増収減益のポイント(ローリーズファーム)は、クロスカンパニー(アースM&E)の好調により沈んだ?

 本日の『日本経済新聞』で、「ポイント」の2010年8月中間期決算の報道記事が掲載されていた。増収増益のしまむらと比較する記事だった。本質は別のところにある。旗艦ブランド・ローリーズファーム不調の原因は、クロスカンパニーなどからロイヤルな顧客を奪われたからではなかろうか。


PBブランドが好調のしまむらは、2010年3~8月期、純利益(112億円)が13%増えた。売上高(2179億円)も対前期比で8%増加している。それに対して、ポイント(本社:茨城県)は、純利益(31億円)が19%減少した。増収(470億円)だが、上場以来はじめての減益である。
 日経の説明では、「主力ブランド(ローリーズファーム)の不振(6%の減収)」と「消費低迷」とある。「商品企画が流行に引きずられ過ぎ、ブランドの特徴がぼやけた」とのコメントであった。しかし、そもそも、しまむらとポイントを比較することには、ほとんど意味がないと思う。たまたま中間決算の発表が同じだったからである。

 ポイントと比較すべきは、クロスカンパニー(本社:岡山県)やハニーズ(本社:福島県)だろう。クロスの「アース ミュージック&エコロジー」(以下、「アース」と略記)は、同じ6ヶ月の間(2010年3~8月)に、既存店の売上を20%強伸ばしている(『販売革新』2010年10月号「特集:快進撃の研究」を参照)。
  わたし自身も、7月に竹内常務(クロスカンパニー)に確認したところでは、「宮崎あおいを起用した広告の効果で、全店で+30%の売上アップ」とのことだった。ハニーズも、2年間の低迷から抜け出して、最近は業績を回復している。もっとも、一昨日からの株価の下落を見ると、当初の期待ほどではないという見方もあるが。

 ポイントの販売不振の底流にあるのは、消費低迷や商品企画の問題ではない。ヤングカジュアル衣料品の店舗ブランド間競争で、アースなどの新興ブランドに顧客を奪われているからである。
 この春休みに、ゼミの学生たちと、つくばのモールで店頭を観察した。ローリーズファームとアースM&Aは、ショッピングビルの同じフロアに近接して店を開いていた。その後に、学生たちが新宿や郊外のSCで店頭観察したときも、ふたつのブランドは、直に競合していた。
 単に、立地やSC内の場所だけではない。商品と品揃えの面でも、両ブランドはダイレクトな競合関係にある。
 春のつくばでの調査のときに、花柄ワンピースを学生に購入してもらい(お金はわたしのポケットマネーから出した!)、製品の品質(洗い後の色落ち、耐久性、縫製チェックなど)を調査した。花柄のワンピースについては、ハニーズやAVV(イトキンG)、GAP、しまむらの商品も、同時に比較のために調査している。

 リサーチの結果は、以下の通りだった。
 通常の商品では、両ブランドの価格はほぼ同じ水準である。ただし、アースでは、プロモーションアイテム(宮崎あおいをフィーチャーした試作品)はやや高めに設定されていた。客単価は、アースがやや高めである。品質については、若干だが、アースのほうが他社に比べてよい(ほぼ大差なし)。
 店頭での両社の差異は、接客の仕方と売場の大きさ(アイテム構成)である。わたしの印象では、ポイントはほとんど積極的な接客はしてこない。アースは、ややうるさいくらいに(わたしの主観だが)、販売員がすぐに顧客(女子学生)に声をかけてきていた。ただし、レジの女性は感じが悪くない。
 アースは売場が小さい分、商品が絞り込まれている。売りたいものが明白で、シンプルな売場つくりになっている。だから、店員の接客とCMによるプロモーションを連動させやすい。ローリーズファームは、売場が大きい分、きめ細やかなサービスに手が回っていない感じだった。
 おそらく、ローリーズのようなデザインの商品が、あまりなかった時代(数年前)は、それでも、顧客はロイヤルだったろう。しかし、いまやSPAによる価格優位性がなくなっている。ハニーズやアース、イング(本社:兵庫県)もSPAである。セレクトショップのしまむらも、デザインでは急速に、若い子向けの他ブランドにど接近中である。なによりも、断然に値段が安い!
 
 総括してみる。ショッピングビルの中での販売合戦で、2010年上半期は、ポイントのローリーズファームが、クロスカンパニーのアースに敗れたのである。小規模SPAでは、ユニクロのような広告イメージ戦略は無効(無駄)だと考えられてきた。しかし、アースのような3点セットの商品販売戦略(SPA,広告によるイメージ構築、高密度の接客)もありだということである。
 ポイントの経営者たちは、この点をどのように解釈するだろうか。また、その対応策をどのように考えてくるだろうか。わたしの印象では、『販売革新』に掲載されたクロスカンパニーの2010年度通期見通しは、ちょっと甘すぎるのではと思う(2010年通期で、売上385億円、純利益67億円:前期2009年、それぞれ267億円、29億円)。
 なぜならば、ポイントも敗因がわかっているはずだから、下期は戦略を変えてくると予想されるからである。店舗数と潤沢なキャッシュフローを、ポイントはどのよう活用してくるのだろうか。秋から冬にかけての両社の戦いぶりが楽しみである。