大分の玖珠から島根の奥出雲まで、高速道路を600KM。レンタカーの旅が終わった。ヤオコーの大島部長と藤田バイヤーに、広島インター手前で手を振って別れた。中国道をひとり米子方面に。さきほど海潮荘に着いた。土砂降りの山越えになった。
この宿は、名前からして不思議な宿だ。奥出雲の山の中にあるのに、海の潮という呼称。温泉宿のお姉さんに尋ねてみたら、ふたつの説があるとのこと。
一説は、この土地が昔は海だったから地名が海潮。もうひとつは、この地が、松江と出雲から塩(潮)を運ぶ街道だったから。どちらが正しいのかは、いまとなってはわからない。
お世話係りの彼女は、わずかに首を傾げた。たぶん、わたしのような宿泊客にしばしば尋ねられるのだろう。模範解答?およそ日本中の47都道府県、山奥の湯場をふらふらしてきたスタンプ帳おじさんには、あれではご満足はいただけない回答である。
回答欄には、第3のもっとありそうでなさそうな、いい加減な説明がほしいと思う(笑)。ここで、お酒を抱えた彼女がふたたび登場してきた。暇に任せて、真弓さんを10分ほど拘束してしまった。今夜の客がわたしひとり(もう一組のご夫婦はすでに退散)なので、海潮ばなしをしたところ、真面目に対応してくれた。ありがたい。
3年前の5月、出雲くにびきマラソン(ハーフ)の帰りに寄ったのが初めてだった。この宿が気に入ったのは、露天風呂の中に、樹齢800年の椎の樹がすくっと立っていたからだ。こんなに歴史のある風情の宿は多くはないだろう。日本の秘湯を守る会でも、これほどポリシーがしっかりしている宿を私は知らない。島根県で唯一の秘湯の宿だけのことはある。とても稀少だ。
今日は、夏休み明けの水曜日。あのときも、連休明けの日曜日だった。客が数えるほど。独り占めのどんぐり露天風呂に、食事処は、ライトアップされて手入れが行き届いた庭。まるで、ガーデナー(一流の庭師)の山田茂雄さんの作品のようなナチュラルな庭園だ。
酔いが回ってきた。明日は、出雲空港で、日野自動車さんと待ち合わせた。レンタカーを返却する。