「お坊っちゃま力」=まわりの人(とくに女性)に、なんとなく手伝ってもらえる力のこと

 SOHO静岡主催のブレークスルーセミナーで、昨夜は大久保あかねさん(富士常葉大学教授)に講演をしていただいた。その楽屋裏でのこと。大久保さんが、わたしのこと(性格、行動)を言い表すのに、「小川先生は、”お坊っちゃま力”が高いんですよ」と表現してくださった。一瞬、自分も納得してしまった。


 
 言われてみれば、困った時はいつも、i誰かがわたしを助けてくれる。それも、年上・年下に関係なく、とくに女性たちが仕事を支えてくれていることが多い。もちろん男性の多くからも、物理的・精神的な支援を受けている。それを、わたしが依存心の強い子供だった(単なるわがまま)からだと思っていた。
 そして、不思議なことなのだが、女性たちから、いつしかわたしは「(小川先生は)中性的」だと言われるようになっていた。なぜなのかはわからないのだが、なんとなく、警戒心をもたれないことにも気づいていた。周囲を観察していると、わたしの場合、女性たちとの距離(の作り方)が、ふつうの男性とはちがっているらしいのだ。
 そのことを意識するようになったのは、50歳を過ぎだころだった。でも、その理由はよくわからなかった。わたし自身が、依存心の強さだと思っていた性格を、大久保さんが「お坊ちゃま力」と命名してくれたことで、自分の昔(育てられ方)を、昨晩は解釈し直していた。そうだったんだ。
 この年になって、自分で言うのもお恥ずかしい話なのだが、わたしは、実にお坊っちゃまだったのである。なにをいまさらなのだが、それが証拠に、である。

 実家は、地方都市(秋田県能代市=人口6万人)では、割りに商いの大きな呉服屋(問屋)だった。だから、子供のときから、わが家には、女中さんや女性の従業員がたくさんいた。お姉さんたちは中高卒で、15~18歳。家庭の事情のために、集団就職で東京や大阪には出て行かず、地元に残った若い働き者の女性たちである。
 きみこ姉さん、よしこ姉さん、いとちゃん、てるちゃん、杉沢さん、加賀屋さん、、
 考えてみれば、若い女性がどんな会話をし、どんな雑誌を読んで、どんなことに喜びを感じ、どんな行動をしているのかを、つぶさに観察させてもらっていたことになる。小学生の低学年だから、お姉さんたちは、ガキのわたしには無防備だった。つまり、7~10歳の子供のわたしの前では、彼女たちは、私生活をさらけ出してくれていた。
 ありがたい体験である。楽屋裏にいる、生身の女性たちを見ていたのである。その結果として、(年上の)女性たちが喜ぶ「勘所=つぼ」をそれとなく学習させていただくことになった。
 当時は、無意識ではあったが、そのせいなのか、いまでも女性たちにモノを頼むのがまったく苦にならない。お願いが上手なほうなのは、彼女たちのおかげである。

 一般には扱いにくいはずの女性たちに対して、気軽に頼みごとができるのは、子供のころの成功体験に基づいている。つまりは、「消費者発想」(=女性の立場に立って物事を考える)の成果である。そのことを、やはり大久保あかねさんが、一瞬のうちに、わずか一言で解き明かしてくれた。
 例えば、わたしは、美容院に行く日時を決めるときは、ヘアカットをしてくれるスタイリストの方(半澤さんや横山さん)の都合を優先する。とくに、半澤さんは人気が高いので、いつも予約がいっぱいである。それでも、週半ばの午前中ならば予約が入れやすい。
 だから、原則として、彼女がフリーの水・木のどちらか、それも空いている午前中の時間帯(11時~)に予約を入れる。しかも、できれば、2~3カ月前に予約しておく。そして、これが重要な点なのだが、なるべく自分の都合では予約の日時を変更しないようにする。
 女性に信頼されるためには、男性側の自己犠牲が必須なのだ。最大限の譲歩を行うべきである。その理由は、後で述べる。

 ヘアカットの時間繰りに関して、そんなふうにアレンジしておけば、忙しい半澤さんでも作業時間に余裕ができる。おのずと、しごとは丁寧になる。カットをしてもらいながら、ゆっくり話も出来るので、お互いに気持ちがよい。
 つまりは、相手の都合を優先することで、結果として得られるサービスの品質が高まるのである。女性には、とくにこの点が重要だと感じている。なぜならば、女性はだれでも、お姫様だからである。童話のストーリーにもあったと思うが、「世界でいちばんすてきな女性は、自分なのである」。
 わたしは正直者である。うそはつけない。いや、絶対に嘘はつかない。すべての女性たちは最高のお姫様だと思っている。本当にそう信じている。そんな風に、心から相手を憧憬している男性からのお願いを、断固として断るような女性はいないだろう。

 少々、極論を書いてしまったかもしれない。しかし、大久保さんの言う「お坊っちゃま力」が存在するのだとすると、それは、良い意味での無邪気さの反映なのかもしれない。
 商人の家に生まれ、たくさんの若くて美しい女性たちに囲まれて暮らしてきた。彼女たちを喜ばせることに喜びを感じて生きてきた。白状してしまう。これは、実父の小川久(ひさし)からの遺伝である。
 おそらくなのだが、ふたりの息子にも、このDNAは引き継がれているだろう。由くん(長男)と真継くん(次男)の彼女たちへ。この仮説の正しさと、その成果(事実)のご報告を! あなたたちの義理の親父に、いつか確認させてください。