本日も朝4時に目覚めた。氷点下1度が続いている。昨日は、メソンエオブジェの会場に到達するまで、車で1時間がかかった。15KMの道のりだそうだが。緩い坂道でも、ノーマルタイヤの車は登れずに立ち往生している。雪のために、のろのろ運転である。
世界的なデザイン展には、こんな気象条件のなかでも、いつもと変わらない数の人が訪れている。年二回開かれているが、展示会としての歴史はそれほど古くはない。せいぜい20年程度である。フランス人の発明である。衣食住の暮らしを豊かにするためのアイデアを提案する場所である。
当初は、顧客もヨーロッパ域内に限られていた。国際見本市として成長できたのは、新興国の富裕層の台頭によるものである。展示会としての急成長は、皮肉なことに、ソビエト連邦とベルリンの壁の崩壊からである。
富の蓄積は、アラブの石油マネー(70年代)に続き、ロシアと東欧圏で資源エネルギー富裕層が生まれた(90年代)。いまは、アジア圏の金持ちが、衣食住のラグシュアリー市場をリードしている(2000年代)。
フランスがデザインを起点に、世界中の贅沢マネーを引き寄せているのである。この展示会にしても、その実態は、勃興する新興国の経済に依存したバブリーなマーケット創造なのである。その他、庶民は、そのおこぼれにあずかっている。中世の貴族社会からいまにいたるまで、芸術文化はどこか社会の富の偏在に依存しているところがある。だからなのだろう。そのど真ん中で、豪華絢爛なデザインを楽しんでいそうなフランス人は、自国の未来やその才能に対して、意外に悲観的である。
メゾンエオブジェによって、世界中のデザイナーやビジネスマンの知恵を集積する仕組みを生み出したにもかかわらずである。哲学者たちは、どこか醒めたところがある。
メゾンエオブジェは、ファッションのパリコレと連動している。衣のトレンドカラー(アースカラー?)を、食と住のライフスタイルに落とし込んでいく。だから、富裕層の厚みとこの展示会の隆盛は比例している。裾野のラグシュアリーブランド産業を抱える、フランスとイタリアが圧勝している。
日本やあの米国でさえ、ここの世界では、いまだ贅沢ヒジネスの蚊帳の外にいる。むしろ顧客側に座っている。
欧州と米国の経済危機と、デザイン展示会やファッション産業は無縁である。雪とは関係なく、世界中から人がたくさん集まるわけだ。ただし、デザイン産業の勃興は、フランス全体を潤すわけではない。クリエーティブを離れると、物作りは、東欧やアジア、最近ではアフリカのテキスタイル産業に流れる。フランスの労働者階級があまねく、クリエーティブの分け前にあずかれるわけではない。フランスの、とくに若者たちが未来を悲観する理由である。
メゾンエオブジェの今年の傾向。
1.フランス産の素材、地産を大切に
2.自然回帰、アースカラー、木製品
3.ビンテージ品やリサイクル品、レトロなデザイン
4.子供用品が増えた