あなた(の会社)は誰と闘っているのですか? 中国の若者からの「現地ユニクロ」についての手紙

 インパックの守重知量社長(JFMA副会長)から、一週間に何度か「社長通信」というノートが送付されてくる。社員向けのものらしいのだが、本日分では、「服部セイコー」(の競争相手)について触れられていた。セイコーの雫石工場を見学したときの挿話である。紹介してみたい。

 「根っこは同じ」というタイトルの記事だった。
 例え話として、「セイコーの競争相手」についての(服部)社長談話が載っていた。以下では、編集して引用させていただく。

 「シチズンの人にビジネスでの商売敵は誰かと言うと、例外なく”セイコー”と答えます。同じ質問をセイコーに社員に聞くと決して”シチズン”と答えず、グループ内の企業を答えるというのです。服部会長は、現状のシチズンとの差はここにあるのではないかとおっしゃっていました。勿論、今後の事は考えておられます。
 一方、民社党の大敗も同じなのでしょう。自民党の敵は民主党でありました。一方、民主党は党内での争いばかりで、今後の日本をどうするかは蚊帳の外のような対応をしていました。勝てるわけがありません。自民を攻める前に自ら崩れて行くようでした」(2012年12月25日、守重社長)
 
 ビジネスでも人生でも、自分が誰と闘っているのかを、わたしたちはいつも自問自答している。セイコーも民主党も、根っ子は同じある。仲間と競争(喧嘩)をしてもはじまらない。守重さんは、そのように言いたいのだと思う。わかりきったことだが、仲間と競争するような企業に明るい未来はい。
 同じことだろう。セイコーのような業界リーダーたる企業が、同業他社を競争相手にみなすようでは先はない。過去の自分(成功の実績)ときびしく競うべきだろう。

 そんな折もおり、本日、日本企業に勤務している中国の若者からメールがきた。久しぶりのメールだった。
 以前、院生(IM研究科)の岩崎一彦くんが、中国で日本製鉄道模型(Nゲージ、ジオラマ)を販売するビジネスを立ち上げることを考えていたとき、わたしのブログ記事(岩崎君のプロジェクト紹介)を見て中国本土からネットで連絡をしてきた男性からだった。
 P君からのメールも、オリジナルの文章を一部、編集して紹介する(カッコは、わたしが補った文章)。

  
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 小川先生

 以前、「ホビー文化の成熟度と海外進出について」のメールで連絡したのものです。(中略)
昨年、家の付近のデパートにあるユニクロが開店。来客結構多いので、売上は期待できそうです。でも、それと比べて、(日本製の)家電とか機械など、最近、中国での人気が落ちています。政治の原因はあると思いますが、実際はテレビとか携帯で、ドイツ系とアメリカ系より、(日本製は)使い勝手がよくないし、価格が高いことも事実です。 (中略: この後、中国のコピー文化について非難)

 私が小さいの頃は、皆日本の車に対して、印象はとってもよかったです。でも、上記の理由で、今は中国内でもっと人気のあるのは、ドイツ系の会社で制霸(ワーゲン?)です。医療機械も、そろそろ家電も。
 ユニクロ社は全然逆です、その理由は業界が違うとかではない(と思います)。ユニクロ社の反応スピードは結構速いと思います。それに、日本で販売している物と、中国の商品は品質とレベルの格差がないです。

 Pより(@上海 2012年12月25日)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 要するに、ユニクロが中国人(日系機械商社に勤務)に評価されているのは、経営者と会社の運営の姿勢が、尊敬(瞠目)に値するからである。自社の現在の成功にとらわれず、スピート感を持っていまの成功をさらに越えていこうとする姿を、彼は冷静に見ているのである。
 そして、もっと大切なことは、「尖閣諸島問題」に端を発する政治的な困難にも関わらず、ユニクロが出店スピードを緩めない一貫性について、心からの称賛を惜しまないと推測できるからである。
 中国には、「最初に井戸を掘った人のことを忘れない」という諺がある。井戸を掘って最初に出てくるのは泥水である。汚い水をあえて飲もうとする人を中国人は尊敬する。それは、何も中国人に限ったことではないだろう。
 いまの日本企業(困難に直面して腰が引けている)は、一般の良識ある中国人(政治人ではない!)の本音を知るべきである。
 ユニクロもハニーズも、資生堂もサイゼリヤも、困難に直面しているいまも、一歩も引いていない。そして、自社の過去と現在の成果と苦闘している。自分と戦っている人間こそが美しく、尊敬に値する。