講演レジュメ:「花ビジネスをどうするか」『JRC2010年下期政策セミナー』(10月4日)

 明後日、日本リテイリングセンターの「2010年度下期政策セミナーが開かれる。渥美先生の生前(6月21日)に依頼されていた講演である。このテーマで、昨夏に話してほしいとの打診があったが、昨年は別の予定があって、一年間延期になっていた。レジュメを掲載しておく。

「花ビジネスをどうするか?」JRC2010年下期政策セミナー
 日本フローラルマーケティング協会会長
 (法政大学大学院教授)小川孔輔
 @グランドプリスホテル赤坂

1 花産業の世界地図
(1)花のソーシング 高緯度熱帯高地から供給
 ① アフリカ大陸: ケニア、エチオピア、南アフリカ共和国 平均100Ha
 ② 中南米: コロンビア、エクアドル、コスタリカ 平均20Ha
 ③ アジア: ベトナム、マレーシア中国(雲南省)、インド(ムンバイ)など
(2)中間流通の支配者
 ① オランダ(セリ市場と生産) 加工センター
 ② デンマーク(鉢物生産) 欧州域内への物流システム
 ③ ドイツ(セリ市場と生産) 
(3)  支配的な量販店
 ① イギリス(テスコなど: 切り花だけで、売上350億円) 食品の売上の1.8% 
 ② ドイツ(南北アルディ: 1万2千店舗 売上300億円) 年間10%で伸びる
 ③ オランダ、フランス、スイスなど(アルバートハイン、ミグロ、カルフール)
(4)欧米での花販売のトレンド
 ① ブーケメーカー(花束加工会社)の寡占化
   インターグリーン(オランダ)、ズベッツルーツ(イギリス)など取扱高200億円
 ② 短茎多収性(ミニ化)の花の育種と選抜
 ③ 国際的な輸送体制、コールドチェーン完成
 ④ 鮮度保持とコールドチェーン化(日持ち保証販売、通常は7日間保証)

2 日本の花小売業:チェーン化への示唆
(1)チェーン小売業の展開
 ① 英米型は「セルフサービス方式」の売場展開が主流
 ② 仏・独・スイスは「フルサービス方式」の店舗が増加
 ③ 日本の食品スーパーの典型
   ・日販10万円で「人的販売」の売場が成立可能
   ・米国(プレミアムSM)では、有人での花販売
    例:米国テキサス州の「セントラルマーケット」(HEBのプレミアムSM)
   ・「惣菜売場」や「鮮魚売場」のアナロジーで考える
    インストア加工で、有人販売にもニーズ対応あり
    例:青山フラワーマーケット、ヤオコーの20店舗、ヨークベニマルなど
(2)高効率の売り場の条件
 ① 200店舗以上の店が必要(出店地域が集中していれば100店舗でもOK)
 ② ドミナントで店舗展開(加工と物流効率のため)、
 ③ 花の販売が店舗売上の1%を超えること(できれば1.5%)
 ④  粗利益率、35~40%(ロス率5%)
(3)標準的なローカル食品SMのモデル
 ① 店舗売上=20億円(15~30億円) 一日の来店客数が3~5千人
 ② 1%で年商2000万円(日販6万円)、1.5%で年商3000万円(日販9万円)
 ③ 母の日や年末の物日は、日販は30~50万円になる。
 ④ 売り場面積(5~10坪)
(4)真の消費者ニーズと売場作り
 ① 花店の品揃えは豊富=「消費者を喜ばせている」は思いこみ
 ② 定番の単品アイテム(長さ40センチ)を安く販売する(30アイテムで充分)
 ③ 優先課題=価格(一本50~100円、5本束で280円~480円)
 ④ 品質管理をきちんとする(日持ち保証)

3 結論: 課題=生産流通コスト、目標売価およびマージン率
(1)花束のボリュームと単価
 ① 英国とドイツ ブーケは10本が販売単位(単価350円~650円)
   一本単価で、35円~60円
 ② 具体的な提案:単価を60~100円程度に設定
   モノブーケは5本単位販売、5本束で価格帯は300円~500円
   プライスポイントは、380円(5本入り)、2つの価格帯(280円、480円)
(2)花束の作り方
 ① 中心のサイズは標準規格で40センチ
 ② 国内物流にプラス 面積あたりの収量が倍に(メルヘンローズの小畑社長)
 ③ バケットのサイズも、縦長は30センチ 積載効率も向上
(3)産地加工、センター納品
 ① 産地加工、量販店へのセンター納品
 ② 産地FBOで30~35円(一本あたり
 ③ 輸送賃10~15円(束あたり50~75円)
 ④ 納品価格は平均45円で、販売単価は一本あたり75~80円
   小売マージンは30~40円、最終粗利率で35~40%
(4)花売り場の目標成長率
 ①  5年で売上が3倍に上昇
 ②  当初3年間では、数量が2倍、販売金額50%増加