日銀の派手な金融政策の陰に隠れて見えないが、マクドナルドの販売が引き続き不調である。神楽坂下の店前を通っても、どことなくマックは元気がない。そうしたところに、3月の月次データが発表された。対前年比で既存店売上高は、12か月連続でマイナス記録を更新している。
マクドナルド本部(HP)から発表されるコメントは、さらに元気を失っている。自信喪失気味のコメントで、原田CEO の健康が心配になる。
最後の段にあるように、基本的なQSCの向上に努力してほしい。目先の成果を追いかけないのは正解だと思う。だが、米国本社が原田さんにそのための時間的な余裕をくれるかどうか?
米国資本主義は、究極の短期志向である。本国においても、マックの業績は低迷している。
余談ではあるが、昨日、吉野家が「牛丼の価格を値引きすること」を発表した。これまでも時限的に値引き攻勢をかけていたのだが、今回は、通常売価を380円から280円に引き下げた。BSEが問題になる以前の価格への回帰である。
米国からの牛肉の輸入規制が解除されたことを受けての措置である。しかし、マックと同様に、これも時代の流れと逆行している。すき家(ゼンショー)との対抗策で値引は必要だ。だが、消費者は品質(おいしい牛丼:)を求めている。
タナボタで原価率が落ちたのだから、それは品質や商品の改善に反映すべきである。「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」のやり方を見てほしい。余裕ができた原資は、商品ボリュームのアップや品質向上、店内の清掃(クレンリネス)や従業員の待遇改善(賃金支払増、残業時間減)に向かうときだろう。
牛丼の値段を100円下げたら、客数が激増するような市場環境にはない。
さて、以下は、日本マクドナルドのHPから、毎月10日前後に発表される「月次コメント」である。
前年比で、客数はふたたび増加(5.8%)に転じているが、全店の売上のマイナス状態は変わっていない。BOGO(Buy One, Get One free)キャンペーンの効果である。
つまり、ディスカウントキャンペーンをやめたから、売上が増えたわけではない。BOGOは、形を変えた安売り路線である。実質は半値での販売である。当面の止血処置ではある。
わたしの予想だと、来月(4月)から、マックの業績は反転を始めることになる。その根拠は、日本経済の回復云々ではない。公表されている月次データで、2011年3月から2012年4月までの指数をよく見てほしい。ヒントは前年比の客数と客単価変化にある。
あとは、本来マックがもっていたはずの「QSC」の基本に立ち返ることだ。原田さんのポジションが、5月までキープできていることを祈るのみである。すでに、処方箋は書けているように見える。問題は、それまでの時間が確保できるかどうかである。
「日本マクドナルド月次データ」(2013年4月8日更新)
2013年3月の既存店売上高は対前年比-3.6%となりました。これは外食マーケットが引き続き厳しい環境であることに加え、持続的かつ収益性の高い売上を目指すマーケティング戦略に基づき、一過性の売上を獲得するためのディスカウントプロモーションを抑制したことが大きく影響しております。
一方で、対前年比で既存店客数は+5.8%、全店客数は+7.4%となりました。これは、マクドナルドの“春の風物詩”である「てりたま」「チーズてりたま」の販売に加え、「マックフライポテト」、「チキンマックナゲット」、「ハッシュポテト」を各対象期間中に1個買うと、同商品の無料券が1枚もらえるキャンペーンが大きく貢献しております。 4月5日からは「てりたま」シリーズの新メニューである「チキンてりたま」を販売しておりますが、今後も季節限定・期間限定の新商品を収益バランスを考慮しながら、投入してまいります。
今後も、お客様に引き続きご満足いただける高いレベルのQSC(品質、サービス、清潔さ)を維持しながら、長期的かつ収益性の高い成長にフォーカスした活動を強化してまいります。