JFMAトレンドツアーで、シドニー、メルボルン、タスマニア、ブリスベーンに滞在していた。今朝6時に成田に帰ってきた。オーストラリア大使館の西川さんを除いて、11人全員が無事に帰国している。西川さんは、シドニーに残って仕事をしている。収穫の多い旅であった。
わたしたちが日本を離れている間に、石原東京都知事の辞任劇があった。この国は、どのような方向を目指していくのだろうか? 自国を離れていると、客観的に見えてくることがある。
例えば、今回はオーストラリアでは、花き産業を中心に、農場や加工場、輸出入商社や小売店を訪問した。それ以外にも、豪州が得意としている農産物や資源産業の様子を、通訳の人やオーストラリア大使館の関係者(経済担当部門)から伺うことができた。
資源調達と供給の現場から見えてくる絵図は、オーストラリアと日本の関係を超えた、アジア・オセアニア地区の密接な多国間関係である。わたしたちは、資源(鉄、石炭、ボーキサイト)や農産物(小麦、牛肉、乳製品)の調達で、大きくオーストラリアに依存している。この関係は互恵的であるが、資源や農産品の供給に関しては、日豪の間に中国や韓国が割って入ってくる。
例えば、タスマニアの北西部の町(?)にあった木材チップ工場が、最近になって倒産した。いま身売りに出されているのだが、現状では買い手が見つかっていない。倒産した理由は別にもあるようだが、基本的には、現地資源(木材チップ)の最大の買い手だった日本経済が長期停滞しているからである。それと、新興国である中国経済に変調が見られるからでもある。
アフリカやアジア地区で、一時の日本のように、なんでもかんでも買いあさっていた中国にバブルが破裂する兆しがある。そのことを感じている中国の企業家が、豪州やニュージーランドの資源関連会社の買収を手控え始めている。
「デカプリング」(中国・アジア地区が世界経済からある程度は独立しているという仮説)どころではない。遠因は、欧米経済の低迷である。製品供給元としての中国経済には、いまや不況の波が及んできている。その循環の輪が、オーストラリアの資源部門の低迷を押し広げている。
むしろ、日本は強い円のおかげて、豪州やニュージーランドの資源関連企業を買収するのに、非常に有利な立場にある。一時主張されていた(資源の)「買い負け」は起こっていない。少なくとも、オセアニアと東南アジアについては、日本企業は優位性を保っている。
また、日本企業(イオン、サイゼリヤ、キリン、三菱商事)は、商品調達面でオーストラリアに深く根を下ろしている。関係は短期ではなく、長期的である(10~20年)。ローカル(ブリスベーンやタスマニアなど)の農場を歩いていると、マキタ、クボタなどの農機具メーカーや、カワサキ、スズキなどの二輪車メーカーが、いたるところに営業所を構えている。
日本企業は、政治システムが決断を下す前に、中国との関係に早々と見切りをつけようとしているようだ。日本メーカーが企図していた、調達基地としての「チャイナ+ワン(東南アジアの一カ国)」は昔語りである。いまや、「ハーフ(中国)&ハーフ(東南アジア)」である。
メーカーにしても小売業にしても、「13億市場」を無視するわけにはいかない。政治リスクが高まり、貿易上の優位性が失なわれようとしている中国からは、半分だけ足抜きをしようとしている。実は、オーストラリアは、その点では、有望な代替的な「ハーフ」の受け皿になりうる(とわたしは思う)。
従来は、人口が少ないこと(約2千万人)と賃金水準が高いこと(パートの賃金が時給1600円~)の二点から、消費基地としても生産基地としても、オーストラリアは日本にとってはもっとも重要な国ではなかった。
しかし、局面はかなり変わりつつある。資源が豊富なこと、ビジネスパートナーとして、かなり信頼が置けること。この二点は、二国間での深い関係性を構築するあたって、十分に考慮に値する要因である。
オーストラリアで、一時ほどの「日本語熱」はさめているようだ。それでも、冬の北海道は、ものすごい人気である。日本人の「ワーキングホリデー熱」はさめてはいない。日豪は、相互に交流する価値のあるペアである。