隅田川の花火大会が激しい雨で、打ち上げの途中で中止になった。日本各地を襲っている突然の激しい雨を、ゲリラ豪雨と呼ぶらしい。日本は熱帯モンスーンの国に変わって、スコールの到来が日常茶飯事になった。
昨夜(8月3日)は、 首都圏でもっともたくさんの花火大会が開催される日だった。「メトロガイド」(営団地下鉄が発行するタブロイド紙)には、「関東花火絵巻」(二面)として、この日だけで10個の大会が開催されることが紹介されていた。
第54回いたばし花火大会、
第60回戸田橋花火大会、
第38回江戸川区花火大会、
第29回市川市民納涼花火大会、
2013年よこすか開国祭開国花火大会、
第18回上尾花火大会、
第30回朝霞市民祭り「彩夏祭」の国採食雑賀、
松戸市制記念70周年記念松戸花火大会イン2013、
幕張ビーチ花火フェスタ(第5回千葉市民花火大会)、
第53回佐倉市民花火大会。
またしても、せっかくの花火が雨にたたられてしまうのではないかと心配だった。
夕方の7時を少し過ぎて、大学院の中間発表(第一日)を終えて、JR市ヶ谷駅の改札を出て駅の階段を降りた。長い駅のホームには浴衣姿の乗客が多い。
めずらしく外国人の男性が浴衣姿で立っている。そういえば、電車も遅れ気味である。その瞬間は、首都圏で10個も花火大会があることは知らなかった。
携帯にメールが入った。「江戸川と市川で花火大会がありますよ!」
「遅い食事、よろしく!」と腹を減らした旦那が送ったメールへ、かみさんからの返信である。いつもの経路を変えて、このまま遠回りをして総武線で帰ることにした。黄色い電車が江戸川と荒川を渡るときに、電車から花火が見られるからだ。
予想に反して、電車の中はがらがらである。時刻は7時半。浴衣の君たちはすでに会場で「たまや!」を待って、涼んでいるのだろう。
江戸川の花火は、小岩あたりで音だけは耳にしたが、窓越しに花火は見えず。がっかり。しかし、市川に近づくと、「どん、どん、ど、どん」。大きな火玉の円が、夜空に開いた。
なぜか、花火の音には心が震える。
ジーンズのポケットに入れた携帯が、ぷるぷる震えた。メールが一通、入っている。
「こんばんは、お久しぶりです。家から、花火が見えます」
遠い町の住人から、しばらくぶりの連絡だった。まるでわたしが花火を見るために帰路を総武線に変えたことを知っているかのように、そのメールはポケットに忍び込んできた。
「こんばんは。いま帰り道。江戸川や市川で花火(花火の絵文字)をやってるみたいだから、総武線で帰ろうとしてます(笑)。回り道」
「いーですね、夏の花火」
いくつかの夏が過ぎて、祭りは終わったはずだったのだが。また夏がやってくるらしい。