもスタバの方が大きいように見えます。しかし、考えてみてください。セブンは単品でのコーヒー売上です。スタバは、10種類以上の合計です。単品では、セブンのほうが少なく見積もっても5倍以上、売上は大きいのです。
 さらに、マシーンの状態を見てください。一杯ずつ入れるコーヒーの方が、おいしいに決まっています。スタバやタリーズやマックでは、「作り置きの」コーヒーのはずです。つまり、煎れたてではないのです。
 結論です。セブンは、自社焙煎でブレンドした豆を使っているでしょう。単品商売ですから、価格交渉力も品質管理も楽です。そのぶん、商品開発と物流を含めたロジスティクスに注力ができます。品質のばらつきも小さくできるはずです。そして、あの商品開発のしつこさと、他社を活用することに秀でたマネジメントチーム(チームMDの勝利)。
 どの側面から見ても、セブンが勝てる要素が大きいのです。以上、学生の舌と鼻は、正しく機能していたのではないでしょうか?

 もっとも、今回は15サンプルとN数が少ないことに加えて、スタバとタリーズでは、当日の豆が違っていたようにも思います。個人的には、スタバのコーヒーが一番おいしいと信じていましたから。
 試飲テストをもう一度実施して、再調査をしてみるつもりです。もっと寒くなると、結果は違ってくるのかもしれませんよね。