「先生、山形プレミアム弁当、置いてないみたいです」と秘書の福尾から携帯に連絡が入った。わざわざ東京駅まで、弁当を買いに行ったらしい。昨日の朝10時のことである。「(新幹線で)到着するのが10時過ぎなのでは?」と答えたが、カウンターで弁当を販売しているお兄さんは、「プレミアム弁当は扱っていない」の一点張りらしい。
事情を確かめるために、松川弁当店の林社長に電話で確認をしてみた。林社長によると、全国駅弁大会(~2月11日)で「春バージョン」をデビューさせて以降も、プレミアム弁当は毎日3便(3回)で運んでいる。ただし、一回の納品数が5本ずつらしく、「すぐに売り切れてしまうからなのではないですか」との報告だった。
一昨日、山形新幹線で駅弁が到着するのを待ったわが妻も、プレミアム弁当を買い損ねて、がっかりして帰ってきた。連日の欠品状態(売り損ない)である。2月11日のわたしのブログに、「山形プレミアム弁当、再発売」と書いたので、福尾やかみさん以外にも、春バージョンを求めて「旨囲門」に行ったファンがいたかもしれない。
プレミアム弁当の再販売では、相当数の機会ロスが発生している可能性がある。わたしが買いに行った時でさえ、80本納品されたはずなのに、残数はわずか8本だった。前回のキャンペーンで固定客がついたのだろう。売り子さんも、「(到着すると)すぐに売り切れてしまうんです」と言っていた。
「明日からは、納品数を増やすことにしました」と、林社長からは事後報告があった。しかし、プレミアム弁当にそれほどの引きがあるのなら、いっそのこと、予約販売を実施してみてはどうだろうか。
松川弁当店と同様に、根強いファンがついている東北地方の駅弁もありそうだ。季節限定品とか、高額で特殊仕様の弁当など。トラックを利用した夜間輸送や全国駅弁大会のキャンペーンにおいて、仙台と山形の4つの弁当店は共同事業の実績がある。予約販売でも相乗りができそうな気がする。
予約販売のメリットは、ふたつある。今回のように、販売のチャンスロスを減らせること。そして、「残弁」と言われる廃棄ロスが減らせることである。売れる弁当しか運んでこないからだ。
逆に、予約販売の問題点は、受発注システムの構築と物流をどうするかだろう。ネットで受けつけるのか、電話で受注するのか。お客さんは、駅コンコース内の駅弁やで商品をピックアップするのか、それとも、受注数がそろえばデリバリーもするのか。
たまたま4月以降、東京駅の中央コンコース内にある駅弁専門店「旨囲門」は、改装のために半年間ほど休業することになっている。林社長のいまの頭痛の種は、販売コーナーの代替地が決まらないことである。
そこで提案である。この際、東北地方の駅弁やさんと協力して、その期間は、ネットと電話を使った予約販売を試みてはどうだろうか。衝動買いのニーズには答えられないかもしれないが、都心部で仕出し屋の「たまご屋」がやっている昼弁のニーズは取り込めるかもしれない。
たとえば、法政大学は、入試期間中に、アルバイトで雇った試験監督や採点者にある教員たちに、多量の弁当を配っている。わたしも長い間、両方の業務をこなしてきたが、毎日が同じ弁当では飽き飽きする。たまには、いつもとはちがう、おいしい弁当を食べてみたい。周りの先生たちも、同じ意見だった。
東北地方の駅弁などは、こうしたニーズにぴったりではなかろうか。弁当店が寄り集まれば、かなりのバラエティが確保できる。それこそ、日替わりで東北の味を堪能できる。単独では不可能なことが、共同事業でならば可能だろう。
「東北地方の駅弁やさんを復興支援しよう!」。キャンペーンのキャッチコピーは、これで決まりだ。
東北新幹線が入線する東京駅は、そのまま物流のハブとして活用できる。駅弁の販売スペースは小さくなっても、物流のノード(結節点)としては利用価値があるだろう。
駅弁だから、列車内や駅構内の販売だけにこだわる必要はない。自分たちで、「打って(売って)出る」勇気も必要だ。「東北の駅弁やさん、結集せよ!」である。