春学期の「マーケティング論」が、本日からスタートする。これまでの授業運営方法を、今年度は若干変更することにした。授業アンケートの意見を反映することにしたからである。従来は、学生の個人発表の時間を眺めに設けていたが、今年はレポート方式に変更した(課題1~課題7)。
まだ不確定な要素もあるが、特別講師(山中、志村、矢島、小林、寒竹)として5人を予定している。のちほど、授業シラバスと3か月間の講義予定(正規版)をアップする。
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IM研究科・2012年春学期「マーケティング論」 2012年5月10日(改訂5月31日)
Ⅰ 授業と事前アナウンスメント
1 授業の基本方針
IM研究科の大学院生のために、
(1) マーケティングの基本的な概念と枠組みを講義する。
それだけではなく、基礎概念の応用力を高めるために、
(2) 「事例に基づくクラス討議」(「テーマ討議」)、
(3) 「基礎文献の解説」(資料はデジタル配布)、
(4) 「課題事例の個人レポート」、
(5) 「外部講師による講演と討議」
を準備することにした。
2 授業運営の仕組み
(1)「通常のレクチャー」:
・14回分の<基礎講義>が準備されている。基礎概念を、講義1~講義14で学ぶ。
・それに加えて、特論1~特論2が用意されている。
(2)「事例に基づくクラス討議」:
・4つのテーマに関して、クラス討議を行う。
・大きなテーマ事例について、テーマ討議(1)~(4)とする。
(3)「必読文献の解説」
・ 各講義について、講義テーマに関連した<必読文献>を指定して配布する。
・ 5月10日(文献・討議資料)に、必読資料を配布する(電子的に配布)。
(4)「個人課題レポート」
・ 全部で10の事例を資料として配布する。そのうちの7つに関しては、解説した一週間後に、短いレポートを提出すること。A4で1~2枚の長さ。
(5)「外部講師による講演と討議」
・ 5人の外部講師にレクチャーをお願いする。
・ なるべく、今進行中の”生きた事例”による討議を行いたい。
3 テキスト・参考図書(五十音順)
全体のテキストは、*小川孔輔(2009)『マーケティング入門』日本経済新聞出版社。各章ごとに、以下の参考図書を使用する。
<テキスト>
*(1) 小川孔輔(2009)『マーケティング入門』日本経済新聞社(講義#と章が対応)
(2) 渥美俊一・桜井多恵子(2010)『チェーンストアの商品開発』ダイヤモンド・フリードマン社
(3) J.C.ウズニエ、J.A.リー(小川孔輔・本間大一監訳)(2011)『異文化適応のマーケティング』ピアソン桐原
(4) 嶋口充輝他編(1998~1999)『マーケティング革新の時代(1)~(4)』有斐閣
(5) R.P.フィスク他(小川孔輔・戸谷圭子監訳)(2005)『サービス・マーケティング入門』法政大学出版局
(6) 和田充夫・恩蔵直人・三浦俊彦(2000)『新版 マーケティング戦略』有斐閣
<参考図書>
(1) 安積敏政(2011)『サービス産業のアジア成長戦略』日刊工業新聞社
(2) 渥美俊一・桜井多恵子(2010)『チェーンストアの商品開発-これからの核商品企画と「売れ筋」づくりの基本』ダイヤモンド・フリードマン社
(3) 小川孔輔(2011)『ブランド戦略の実際 第2版』日経文庫
(4) 小川孔輔(2011)『しまむらとヤオコー』小学館
(5) 鶴蒔靖夫(2007)『訪問歯科診療が歯科医療の常識を変える―医師と患者を結ぶデンタルサポートの医療サービスネットワーク』IN通信社
(6) 松崎哲久(2002)『劇団四季と浅利慶太』文藝春秋
(7) 守口剛・竹村和久(2012)『消費者行動論―購買心理からニューロマーケティングまで』八千代出版
<実務家の書籍>
(1) 志村なるみ(2010)『ABC Cooking Studio 女性の心をつかむブランディングの軌跡』朝日新聞出版
(2) 原田泳幸(2011)『勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論』朝日新聞出版
(3) 柳井正(2009)『成功は一日で捨て去れ』新潮社
4 成績評価:
以下をほぼ同等に案分して成績を評価する
・授業内の発表・出席(報告、討議への参加発言)
・ グループレポート(発表、コメント)
・ 個人レポート(課題1~9)
Ⅱ 授業運営スケジュール
1―1 5月10日(1時限) 「講義1:マーケティングの基礎概念」(*第1、3章)
<必読文献> 嶋口充輝(1998)「序章 顧客創造の革新的マーケティング マス・マーケットの創造――新規顧客づくりのマーケティング」嶋口充輝他編『マーケティング革新の時代 1 顧客創造』有斐閣
<必読文献> T.レビット(2001)「マーケティング近視眼」『Harvard business review』2006年11月号
1-2 5月10日(2時限) 「テーマ討議1:ユニクロとハニーズの中国事業」
<討議資料> 討議資料1 小川孔輔(2003)「中国への日本ブランド移転物語 ユニクロ中国新国民服構想 優衣庫 in 上海(前・後編)」『Chain Store Age』2003年7月15日号、 9月15日号
ファーストリテイリング執行役員会配布資料(上海・優衣庫)
<参考図書> 柳井正(2009)『成功は一日で捨て去れ』新潮社
<参考図書> 安積敏政(2011)『サービス産業のアジア成長戦略』日刊工業新聞社
2-1 5月17日(1時限) 「講義2:マーケティングの歴史」(*第2章)
<必読文献> R.S.テドロー・近藤文男監訳(1993)「第1章 消費の時代―アメリカにおけるマス・マーケットの形成」『マス・マーケティング史』ミネルヴァ書房
<必読文献> 堀越比呂志(2005)「戦後マーケティング研究の潮流(1)(2)」『日経広告研究所報』 2005年4・5月号、6・7月号
2-2 5月17日(2時限) 「課題1:カインズのPB商品」
<参考資料> 課題資料1
<参考図書> 渥美俊一・桜井多恵子(2010)『チェーンストアの商品開発-これからの核商品企画と「売れ筋」づくりの基本』ダイヤモンド・フリードマン社
<参考資料> 土屋裕雅・小川孔輔(2009)「カインズ、ブランド化へのチャレンジ」
3-1 5月24日(1時限) 「講義3:マーケティング戦略の構築」(*第3、6章)
<必読文献> 網倉久永・新宅純二郎(2011)「第1、2章」『マネジメント・テキスト 経営戦略入門』日本経済新聞出版社
<必読文献> 岡本智(2003)「第1章 技術のブランディング ”衝突安全技術”のブランドマネジメント」法政大学産業情報センター・小川孔輔編『ブランド・リレーションシップ』同文舘出版
3-2 5月24日(2時限) 「テーマ討議2:池内タオル」
<討議資料> 討議資料2
頼勝一・小川孔輔(2009)「マーケティング・エクセレンスを求めて(79)環境配慮にこだわる価値創造–企業存続の危機からの脱却とオリジナル・ブランドへの挑戦」『マーケティングジャーナル』第114号(2009年夏号)
小川孔輔(2007)「風で織るタオル:今治市の池内タオル訪問」小川孔輔HP 2007年11月24日 https://www.kosuke-ogawa.com/?eid=111
その他は、自分で収集のこと
4-1 5月31日(1時限) 「特論1:ブランド戦略」(*第16、18章)
<必読文献> 長崎秀俊(2003)「コ・ブランディングによるパッケージ効果の研究–サントリーのアド生を用いた実験調査」『グノーシス : 法政大学産業情報センター紀要』12号。
<参考図書> 小川孔輔(2011)『ブランド戦略の実際 第2版』日経文庫
4―2 5月31日(2時限) 「課題2:オルビス化粧品」
<参考資料> 課題資料2
5-1 6月7日(1時限) 「講義4:マクロ環境の分析」(*第4章)
「講義5:消費者行動と顧客の分析」(*第5章)
<必読文献> 小川孔輔(2005)「バラエティシーキング行動モデル–既存文献の概括とモデルの将来展望」『商学論究』(関西学院大学商学研究会)2005年3月号
<参考図書> 守口剛・竹村和久(2012)『消費者行動論―購買心理からニューロマーケティングまで』八千代出版
5-2 6月7日(2時限) 「特別講義1:会社設立と調査システムの今」
特別講師: 山中正彦(㈱KSP-SP代表取締役社長)
<必読文献> 山中正彦(2012)マイクロ・マーケティングのプラットホームを目指して-日本におけるPOSデータの商用サービス」『マーケティング・サイエンス』第20巻第1号
6-1 6月14日(1時限) 「講義6:マーケティング・リサーチ(1)」(*第7章)
<必読文献> 小川孔輔(2009)「第7章 マーケティング・インテリジェンス」『マーケティング入門』日本経済新聞社
6-2 6月14日(2時限) 「特別講義2(テーマ討議3):HOT STUDIO ALL5」
特別講師: 志村なるみ氏(㈱ ABC Holdings、取締役)
<討議資料> 討議資料3 志村なるみ(2010)「ABCクッキングスタジオの展開について」法政大学IM研究科2010年「マーケティング論」講演録
<参考図書> 志村なるみ(2010)『ABC Cooking Studio 女性の心をつかむブランディングの軌跡』朝日新聞出版
7-1 6月21日(1時限) 「講義6:マーケティング・リサーチ(2)」(*第7章)
<必読文献> 梅沢伸嘉(マーケティングコンセプトハウス)(2005)「第1章、第2章」『グループダイナミックインタビュー』同文舘出版
7-2 6月21日(2時限) 「特別講義5:医療サービスのイノベーション(仮)」
特別講師:寒竹郁夫氏 (デンタルサポート㈱代表取締役)
<参考図書> 鶴蒔靖夫(2007)『訪問歯科診療が歯科医療の常識を変える―医師と患者を結ぶデンタルサポートの医療サービスネットワーク』IN通信社
8-1 6月28日(1時限) 「講義7:製品開発のプロセス」(*第8章)
<必読文献> 野中郁次郎・竹内弘高(1999)「第9章 ラグビー方式による新製品開発競争 スピードと柔軟性を求めて」嶋口充輝他編『マーケティング革新の時代 2 製品開発革新』有斐閣
8-2 6月28日(2時限) 「課題3:フラワーバレンタイン」
<参考資料>課題資料3
9-1 7月5日(1時限) 「講義8:新製品の普及と予測」(*第9章)
<必読文献> 林廣茂(2012)『味の素のグローバル進化(仮)』同文館出版(予定)
<必読文献> J.C.ウズニエ、J.A.リー(小川孔輔・本間大一監訳)(2011)『異文化適応のマーケティング』ピアソン桐原
9-2 7月5日(2時限) 「特別講義3:和洋をつなぐ新ブランドの開発(仮)」
特別講師: 矢嶋孝敏氏(㈱やまと、代表取締役会長)
<参考図書> 小川孔輔(2011)『しまむらとヤオコー』小学館
10-1 7月12日(1時限) 「講義9:価格づけの理論」(*第10章)
「講義10:価格決定の実務」(*第11章)
<参考図書> 原田泳幸(2011)『勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論』朝日新聞出版
10-2 7月12日(2時限) 「課題4:スターフライヤー」
<課題資料> 課題資料4
11-1 7月19日(1時限) 「特論2:サービス・マーケティング」(*第17章)
<必読文献> 小野譲司(2010)「第1章、第2章」『顧客満足の知識』日経文庫
<必読文献> 南知惠子・小川孔輔(2010)「日本版顧客満足度指数(JCSI)のモデル開発とその理論的な基礎」『マーケティングジャーナル』117号
11-2 7月19日(2時限) 「特別講義4(テーマ討議4):中国へのブランド移転、その後(上海錦江麒麟食品有限公司)」
特別講師: 小林厚氏(上海錦江麒麟食品有限公司、元董事長)
<討議資料> 討議資料4 小林厚(2007)「「キリンビバレッジ社中国事業の変遷 ブランド構築と構造改革」『イノベーション・マネジメント』(法政大学IM研究センター)2007年第4号
12-1 7月26日(1時限) 「講義11:広告宣伝活動」(*第12章)
「講義12:セールス・プロモーション」(*第13章)
<必読文献> 岩崎達也・小川孔輔(2008)「テレビ番組のプログラム価値マップ 質的評価尺度の活用と番組のライフサイクルマネジメント(上)(下)」『日経広告研究所報』2008年8・9月号、10・11月号
<必読文献> 小川孔輔・ミラー前野和子・野沢誠治(1999)「ブランド・エクイティと景品付きセールス・プロモーション–SPの長期効果についての実証分析」『日経広告研究所報』1999年4月号
<必読文献> 大槻博(1998)「日用消費財メーカーにみるプロモーション戦略の変化-1980~1995 マス広告から店頭マーケティングへ」『マーケティングジャーナル』70号
12―2 7月26日(2時限) 「課題5:すだちプロモーション」
<課題資料> 課題資料5(花畑、小川)、課題資料6(川野会長)
13―1 8月2日(1時限) 「講義13:代替的チャネルの選択」(*第14章)
「講義14:小売業の経営と店頭管理」(*第15章)
<必読文献> 住谷宏(2008)「第1章 流通の役割、第2章 流通の主体と客体」『流通論の基礎』中央経済社
<参考図書> 小川孔輔(2011)『しまむらとヤオコー』小学館
13-2 8月2日(2時限) 「課題6:劇団四季」
<課題資料> 課題資料7
<参考図書> 松崎哲久(2002)『劇団四季と浅利慶太』文藝春秋
14-1 8月9日(1時限) まとめ
14-2 8月9日(2時限) 夏休みの宿題
「課題7:ランナーズ」
「課題8:ウェザーニューズ」
「課題9:片岡物産 バラエティパックの発売」(当日配布)
Ⅲ 必読文献一覧
<参考文献・資料>などは、添付のエクセル表を参照
<学習の参考>
□嶋口論文:学習のためのポイント
(Q1): 嶋口の言う「仕組み(革新)」とは、通常のマーケティングとどのように異なるのか? また、それは充分に意味のある定義と思うか?
(Q2): マーケティング思想の発展過程を整理せよ。3段階で説明できるか?
嶋口の説明とテドローの説明は一貫しているか?
(Q3): インターネットの登場によって、マーケティングの本質は変わったのだろうか? 「仕組み」(ビジネスモデル)は、われわれの現実をどの程度説明できるだろうか?
□レビット論文:文献理解のポイント
「マーケティング近視眼」を定義して分かりやすく説明せよ。
(Q1):「マーケティング近似眼」に含まれているマーケティング概念のエッセンスは何か? いまやクラシックとなったレビット論文は、その後どのようなアイデアに発展していったのか?
(Q2):「市場の定義」をどのように考えるか?
産業や商品カテゴリーの例をあげて、狭い定義と広い定義を実行せよ。
(Q3):石油産業と自動車産業は、論文発表後の40年で考え方を変えられただろうか?
変わらずにそのままだとしたら、考え方を変える障害はなにか?
Ⅳ テーマ討議の課題
<テーマ討議1>の課題
1 ユニクロとハニーズの成長の歴史と現状の整理
(1)ファーストリテイリングの成長ステージを「何段階」かに分けて整理せよ。
各ステージでの成功要因は、どのような性質のものであったか?
(2)ファーストリテイリングの事業展開で、キーとなった成功要因は何だったか?
とくに、マーケティング上の革新性はどこにあったか? 問題点は?
(3)ハニーズの企業成長の軌跡をファーストリテイリングのそれと比較せよ。
(4)ハニーズのビジネスモデルの特徴は何か?ユニクロより優れている点はあるか?
2 既存事業の評価
(1)ユニクロの海外事業を評価せよ。また、今後どのように展開すべきか?
(2)2006年に明らかになった「香港系アパレル企業買収」について評価せよ。
(3)ファッション産業(消費者)の国別の違いをどのように判断すべきか?
英国、中国、日本でどのように環境が違っているか?
(4)ユニクロの上海旗艦店とNY旗艦店の現状と将来をどのように判断するか?
(5)ハニーズの上海進出について、「現在の好調が持続可能かどうか?」を評価せよ。
*参考(小川個人HP2006~2007)
(6)中国において、ハニーズとユニクロのどちらの事業モデルが優れているか?
その理由を述べよ。また、両社中国子会社のビジネスの改善点は?
3 両社の将来の事業展開と戦略シナリオ
(1)海外事業戦略展開を検討せよ。
・ アジア(中国・韓国)、米国市場、欧州市場
それぞれの市場、およびと相互の関係をどのように考えるべきだろうか?
(2)長期的な全体的戦略計画のシナリオを描け。
・M&A(セオリー、キャビン、ワンゾーンなど)の位置づけ
・新業態店舗(標準店、ユニクロプラス、セレクロ、駅中ミニ店舗)
・ネットストアなど
(3)柳井会長の社長復帰をどのように考えるか?
(4)江尻社長の中国戦略と国内事業(新ブランドの展開)について提案せよ。