なぜ「マーケティング実行論」という実習授業を実施しているのか?

 先月からスタートした「マーケティング実行論」は、今週金曜日で6回目になる。シラバスは掲載済みだが、初日配布した「なぜ実行論をはじめるのか?」というレジュメを文章化してみた。受講者には復習を兼ねて、ブログ読者には参考資料として。大学院で実習的な授業を行う意義について理解してもらいたいと思う。

 なぜ、「マーケティング実行論」なる講座を始める気になったのか?
 作成配布: 2012年11月16日 小川メモ

1 出版が目的
 新しい本『書を捨てて街に出よう!(仮)』を、来年度に小学館から出版することになっている。現実的な理由としては、編集者が、『しまむらとヤオコー』(2010年1月)を担当してくれた園田さんである。
 授業の内容(演習を含む)は、そのまま、アシスタントの青木が授業に参加して、テキストを作成している。

2 計画と実行の関係
 マーケティングは、「実行」してみないと「結果」が得られない。マーケティングという学問は、その性格上、単に計画するだけではまったく意味をなさない。だから、何らかの結果が見える授業形態にしないと、単なるケーススタディで終わってしまう。
 長年、経営教育をしてきて、クラスディスカッションだけでは、「机上の空論」にしかならないことを身に染みて感じている。事例研究には、もう飽き飽きしている。だから、座学をなるべく少なくして、自分たちで立てた仮説を検証するための観察・実行の部分を授業に組み込むことにした。

3 「解」は「現場」にしかない
 考えてみればすごく明確なのだが、マーケティングを実行するということは、現場に出るということである。その結果は、現場でしか見られない。もちろん現場に行かなくとも、データは上がってくるのだが、微妙なニュアンスや雰囲気は、実際に現場に足を運んでみないと把握できない。
 自分で実行した結果を、現場で環境を丸ごと見て観察する必要がある。そうしないと、ひとりよがりの解釈になる。できれば、一人ではなくグループで観察したほうが多様な意見が出てくる。所詮、ひとりの人間のセンサーには限界がある。3人寄れば文殊の知恵。

4 解釈や方法論は、どこにも書かれていない
 だから、わたし(小川)が自分で作るしかない。先駆者はいない。誰も教えてくれないから、山本五十六ではないが、わたしが実行してみて、やらせてほめてようやく結果を解釈できるようになる。

5 「実行と検証の作法」(方法論)を教えて、結果を現場(相手企業)に提供することにする
 現場に入る込むためには、協力者(企業)が必要である。観察相手からすると、何らかのフィードバックがほしい。そのための返礼は、学生たちからの具体的な提案である。そう、智恵を出さないと授業体系が継続できない。

6 体系的には教えるためには、方法論を開拓するしかない。
 繰り返しになるが、体系的に教えることで個々の事例が活きてくる。方法論は存在しなのだから、学生達と開拓していくしない。

 最後に、「実行論の体系(部品)」は、どのようなものから構成されるのか?を示して、このブログを終わることにする。

(1)頼りになる理論
 マーケティング基礎論、市場調査、統計データ分析、人間観察、心理学、社会学など

(2)観察対象(場所)
 サービス施設、乗り物、宿泊施設、公的な場所、人間(経営者、従業員、マネジャー)、小売店、サービス施設、人間の移動空間(駅ナカ、電車、飛行機、車、船)など
レジ、サイン、POP、広告(雑誌、チラシ、テレビ、、)

(3)測定手段・分析手法
 ・カウンター(人数計測、手動と自動計測器)
 ・メジャー(距離)
 ・ストップウォッチ(時間計測、携帯を使うことも可能)
 ・レコーダー(音声記録)
 ・デジカメ(画像記録)などなど