先月は、フランチャイズシステムに関係する取材が多かった。これは偶然ではない。販売革新の7月特集号で、5人の経営者に取材させてもらっているからだ。インタビューがすべて終わったところで、共通テーマとして浮かび上がってきた「店舗運営方式」について整理しておきたい。
そもそもの発端は、5月7日の午前中の出来事からである。
正垣会長(サイゼリヤ)が、インタビューの最後に、「フードビジネスは、収益がどんどん落ちこんでいる。従来型のビジネス(モデル)では、この先も飲食店チェーンの商売はさらにきびしくなっていく」と感想を述べられた。
この発言は、おそらくは、居酒屋、牛丼店、ファミレス、ハンバーガーチェーン、とくに、マクドナルドを意識してのものだったように思う。さらには、コンビニエンスストアの本部と加盟店の関係を念頭においての発言だった。
フランチャイズ方式をとろうが、レギュラーチェーン(直営)方式であろうが、サービス残業などが制度的に許されなくなると、賃金支払いへのプレッシャーがきびしくなる。労働生産性があがらない限りは(人時生産性が上げられないと)、労賃が最終利益を圧迫する要因になる。
サイゼリヤは、レギュラーチェーン(直営店)である。それに対して、従来は直営店が8割以上を占めていた日本マクドナルドが、一昨年あたりからフランチャイズ方式に切り替え始めている。現状、直営店の約半分が加盟店に切り替わっている。それも、ひとりのオーナーが店舗数を5~10店舗を保有する「メガフランチャイジー」(エリアフランチャイジー)を増やしている。
ところが、今年度の決算で最高益を更新しているコンビニ上位3社(セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート)などは、以前から加盟店とのトラブルが絶えない。お弁当の廃棄負担問題、粗利の配分方式で本部と加盟店は、必ずしも良好な関係にあるとは言えない。
企業経営としての効率以前の根本的な問題が、そこに潜んでいる。労働生産性と賃金水準(待遇)と働き甲斐(モチベーション)に関する課題である。
そうした状況の中にあって、日本マクドナルドは、加盟店を増やす方向にある(詳しくは、原田泳幸CEOの著書『勝ち続ける経営』を参照)。おそらくは、本部と加盟店の役割分担として、現場の効率を高めるためには、加盟店を増やすほうが得策だとの判断と思われる。
マクドナルドのそうした経営方針に対して、サイゼリヤの正垣会長は、別のことを考えていられるようだった。つまりは、飲食店チェーンを運営するフランチャイズ企業の本部は、収益率をあげるために、長時間の労働と加盟店への負担を与件としなければ、経営が成り立たない。
レギュラーチェーン方式でないと、フードビジネスでは従業員にやさしい経営が実現できない。サイゼリヤの正垣会長は、きびしい表情でそのように話されていた(実際の表現の仕方は異なる)。
原材料の調達から加工まで、供給チェーンを変えて、科学的な経営を突き詰めていかないと、フードビジネスが産業としてはきびしい。 同感である。しかしサイゼリヤにとっても、理想を実現しようとすれば、きびしく遠い道のりである。
わがフラワービジネス業界は、なんとその前の段階にいることか。気が遠くなってくる。