本日、サイゼリヤの東京本部@日本橋浜町で、正垣会長とお会いできた。著者の正垣会長と今日わたしたちと会話してくれた人物とは少しちがうように感じた。本の中の会長は、「理科系」(理科大出身の科学者)だが、インタビューの正垣さんは、文系の「哲学者」(思想家)だったからだ。
はじめに、ブログで予告したような「インタビューのポイント」を、正垣会長に説明してみた。そのあとで、回答をいただく形での対談となった。
(1)日本のフードビジネスの歴史的な位置づけ、(2)御社のアジアでの将来展開、(3)垂直システムについての考え方、である。雑誌に、詳しいインタビュー記事が載るはずなので、本日はわたしのメモを残しておくことにする。
取材直後の印象は大切である。後になって整理してみるのと、そのときの実際の印象とは異なるものだ。その落差の記録も、インタビュアーとしては貴重である。
(1)50年間のフードビジネスの発展をどのように見ているのか?
Q: 自社ならびに日本のフードビジネスの技術イノベーションの評価
A: フードビジネスは、産業としてまだ完成には程遠い(ご本人は謙遜していると思う)。
基本的に、「低生産性」の産業であることは変わっていない(だから、使命感を感じている)。
Q: 海外(国内)優良企業のモデル(ベンチマーク)は?
A: すべて独自に取り組んできた結果である。
日本でも、海外でも、飲食業で学んだ対象企業は存在していない。
(確かに、欧州には、千店舗を超すイタリアン料理のチェーンはない!)
(2)アジアを中心とする海外事業の展望
Q: マーケティング技術移転の方式(標準化VS現地化)
A: よいもの(美味しいものを低価格で)は世界中どこでも同じである
美味しいものを感じる感覚にも、国境はない(基本的が大切)
(おいしいコーヒーの例をあげていただいた)
(3)垂直的なチャネルの編成と変革
Q: 商品開発におけるメーカー(ベンダー)との連携方式
A: 加工技術、設備投資、素材(野菜の種)など、研究開発に投資している
後述(詳細にのちほど内容をアップする)
Q: ネットストアやプロモーションなどへの技術的な対応
A: 価格と品質に注力しているので、ネット戦略やマス広告などは重視していない
それぞれの企業のもちあじがある。サイゼリヤの注力する方向がちがう
(例として、わたしはマクドナルドや吉野家を上げたが、正垣会長は、
FCシステムに対しては否定的な見解を示された。)
最後に、会長に長期経営戦略を伺った。意外なことに、そこで強調されていたのは、既存のビジネスシステムの限界についてだった。わたしの印象では、サイゼリヤは事業システム的にもかなりのレベルに達していると思う。
しかし、正垣さんは、「現状を変えていかないと、働く人たちと社会にとって明るい未来は保証できない」と力説された。その理由は、(3)の最初の質問への回答として、この後で説明する。