サービスに対する満足度は、都市部より地方のほうが高い。例外は、福井、富山、島根の3県

 JCSIのデータを使用して、県別の顧客満足度(100点満点)のランキング表を作成してみた。2011年度の全サンプルを用いた分析結果である。数字を概観すると、日本の中心(東京や大阪)から離れるにしたがって、サービスに対する顧客満足度は上がっていくことがわかる。

 沖縄や北海道は、おもしろいことに県別のCSのランキングが上に来る。首都圏や近畿圏の中心都市圏(県)は、CSI(顧客満足度)のランクが下になる。後に指摘するが、わたしの仮説と異なるエリア(県)が6県ある。
 調査(JCSI)では、対象業界が32業種。全国で約10万サンプルを毎年抽出して調査している。以下のデータは、全サービス業種の県別平均値である。
 調査結果は、2009年から発表されているが、これまでは、県別にデータを分析したことはなかった。以下は、わたしが事務局に依頼して、計算した結果である。

 わたしの仮説は、「サービスに対する満足度は、同じ品質のサービスが提供されているとしたら、人口密度(店舗密度)と反比例する」というものである。
 顧客によるサービス評価は、代替的な小売業チェーンやサービス施設が存在しているかどうかに左右される。都市部では、たくさんの店舗やサービス機会があるので、一般利用客は、サービスに対して採点が辛くなる(傾向がありそうだ)。
 調査データは、ネット通販なども含んでいる。全国一律のサービスであるから、ネット関連のサービスは、通常のものと分離して分析することが必要だろう。だが、とりあえずは、一緒に分析してみた。

 次の表を、ご覧いただきたい(JCSIの2011年調査:全サンプル)。
 列の左から、CSの順位、県名、顧客満足度=CS平均値(100点満点、2011年度)、人口密度(県別ランキング、2011年)、県民の幸福度(ランキング:法政大学調査、2011年度)である。

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順位 県名   CS値 人口密度 幸福度
1  鹿児島県  72.2    36     35
2  青森県   72.0    41     40
3  沖縄県   71.7     9     41
4  山梨県   71.5    31    14
5  山口県   71.4    28    16
6  北海道   71.2    47    43
7  岡山県   71.2    24    24
8  鳥取県   71.1    37     4
9  佐賀県   71.1    16     5
10 長野県   71.0    38     7
11 秋田県   70.6    45   37
12 愛媛県   70.6    26   27
13 栃木県   70.5    22   26
14 熊本県   70.5    27    5
15 宮城県   70.5    20   36
16 宮崎県   70.5    39   27
17 岩手県   70.5    46   22
18 長崎県   70.4    17   22
19 静岡県   70.3    13   19
20 新潟県   70.3    35   10
21 福岡県   70.2     7   39
22 大分県   70.2    34   14
23 香川県   70.2    11   12
24 広島県   70.0    18   18
25 福島県   69.9    40   27
26 徳島県   69.9    33   16
27 三重県   69.9    19    9
28 茨城県   69.9    12   30
29 山形県   69.8    42   19
30 群馬県   69.8    21   25
31 京都府   69.8    10   42
32 滋賀県   69.7    15   11
33 兵庫県   69.6     8    45
34 大阪府   69.6     2    47
35 神奈川県 69.6      3    33
36 東京都    69.3     1   38
37 岐阜県    69.2   30   13
38 奈良県    69.1    14   31
39 千葉県   69.1      6     33
40 愛知県   69.1     5    21
41 石川県   68.8    23    3
42 埼玉県   68.7     4    44
43 高知県   68.6    43    46
44 和歌山県 68.3    29   32
45 福井県   68.2   32     1
46 島根県   67.4   44     8
47 富山県   66.7   25     2
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 さて、この表から、つぎのようなことが推測できる。

(1)県別のCSI(顧客満足度)は、人口密度(順位)と弱く相関している。
 単純相関係数は、0.174である。すなわち、人口密度が小さい(ランクが下位)とサービスに対する満足度が高くなる。
(2)県別のCSI(顧客満足度)は、幸福度指数(順位)と弱く逆相関している。
 単純相関係数は、0.144である。すなわち、県民の幸福度が高い県(ランクが上位)は、サービスに対する満足度も高い傾向が見られる。
(3)散布図を描いてみると分かるが、CS平均値で最下位の5県は、この法則が当てはまらない。例外である(外れ値)。
 低いCSIに対して、相対的に人口密度は小さく(5県:高知、和歌山、福井、島根、富山)、幸福度(3県:福井、島根、富山)は高い傾向が見られる。

 そこで、この5県を外れ値としてデータから除くと、
(4)5県を除くと、県別のCSI(顧客満足度)は、人口密度(順位)と強く相関していることがわかる。
 両者の単純相関係数は、0.506である(さらに、意外に人口密度が高い沖縄を除くと0.57)。すなわち、日本海側の3県と高知・和歌山(異常にCSが低い県)をデータから除くと、人口密度とサービス満足度は高い相関関係を示すことがわかる。

 このことは、サービス業の競争度合を反映したものと考えられる。人口密度(店舗密度)が低いと、選択できる店舗が少なくなる。店舗密度が小さく、競争が厳しくない場合は、サービスに対する顧客の評価満足が相対的に高くなるのではないか?(この解釈は、正しいだろうか?)
 この推論(仮説)は、2009年にJCSIが発表されたときから、ある程度はわかっていたことである。今回のデータで、例外の5県を除くと、ほぼ仮説通りの結論が得られたことになる。
 気になるのは、なぜ5つの県だけが、人口密度の法則に従わないかである。とくに、石川県を含んだ、北陸3県(福井、富山、石川)は、わたしが関わっているCS調査(B2B)でも、特異データの県として知られている。
 法政大学大学院の坂本研究室によると、この3県は圧倒的に幸福度が高い(表を参照のこと)。わたしたちの調査では、サービスに対するCSと従業員満足度(ES)が逆に低い県である。この矛盾をどのように説明できるのだろうか?
 また、もう二つの低いCSの県がある。和歌山と高知である。その特異性は、いったいどこにあるのだろうか?謎は深まるばかりである。