【事例研究】花畑裕香・小川孔輔(2011)「徳島すだちプロモーション」(法政大学地域研究センター)

 標記の研究ノートが、法政大学地域研究センターに掲載されました。第一著者の花畑裕香が、第二著者の小川のもとで研究を始めた2009年以来の「すだちプロモーションの成果」が紹介されています。本レポートは「短縮バージョン」です。

「徳島すだちプロモーション:
大手食品小売りチェーンにおけるクロスマーチャンダイジングの販売実績
An In-Store Promotion Case Study of Sudachi (a kind of Citrus Fruits Grown in Tokushima Prefecture ): Sales Performance of Cross-Merchandising in a Major Japanese Supermarket Chain.

法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科
 花畑裕香(法政大学大学院 特任講師)
 小川孔輔(法政大学大学院 教授)
平成23年3月4日
 Yuka Hanabata
 (Assistant Lecturer, Hosei Business School of Innovation Management)
 Kosuke Ogawa
 (Professor, Hosei Business School of Innovation Management)

目次
はじめに
Ⅰ 2008年:徳島すだちプロモーションのプロジェクト計画
1 すだちの生産と販売
 (1)栽培面積および生産量
 (2)地域別出荷比率
 (3)すだちプロモーション支出予算
 (4)認知度ヒアリングおよびアンケート調査
2 食品スーパー ヤオコー
 (1)会社概要
 (2)ヤオコーで実施する理由
3 すだちプロモーションの企画の提案内容

Ⅱ 2009年:ヤオコー上里店+2店舗での実施
1 ヤオコー上里店での実施
 (1)上里店で実施する理由
 (2)すだちプロモーションの実施
 (3)実施中の発見
 (4)プロモーションの販売結果
2 ヤオコー2店舗でのセルフ販売の実施
 (1)2店舗を選択した理由
 (2)セルフ販売の実施
 (3)プロモーションの販売結果
3 今後の課題
 (1)フル販売の課題
 (2)セルフ販売の課題

Ⅲ 2010年:ヤオコー4店舗での実施
1 プロモーション実施店舗の選択
2 プロモーション実施中での発見
3 販売結果

Ⅳ.今後の課題
1 ヤオコー全店舗への横展開
(1)すだちプロモーションモデルのパッケージ化
(2)セルフ販売モデルのパッケージ化
2 クッキングサポートとの協力体制の構築
3 運営組織の確立
4 2つのモデルの同時進行

謝辞
参考文献・資料リスト
添付資料1  アンケート調査表
添付資料2  残存売上効果の比率
添付資料3  売上と費用のシミュレーション

はじめに
本研究ノートは、徳島特産の「すだち」(柑橘類の果実)を、すだちの認知度が低い関東圏 でプロモーションする計画を取り扱っている。具体的なプロモーションの実施場所は、関東の食品スーパー「ヤオコー」(2011年3月1日現在111店舗)である。すだちのプロモーション計画は、2年間にわたって、延べ10店舗において実施された。
「徳島すだちプロモーション」(以下では、プロモーションと略す)は、筆者の1人(花畑裕香)が、法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科在籍時に、指導教授である2番目の筆者(小川孔輔)のもとで取組んだ、卒業研究プロジェクトが発端となっている。
卒業後(2009年3月)に、「とくしまブランド 巣立ちプロモーション」企画提案書は、「徳島県すだち・ゆこう消費推進協議会 」(以下、徳島と略記)に提案された。徳島が筆者の企画書を精査した結果、関東の食品スーパーで実施する案が承認された。2009年夏季の実施に向けてそのための予算が組まれた。
初年度(2009年)のプロモーションは、ヤオコーの上里店(埼玉県北部)で実施された。その翌年(2010年)には、初年度の成果を受けて、実施店舗が埼玉県と群馬県の4店舗(川越南古谷店、ワカバウォーク店、桐生相生店、太田小舞木店)に拡大した。2年間のプロモーションでは、当初の予定通りに成果をあげることができた。全体の計画は、現在(2011年3月)も進行中である。

本研究ノートでは、大学院在籍時からはじまった3年間の進行を、プロジェクトの進展にしたがって、時系列的に記述していく。
第Ⅰ章では、2008年に大学院(イノベーション・マネジメント研究科)で花畑が小川の指導のもとで策定したすだちプロモーションの企画立案の内容を説明する。徳島県へ提案したプロジェクトは複数あったが、その中で「食品スーパー・ヤオコー」での店頭プロモーション計画の部分を抜き出して紹介する。
第Ⅱ章では、初年度(2009年)に、「ヤオコー上里店」で実施された店頭プロモーションについて内容を整理した。すだちプロモーションには、試食を行うために販売員(マネキン)を配置した「フル販売」(フルバージョン)と、プリパックしたすだちを売り場に陳列しただけの「セルフ販売」(セルフバーション)がある。上里店では実演販売によるプロモーションを行ったが、それと並行して、上里店が所属する高崎地区内の2店舗ではセルフ販売を実施している。両方のプロモーション結果を紹介する。
第Ⅲ章では、2009年の経験をもとに、2010年には実演販売のやり方が改善され、ヤオコーの旗艦店など、4店舗でプロモーションが実施された。その実施内容と結果を2009年と比較して、新たな発見を中心に紹介する。
第Ⅳ章では、第Ⅱ章からⅢ章までの実績をもとに、今後の課題をまとめる。

Ⅰ 2008年:徳島すだちプロモーションプロジェクトの計画

本章では、2008年に大学院イノベーション・マネジメント研究科で企画・立案し、徳島県へ提案した「徳島すだちプロジェクト」の中で、食品スーパー「ヤオコー」での店頭プロモーション計画の内容を紹介する。

1 すだちプロモーション企画の提案内容
(1)従来型のすだちプロモーション
従来からのすだちプロモーションの方法は、食品小売店の青果売場に試食を1~2種類用意し、徳島の関係者が1~数名店頭に立つスタイルで行っていた。一部では現在も引き続き行っている。
実施する食品小売店は、市場や市場関係者からの紹介が大半で、徳島が戦略的に実施地域や店舗を選択していないと言っても過言ではない。徳島が店舗と直接交渉していないため、様々な面で自由度が低いと聞いている。実施後の結果に関しては、正確な入店客数や売上金額が把握できないこともあり、計画・実施・チェック・行動のPDCAが回っておらず、今後の戦略が立てられない状況である。

(2)新しいすだちプロモーションの企画案
徳島が過去に行ってきたすだちプロモーションを見直し、提案することになった。長期的視点で新しいすだちプロモーションを企画し、細かな実施内容から予算配分に至る提案を行った。その中で2009年以降に実施した内容の計画を以下にまとめる。

1)目的
すだちの需要拡大のため、長期的視点で、すだちの食文化がない地域に浸透させることを目的とする。

2)組織
徳島(徳島県すだち・ゆこう消費推進協議会)とヤオコーが協力して実施する。

3)対象地域および実施店舗
関東1都5県に111店舗を展開する 、楽しい食生活を提案する食品小売業の「株式会社ヤオコー」(以下、ヤオコー)で実施する 。その中で、認知度ヒアリングおよびアンケート調査の結果により、認知度が低いとされた 、埼玉県の最北部の群馬県との県境に位置する「ヤオコー上里店」 で実施する(写真2) 。

 

 

 

写真2 ヤオコー上里店(左)、ウニクス上里(右)

4)ヤオコーで実施する理由
ヤオコーで「徳島すだちプロモーション」を実施することになった理由は、「ヤオコー販売部部長・塩原氏のアドバイス」と「ヤオコーの特徴」である。その理由を以下に述べる。

①販売部部長・塩原氏 のアドバイス
1つ目の理由は、ヤオコー販売部部長の塩原淳男氏 のアドバイスがあったからである 。塩原氏との会話から「徳島すだちプロモーション」企画の構想が出来上がった。筆者らは、企画の構想を持ち帰り、詳細を企画した上で、塩原氏に再提案することになった。いわゆる、「すだちを核としたクロスマーチャンダイジング(関連販売)」の提案である 。

②ヤオコーの特徴
2つ目の理由は、ヤオコーが「食生活提案型食品スーパー」 (小川(2011) )で、「個店経営・権限委譲がされている」 (小川(2011) )、「売場間の連携がある」 の3つの特徴から、徳島すだちプロモーションが実施しやすい環境にあったからである。

 

 

 

写真1.川越南古谷店クッキングサポート

5)すだちプロモーションの内容
①食べ方提案のプロモーション
認知度の低い地域では、食べ方がわからなければ継続的購入につながらない。そのため、店内の各売場で様々な食べ方を紹介する、食べ方の提案を行うプロモーションとする。

②試食メニュー案
徳島では、焼きものに絞るだけでなく、炒めものに、揚げ物に、漬物に、冷奴に、麺類に、味噌汁などにも絞り、また、輪切りスライスにするなど様々な方法で食べる。その試食メニュー案を筆者(花畑)が試作し、提案した。

③「すだちラリー」イベントの実施
子供を対象に、スタンプラリーならぬ、店舗を1周する「すだちラリー」を開催する(図表I-12) 。

図表Ⅰ- 1 すだちラリー経路案

 

 

 

 

 

  図表Ⅰ- 2 すだちラリー用紙案

 

 

 

 

Ⅱ 2009年:ヤオコー上里店+2店舗での実施

第Ⅱ章では、計画した店頭プロモーション「徳島すだちプロモーション」を、翌年2009年に上里店でフル販売を実施した内容をまとめる 。また、上里店での実施と並行して、上里店が所属する高崎地区内の2店舗でセルフ販売を実施した内容をまとめる 。

1 ヤオコー上里店での実施
本節では、ヤオコー上里店で3回実施したフル販売の内容をまとめる。

(1)上里店で実施する理由
100店舗を保有するヤオコー(2008年時点)の中で上里店を選択した理由は、リスクが低く 、須藤元店長(2008年)の人柄 がチャレンジ精神旺盛で、様々なことに積極的に取組んでいた。また、須藤店長の指導のもと、毎年120%の売上増加を達成している店舗であった(2008年)。その優良店で、どれくらい売上が伸びるのか可能性を確認したかったためである 。

(2)すだちプロモーションの実施
3回実施したうち、3回に共通する点と各回での特徴に分けてまとめる。共通する点は4つある。それは、「参加者」、「陳列」、「すだちラリー」、「インセンティブ」である。各回の特徴は、実施日程別にまとめる。
 
1)全3回の共通点
①参加者
2009年夏の実施に向け、2008年に計画した、ヤオコーと徳島の連携に加え、筆者の花畑が運営のコーディネーターとなり、加わった。3回のうち、のべ32名が参加した。

②陳列
店舗入口には、すだちを山積みに陳列し、入店したお客様に「すだち」を販売していることをアピールした(写真4)。各売場では、豆腐とすだち、椎茸とすだち、魚とすだち、肉とすだち、酒とすだち、のように、クロスマーチャンダイジングを行った(写真5) 。お客様は、店内に入ると、すだちの陳列量に驚き、いたる所ですだちの試食を行っていることに驚いている様子であった。

  写真4 店舗入口の山積み陳列(2009年7月実施)
        ①肉売場                   ②酒売場

  写真5 各売場のクロスマーチャンダイジング

③すだちラリー
すだちラリーは、計画を若干変更した形で実行した(写真6) 。ラリーポイントは、試食を提供しているうち、3ヶ所に設けた(写真②~④)。ラリー用紙は、店舗入口で約2~3名で、可能な限り多くのお客様に参加いただけるよう声かけと配布を行った(写真①)。プレゼントは、徳島からタオル、クリアファイル、ストラップ、すだち絞り器などを協賛してもらい、参加者全員に配布した。

   ①店舗入口でラリー用紙を渡している様子 ②ラリーポイントでの陳列
   ③ラリーポイントでの試食の様子        ④ラリーポイントでの様子

写真6 すだちラリー

④インセンティブ
2008年の計画には無かったが、インセンティブを設定することを第1回開始直後に決めた。それは、プロモーションによって食べ方はわかったが、数多くは要らないというお客様が目立ったためである。1kg箱購入者に、フェイスタオル等のインセンティブを付けた(写真7)。商品は、すだちラリー参加者へのプレゼントを利用した。しかし、どんなにお手頃な価格であっても、また、インセンティブがついた商品であっても、それでも、多くは要らないというお客さまが多かった。その解決策として、「保存方法」の伝達が有効であった。それは、次節で説明する。

写真7 インセンティブ例(フェイスタオル)

2)第1回(2009年7月25日~26日)
第1回は、初めてのことで手探りの状況でスタートした。店舗へは従業員の出社時刻と同時に入店し、プロモーション関係者全員でミーティングを行った後に、試食の準備を始めた。また、特にマネキンには、すだちの食べ方や特徴について、詳しくレクチャーを行った。このように、準備をゆっくり行ったことと、初めての試食メニューの準備に手間取り、試食およびすだちラリーの開始は午後からとなった。
試食メニューは、①焼きしいたけ(焼きエリンギ)、②ゆでなす、③冷奴、④ちくわ、⑤はちみつ漬け、⑥はちみつ漬けを割ったジュースの6種類を準備し、状況を見ながら3ヶ所で実施した。

3)第2回(2009年8月29日~30日)
第2回は、選挙日と重なった。「選挙日は、来店客数が伸びる」と塩原部長と須藤店長から告げられた。選挙日は、消費者が遠出をせず、選挙投票後に近所のスーパーで買物をして帰る傾向が強いそうである。また、当日は関東地方に台風が接近しており、夕方から雨の予報が出ていたため、来店客のピークがいつもより早い15時から始まり、来店客数は予想通り伸びた。
試食メニューは、①ぶっかけうどん、②冷奴、③焼きしいたけ(焼きエリンギ)、④焼肉・ステーキ、⑤はちみつ漬け、⑥はちみつ漬けを割ったジュースの6種類を順次3ヶ所で実施した。

4)第3回(2009年9月26日~27日)
第3回は、店舗のイベントでイタリアンフェアを実施していたため、第1回や2回のように店内はすだち一色ではなかったが、プロモーション関係者もさすがに3回目とあって、イタリアンフェアと融合しながら要領よく運営した。第3回は、第1回と第2回に来店してくれたお客様から保存方法などの感想を聞くこともあり、会話を楽しんでいる関係者が多かった。
試食メニューは、①焼きエリンギ、②湯豆腐、③味噌汁、④はちみつ漬け、⑤はちみつ漬けを割ったジュースの5種類を順次3ヶ所で実施した。

(3)実施中の発見
上里店での3回のプロモーションを通じて、情報提供と売り方の2つのことが売上と浸透のために重要だということがわかった(図表Ⅱ-1)。すだちラリーは、予想通りの効果を出してくれ、認知度の低い地域での購入の動機付けに大いに貢献した。

図表Ⅱ- 1 認知度の低い地域でのプロモーションで重要なこと

1)食べ方、保存方法の情報提供
大量消費する食べ方や長期保存の方法を伝えることが、購入率(量)の増大につながることがわかった。
店内で案内できる情報には限りがある。そのため、マネキンに試食以外の食べ方やすだちの栄養価等すだちに関する情報をお客様に積極的に紹介するようお願いした。すると、購入率(量)が上がった 。これは、マネキンやスタッフとじっくり話をし、納得した上で購入している可能性が高い。
ここで大切なことは、マネキンやスタッフが正確な情報を持ち、お客様が情報を得られる、得たいと思う環境や関係をつくることである。そのスキルがマネキンやスタッフに求められている。

2)売り方
①食文化の浸透度合いによる販売価格の設定
プロモーションを実施する地域での食文化の浸透度合いにより、販売価格を変更することが有効であることがわかった 。また、販売価格は、3段階にすると売れ行きが伸びた。3段階価格は、4~5段階価格に比べ、お客様が価格で迷っている姿を見受けなかった。
図表Ⅱ-2は、すだちの食文化の浸透度合いによって、販売価格と入り数を変更すると有効であることを示している 。

 図表Ⅱ- 2  食文化の浸透度合いによる販売価格の設定

   
③すだちラリーによる段階的陳列販売
すだちラリーポイントを順番に周ると様々な食べ方を知ることができるため、後半のポイントで大きいパックに変更するお客様を多く見受けた 。そこで、最後のポイントは、すだちを大量に消費する「はちみつ漬け」などのメニューとし、大量購入がしやすいよう促すことが有効であることがわかった。

④すだちのサイズは3L
市場価格が高い2Lと3Lの両方を販売したが、お客様の反応は変わらなかった。徳島では2Lが高価だと認識されているが、認知度の低い地域では、どのサイズが良いのかの判断は、サイズの大小で決める傾向が強いからである。大きいサイズは、果汁が多く絞れるし、輪切りもしやすい。輪切りの枚数も多い。比較対象が、レモンやかぼすであれば、なおさらである。青々とした、フレッシュなすだちであれば、市場価格の高い2Lにこだわらず、3Lを主に販売し、販売価格を抑えることを検討することが望ましいと考えられる。

3)すだちラリーの効果
①店内の活性化、試食率向上
インセンティブの数量の関係上、すだちラリーをストップしたことがあった。すると、すだちラリーを実施している時としていない時では、店内の活気が格段に異なることがわかった。ラリーを実施している際は、店内に笑い声や話し声があり、活気に溢れていたが、ストップした途端、人の流れが止まり、活気がなくなった。また、試食を遠慮するお客様が多く、すだちラリーが試食のきっかけとなっていることがわかった。そのため、ラリーがストップした直後に試食を敬遠されるお客様が増え、試食率が下がったのである。そうすると、購入率も下がってしまった。すだちラリーは、お客様にとって、「試食すると買わなければ悪い」という気持ちに言い訳が出来る材料であったと考えられる。

②記憶に残る
1人のマネキンが立ち、試食を提供するだけのプロモーションに比べると、店内の至る所にすだちの試食があり、すだちラリーに参加してインセンティブをもらって帰るという経験は、インパクトが強く、記憶に残るだろう。その後の買物にも大きく影響するのではないかと考えられる。第2回、第3回実施の際に、お客様から「今月も徳島からいらしたの?」「先月買って様々な食べ方を試した」など声をかけられることが多かった。

(4)プロモーションの販売結果
1)実施日の売上
第1回、2日間の売上合計は、前年同月に比べ約1700倍であった。第2回は、第1回の約2倍の約3400倍を記録した。第3回は、第2回より減少したが、前年同月に比べ約2300倍であった(図表Ⅱ-3)。

図表Ⅱ- 3  2009年売上実績(2008年同月比)単位:倍

2)PI値が最大値を記録
 3回を通してPI値は高い数値を記録した。その各回の時間帯別PI値の動きが図Ⅱ-4である。中でも、8月29~30日の16時~17時の記録は最大値であった。日々購入する食パンのPI値が平均2~3%だと言われている中、それを大きく上回る記録で、3回全てが記録的な数値であったと須藤店長は言っていた。

 図表Ⅱ- 4 2009年時間帯別PI値の動き

3)客数が少ない時間帯の売上が高い
時間帯別に売上高の推移を見てみると、全体的に客数が少ない時間帯の13時~16時の間のPI値が高かった。一方、客数が多い16時~18時のPI値は客数に比例して伸びなかった。
これは、買物時間に余裕のある来店客がマネキンからしっかり話を聞き、食べ方を理解して購入している可能性が高いことを表している。つまり、試食をして、様々な食べ方や保存方法がわかれば買ってくれると考えられる。実際、店頭で試食を提供していたメンバーの感想を聞くと、来店客の少ない時間帯は、ゆっくり説明が出来るので購入してもらえやすい。逆に、お客様の多い時間帯は、急いでいる方が多く、説明不足に終わってしまうことがあり、購入してもらえないことが多かった。

4)購入者は健康意識が高い
8月実施時のバスケット分析を行った結果、すだちと一緒に購入している商品は、①ナチュレ恵500g(特定保健用食品のヨーグルト)、②Jオイルさらさらキャノーラ油健康プラス(栄養機能食品)、③ひかり味噌有機甘こうじみそ(有機味噌)等の健康を意識した商品が多いことがわかった。これは、POPで表示したすだちの成分を理解した上で購入されている可能性が高いと考えられる。非常に興味深い分析結果であった。なお、バスケット分析は、店舗のシステムを利用した。

5)繰り返し効果がある
 2009年に実施した上里店で、1年後の2010年7月から10月の売上データを確認した。すると、翌年もプロモーションの効果があることがわかった。翌年2010年7月は2008年7月に比べ約130倍、8月は約470倍、9月は約400倍、10月は約280倍の売上を記録した(図表Ⅱ-5)。ちなみに、陳列は例年通り青果売場の薬味の棚に置いてあっただけで、プロモーションは一切行っていない。図表Ⅱ-6は、2010年6月末から10月末までの週単位のPI値の動きである。

 図表Ⅱ-5  2010年繰り返し効果実績(2008年同月比)
 
 図表Ⅱ-6  2010年繰り返し効果点数PI値

2 ヤオコー2店舗でのセルフ販売の実施

 本節では、上里店が所属する高崎地区内の2店舗で2日間セルフ販売を実施した内容をまとめる。

(1)2店舗を選択した理由
 徳島から1トンのすだちを納入されることになったため、急きょ高崎地区内の近い店舗に販売の協力を依頼し、快く受け入れてくれたのが2店舗であった。

(2)セルフ販売の実施
 上里店で実施したように、マネキンや関係者が食べ方や保存方法を伝えるのではなく、売場には無人でメニューサンプルだけをディスプレイして販売することを、セルフ販売と呼んでいる。これら2店舗では、メニューサンプルを店内約10ヶ所の各売場に置き、関連販売を提案した。試食は、キッチンサポートのみで可能とした。
 試食メニューは、はちみつ漬け&ジュース、さっぱり鶏肉、炒めもの、焼肉、豆腐、麺類、酒、カキフライ、さんまの竜田揚げ、太刀魚の寿司、ローストビーフ、焼きいか等、幅広いメニューを揃えた。
 マネキンはいないが、すだちを使ったメニューサンプルが店内の至る所にディスプレイされており、すだちのフェアが行われていることは来店客に伝わっただろう。来店客は始めてみるメニューに足を止めて見ていたようである。

(3)プロモーションの販売結果
 売上高は、2日間で前年同月に比べ、高崎高関店が約900倍、高崎飯塚店が約970倍となり、店舗の協力があれば、2日間で約900倍の売上になることがわかった。

3 今後の課題
 上里店での実施とセルフ販売2店舗での実施から見えてきた、今後の課題をまとめる。

(1)フル販売の課題
1)コストの削減
全3回の合計費用は、マネキン代、アルバイト代、徳島からの出張費、試食代等すべて含め、100万円を超えている。費用の中で一番比率が高いのが、徳島からの出張費である。それだけで6~8割を占めている。試食代は、高価な肉を提供した場合でも1日5万円程度、安い時は2万円程度と大きな負担ではない。出張費を出さない工夫を考えれば、経費は大幅に削減できる。

2)売り方の工夫
前述の通り、販売価格と入り数は、地域のすだちの浸透度合いにより工夫をする必要がある。今後もプロモーションを行っていく上で、この販売価格と入り数が一般化されたものであるかということも念頭に、検証を行っていく必要がある。

3)情報提供
第1に、大量消費する食べ方の提案方法を考案する必要がある。試食を提供した中で、好評かつ消費量が多かったのが、はちみつ漬けとそれを割ったジュースであった。このメニューは、子供から大人まで幅広い人気で、特に子供がいる家庭やスポーツをしている家庭に人気であった。これらの家族は、家庭で簡単に手作りが出来て、美味しくて安心というキーワードが当てはまるようである。このメニューの場合、すだちは3個入りでは足りないので、最低でも10個入り、多くは1kg箱の販売促進につながる。このように、大量消費して、簡単で美味しくて安心なメニューの開発が必須である。
第2に、長期保存方法をポスターやPOP等で伝える工夫が必要である。今回の実施で、長期保存方法の情報提供が必要であることがわかった。マネキンが来店客全員に伝えられない場合もあるので、試食場所や陳列場所に掲示して伝わるようにすると効率的である。
第3に、来店客に情報提供を行うマネキンの教育が必要である。マネキンに求められることは、食べ方や保存方法、すだちの育成や徳島の歴史などを知り、来店客との会話に役立てることである。豊富な知識を持つことにより、お客様との会話に幅が生まれる。その現場での対応力が購入率(量)アップだけでなく、継続的購入につながる。

(2)セルフ販売の課題
1)実施店舗との協力体制の構築
セルフ販売の場合は、来店客はメニューサンプルとPOP等の店頭での情報しか得ることが出来ない。その場合、知名度の低いすだちは、いかに多くのメニューサンプルを各売場に置いてもらうか、いかにPOPやのぼりの管理を行ってもらうかがカギとなる。一般的な流通を利用している場合、帳合会社や市場を挟むため、そういった細かな要望と対応が出来ないのが通常である。それを超えていかに各実施店舗と協力体制を構築するかがセルフ販売の成功のカギとなるだろう。

2)クッキングサポートとの協力体制の構築
セルフ販売の実施を店舗が許可してくれるのであれば、可能な限り多くの店舗で実施できればと考えている。その場合、季節や地域に合った幅広いメニューを提案してくれるキッチンサポートとの協力が必須であると考えている。プロモーション関係者が現地へ行けない分、キッチンサポートの方がすだちの質問に応対したり、特徴を活かしたメニュー作りをしたりといった役割を担ってくれる。つまり、すだちのプロモーターを各店に作っていくのである。そのためには、すだち講習会などといった勉強会や資料作りが必要になる。

Ⅲ 2010年:ヤオコー4店舗での実施
 
第Ⅲ章では、2010年にヤオコー4店舗で実施した内容と結果についてまとめる。

1 プロモーション実施店舗の選択

2009年の経験をもとに、2010年のプロモーションは、ヤオコー4店舗に拡大することになった。内容的には、2009年とほぼ同様のプロモーションとし、地域と店舗規模を変更して実施した。
プロモーションを実施した4店舗のうち2店舗 は、「川越南古谷店」 と「ワカバウォーク店」 である。残りの2店舗は、群馬県の中規模店である「桐生相生店」 と同じ地区にある小規模店の「太田小舞木店」 である(図表Ⅲ-1)。
プロモーションの実施期間は、両タイプの店で異なっている。旗艦店は8月最終週に、群馬の中小規模2店舗は、9月の中旬にそれぞれプロモーションを実施した。2日間の前年同月比販売実績を示している(図表Ⅲ-1)。

図表Ⅲ- 1 2010年プロモーション概要および売上実績
店舗名 実施日 売上(前年同月比)(倍) 店舗規模
川越南古谷店 8月28日~29日 3,900倍 大規模
ワカバウォーク店 8月28日~29日 3,600倍 大規模
桐生相生店 9月11日~12日 4,400倍 中規模
太田小舞木店 9月11日~12日 2,300倍 小規模
                                           

 なお、2009年と大きく異なる点は、徳島からの出張者数を1名に減少させたことである。プロモーションの費用効率を確認するためである。結果として、1回の実施について、20~40万円はコストが削減できた。
売り方、試食メニュー、すだちラリーに関しては、2009年と同様に実施した。試食は、店内の3ヶ所に設置し、各試食場所にはマネキンが立ち、食べ方や保存方法を詳しく説明し、食べて納得した上で購入してもらった。また、店舗の全面的な協力により、クッキングサポートでの試食や豊富なメニューの提案、さらに当店従業員が考案したメニューも各売場で提案した。すだちラリーも実施し、売場の活気づけに大きく貢献した。

2 プロモーション実施中での発見
二年目の実施では、食文化が浸透していない地域であっても、情報提供や売り方の工夫次第で、認知度のきわめて低いすだちが、そこそこ売れることがわかった。以下では、情報提供の重要性と売り場の作り方を説明していく。

(1)情報提供と売り方の重要性
 2009年の実施同様、お客様は食べ方や保存方法の情報を得ると、購入する確率が高まることを再確認した。同様に、食文化の浸透度合いによる販売価格の設定、すだちラリーによる段階的陳列販売、すだちのサイズは3Lが良いことを再確認した。

(2)店舗規模に応じた売上実績
プロモーションを実施すれば、店舗規模に応じた売上高を計上することがわかった。例えば、ワカバウォークと川越南古谷店の大規模店での実施月の売上合計は、それぞれ前年同月比約5,000倍でほぼ同じであった。他の月の売上高合計も同様に推移していることがわかる(図表Ⅲ-2)。中規模店の桐生相生店、小規模店の太田小舞木店を見てみると、若干の差はあるがおおよそ店舗規模に応じた売上高を計上していることがわかる(図表Ⅲ-3、Ⅲ-4)。9月のプロモーション実施時期は、すだちの市場価格が8月に比べ大幅に下がったため、プロモーション効果も高く売上高が伸びた。
これらの結果により、今後は店舗規模によるおおよその販売予測ができることがわかった。

図表Ⅲ- 2 大規模店の売上高推移(前年同月比)単位:倍    
大規模店舗 7月 8月 9月 10月
川越南古谷店 240 4,900 1,100 770
ワカバウォーク店 270 5,100 1,100 700

図表Ⅲ- 3 中規模店の売上高推移(前年同月比)単位:倍    
中規模店舗 7月 8月 9月 10月
桐生相生店 430 560 5,300 400

図表Ⅲ- 4 小規模店の売上高推移(前年同月比)単位:倍
小規模店舗 7月 8月 9月 10月
太田小舞木店 130 500 3,400 470

3 販売結果
川越南古谷店での2日間の売上高は、前年同月比約3,600倍であった。一方、ワカバウォーク店での2日間の売上高は、約3,900倍であった。
桐生相生店での2日間の売上高は、前年同月比約4,400倍であった。大規模店である川越南古谷店やワカバウォーク店より売上が高かった理由は、販売価格である。8月の実施日は例年に比べ価格が2倍で、1kg箱が980円で販売されたのに対し、9月はその半額であった。そのお得感が売上に影響した。一方、太田小舞木店での2日間の売上は、前年同月比約2,300倍であった。桐生相生店より売上が低かった理由の1つに、当日の入店客数が桐生相生店に比べ約4割少なかったことが挙げられる。
 

Ⅳ.今後の課題

第Ⅳ章では、第Ⅱ章~Ⅲ章の2年間の実績をもとに、今後の課題についてまとめる。

1 ヤオコー全店舗への横展開 
認知度の低い関東圏で一般家庭に、すだちをいち早く浸透させるためには、ヤオコーの全店舗に投入されるのが早道であると考えられる。ヤオコーにとっても悪い話ではない。ヤオコーは今後も引き続き店舗数を増やし続けると聞いている。今後は、未開拓地の関東圏中心地~東西、南部への店舗展開も予定されているようである。幸いにもヤオコー担当者は、すだちを全店舗に投入する計画を考えてくれており、課題が解決できれば実行は困難ではないと言われている。

(1)店舗のメリットを店長にアピール
個店経営を行うヤオコーは、プロモーション実施の有無は、すべて店長や売場の主任の判断に委ねられている。そのため、店舗にメリットが感じられなければ展開の可能性はゼロである。
メリットは、以下のように考えている。

1)すだちと一緒に購入する商品の売上増加
2)お客様へ常に目新しいメニューの提案
3)イベント実施によるお客様の購入欲を向上
4)店舗でのイベント企画の考案が不要
5)全売場で実施することによる店舗内チームワークの醸成

デメリットを考えてみる。
店舗入口の平台に単価の低いすだちを陳列し、最高売上高が5万円だと仮定した場合、国産の美味しい「ぶどう」や「もも」1パック500~600円を平台に陳列すれば、2倍の10万円の売上を記録することができるかもしれない。認知度が低く、副食材であるすだちは、主食材に比べて坪効率が悪い。
しかし、食生活を提案するヤオコーのお客様は、「お店に行けば何かを提案してくれる」と期待していると考えられる。毎日、クッキングサポートで夕食のメニューを決めているというお客様も見かけた。そんな期待を裏切らない、また、競合店が行っていない目新しいメニューの提案を行うことで、お客様への満足につなげられると考えている。
アピールを行う機会は、全国の店長が集まる店長会議で紹介させてもらえるのが理想である。

(2) 徳島とヤオコーの安定的共有体制の構築
全店舗での取り扱いを実現するためには、以下の2つの体制を確立しなければならない。関西と違い、関東への配送は、運賃が高く日数もかかるため、過去の実績に縛られず新たな体制の構築も検討する必要があると考えられる。

①商品の安定供給体制の構築
②特別取引価格の設定

(1)すだちプロモーションモデルのパッケージ化
100以上の店舗でプロモーションを自動走行させるためには、すだちプロモーションモデルをパッケージ化させる必要があると考えられる。過去の実績を基に、パッケージ化することにより、必要なもののみへの投資を行い最小限のコストで、円滑な運営を目指す。そのために、以下の取り組みが必要であると考える。

1)マネキンのネットワーク化および教育
2)進行マニュアルの作成
3)すだちラリーのパッケージ化

(2)セルフ販売モデルのパッケージ化
2009年高崎地区2店舗の実績から、未開拓地という環境でありながら、PI値が高い数値を記録した。このことから、実施店舗と徳島の協力体制が構築できればセルフ販売を多店舗展開できると考えられる。そのために、何を行うべきかまとめる。

1) 実施店舗へのマニュアルの提供
円滑な運営実施のために、実施店舗に対し、実施マニュアル資料の提供が必要だと考えられる。そのマニュアルは、過去の事例や売上アップのポイント等がまとめられた資料とすることで、実施店舗の自由度を確保し、ヤオコーの個店経営を尊重する。

2)実施店舗へのプロモーション資材の提供
実施店舗に対し、ポスターや旗、POP等のプロモーション資材を提供する必要がある。そのために、実施店舗の把握と数量割り振りを速やかに行い、必要資材の発注納期を考慮し、実施の数ヶ月前から実施店舗を決めることが必要だと考えられる。

2 クッキングサポートとの協力体制の構築
クッキングサポートでは、約3~4ヶ月前にメニューを決定する。すだちが旬の7~9月にプロモーションを実施する場合は、4月までにすだちメニューの提案をクッキングサポートに行い、様々なメニューに取り入れてもらえる営業活動が必要である。
提案として、すだちプロモーションを実施する7~9月に、「すだち月間」を設けていただき、様々なすだちの食べ方(30種類)を毎日紹介していただくこと等が考えられる。
その実現のために、クッキングサポートへ行うべきことは、以下の2つである。

(1)4月までにすだちのサンプル、レシピ集等の資料を送付する
(2)クッキングサポート会議ですだちを紹介する

3 運営組織の確立
多くの組織で形成されるプロジェクトのため、窓口を一本化し、速やかな運営を行うことが求められる。今後、実施店舗数を増やす場合は、さらに情報提供や指示が複雑化すると予想される。複雑化した際の混乱を解消するため、実施店舗と直接に調整を行うコーディネーターが必要である。 
例えば、100店舗での実施する場合、連絡回数を見積もってみる。100店舗と実施前の確認等で電話やメールを最低2~3回行うと仮定しても、200~300本の連絡を行うことになる。その他、ヤオコー本部や徳島との調整を含めると、連絡の本数だけでも計り知れない。

4 2つのモデルの同時進行
ヤオコー全店舗へ横展開するためには、3つの方法が考えられる。
(1)フル販売を全店で行う方法
(2)フル販売とセルフ販売の2つを同時に進行させる方法
(3)セルフ販売を全店で行う方法

フル販売のみ全店で行う場合は、費用が高くなるため現実的ではない。セルフ販売のみ全店で行う場合は、費用は抑えられるが、フル販売に比べ販売数量が低く消費者への浸透度が低いと考えられる。よって、フル販売とセルフ販売の2つを同時進行させる案を検討する。
実行案として、ヤオコーが決めている1地区からフル販売を行う店舗を1~2店選択し、同地区のその他の店舗で、セルフ販売を行う(図表Ⅳ-1)。理由は、ヤオコーの流通やスーパーバイザーが地区ごとに区分けされているため、運営が行いやすいからである。また、配送が容易である。

図表Ⅳ- 1 エリア別フル販売とセルフ販売のイメージ図

 

謝辞
本研究ノートは、2008年の調査、企画立案から実行まで3年間行ってきた。その間、多くの方にご協力いただいた。
調査に協力してくださった、ヤオコー関係者の方々、徳島県の関係者の方々、法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科の教授、また、プロモーションの実施を手伝ってくださった同研究科の学生のみなさま、法政大学経営学部、小川ゼミの学生のみなさま、ヤオコー関係者の方々、徳島の関係者の方々に感謝の意を申し上げたい。
このプロモーションは、今後も引き続き行う予定である。来年度の実施にあたり、本研究で明らかになった課題を解決させながら、実行していく予定である。

 

参考文献・資料リスト
小川孔輔[1994]『ブランド戦略の実際』、日経文庫。
小川孔輔[2001]『よくわかるブランド戦略』、日本実業出版社。
小川孔輔[2011]『しまむらとヤオコー』、小学館。
木村勝太郎・谷中登希男[1988]『香酸柑橘-四国の酢みかんⅠ』徳島県。
徳島県[1990]『徳島県特産すだち』、徳島県。
徳島県[2007]『新鮮なっとくしま』、徳島県。
徳島県[2007]『とくしまブランド飛躍戦略』、徳島県。
徳島県[2007]『徳島の果樹』、徳島県。
徳島県[2008]『とくしまの農林水産業』、徳島県。
徳島県すだち・ゆこう消費推進協議会[1998~2008]『定期総会資料』、徳島県すだち・ゆこう消費推進協議会。
徳島県農業協同組合中央会[1981]『スダチに関する試験研究抜粋』、徳島県。
徳島県農畜水産物マーケティング戦略推進協議会[2000]『徳島県における園芸農産物のマーケティング戦略に関する調査』、徳島県。
花畑裕香[2009]「とくしまブランド 巣立ちプロモーション企画提案」

添付資料  売上と費用のシミュレーション
フル販売とセルフ販売の2つのモデルを同時進行した場合の売上と費用のシミュレーションを行う。

(1)売上予算
売上高の条件は以下の通り設定する。
フル販売の売上に関して、2年間の実績に基づき、プロモーション実施日および実施日以降は、大規模店は小規模店に対し、約2倍の売上があったため、今後も引き続き同比率だと仮定する。小規模店と大規模店の割合は同じと仮定する。また、プロモーション実施年の夏季4ヶ月間の1店舗あたりの平均売上は、約20万円であったため、今後も1店舗あたり20万円の売上を見込むと仮定する。
セルフ販売の売上に関して、2009年の高崎飯塚店と高崎高関店の2日間の売上は、約3万5000円~2万5000円であったため、2日間で平均3万円の売上を見込むと仮定する。そこには、実施日以降の残存売上は、実績がないため含まれていない。
残存効果の売上に関して、小規模店上里店でのプロモーション実施後、1年後でも月々約1万円の売上を記録した。大規模店では、フル販売と同じ法則を採用し、その2倍の2万円の売上を見込むと仮定する。また、フル販売と同様に、小規模店と大規模店の割合も同じとする。
フル販売とセルフ販売の配分は以下のように考える。フル販売は、セルフ販売の活気づけや起爆剤の役割と位置付け、毎年5店舗での実施とし、他店ではセルフ販売を行う。ルールとして、可能な限り全店で1回はフル販売ができるよう、順番に回ることとする。
これらの条件を踏まえ、10年間のシミュレーションを行う。その結果、夏季4ヶ月間の売上は、平成23年の1年目が約426万円、5年後の平成27年が約573万円、10年後の平成32年が約798万円となる(図表1)。

図表 1 売上予測
 平成 23年 24年 25年 26年 27年 28年 29年 30年 31年 32年
フル 件数 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5
 売上(万円) 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100
セルフ 店舗数 106 (115) (125) (135) (145) (155) (165) (175) (185) (195)
 売上(万円) 318 345 375 405 435 465 495 525 555 585
残存
効果 店舗数 5 10 15 20 25 35 45 55 65 75
 売上(万円) 8 15 23 30 38 53 68 83 98 113

合計 店舗数 111 (120) (130) (140) (150) (160) (170) (180) (190) (200)
 売上(万円) 426 460 498 535 573 633 663 708 753 798
*( )内は、ヤオコーの店舗開店数を予測した数字。毎年約10店舗ずつ開店すると仮定。
小数点第1位四捨五入。

(2)費用予算
費用予算も売上予算と同様に、フル販売、セルフ販売、残存効果の販売に分けて試算を行う。
フル販売の費用に関して、過去2年間にわたり、1店舗あたり1回の費用を縮小する努力を重ねてきた。実施場所により交通費や場合によっては宿泊費が必要となることがあるが、東京から遠方であっても通えることが多く、また近郊の場合は交通費も高くないため、相殺して宿泊費は含んでいない。また、徳島からの出張経費等は、その時の事情により出張人数が異なるため、含んでいない。フル販売の場合の1店舗あたり1回2日間の費用は、現段階では最低20万円かかる試算である(図表2)。しかし、マネキン代に関しては、マネキン会社と期間契約を交わす等により、コストダウンの余地はあると考えられる。
セルフ販売と残存効果の費用に関しては、ポスターやのぼり、POP等の資材代を計上している。各店に配布する資材は、のぼり(小)を10本、のぼり(大)を5本、ポスター5枚を1セットと仮定している。のぼりは、翌年も同じものを使用すると仮定し、2年目以降は増加店舗分の費用と老朽化対応費用を計上する。