朝起きたら、台風の影響で、バケツをひっくり返したような大雨だ。隣に寝ている千田さんと石川さん(ダイヤモンドフリードマン社編集長)は、あまりの激しい雨で完璧に戦意喪失である。湖畔の宿に投宿している土屋さん(カインズ社長)に携帯でメールを送っている。
土屋さんは、おなかの調子が良くないので、ここ数日ろくにご飯を食べていない。重馬場(雨の日の走り)の経験はないから、こちらも出走するかどうか様子見のようだ。
わたしも15年間で、200回以上のレースを経験しているが、こんなにひどい雨脚は記憶にない。もちろん、わたしの場合は、長い時間を多額のお金をかけて、5週間もひとり合宿で練習をしてきたのと、昨年からの田沢湖リベンジがあるので、このレースを「走らない」という選択肢はない。
午前8時、雨が小降りになった。3人で、とりあえず大会会場まで、タザワコホテル前から出ている送迎バスに乗り込むことにした。土屋さんには、湖畔のホテルで合流することを伝えた。
午前9時、雨があがった。田沢湖マラソンの場合は、10K、20K、フルマラソンが同時スタートである。わたしたちは、前日にエントリーは終わっている。ゼッケンをつけたところで、わたし以外の3人も、この時点では走る決意を固めた。
直前まで、いちばん逃げの姿勢が強かったのが千田編集長だった。石川さんは、ポーカーフェースで、アイフォンアプリの自分の練習記録と昨年の20Kの記録を対比させている。練習で10キロやせたので、10分ほど記録を短縮することを狙っているらしい。2時間15分(昨年は、2時間24分)。
土屋社長は、当日エントリーになった。「朝のエントリー会場で、ゲストランナーの千葉真子と一緒に記念撮影をしてきた」とうれしそうだった。あんがいとミーハーだ(笑い)。
午前10時、田沢湖をちょうど一周する20Kマラソンがスタート。気温21度、湿度72%、無風。雨上がりで、少し蒸し暑い。もう少し肌寒いくらいがちょうどよいのだが。
田沢湖を半周する前半の10KMは、フラットなコースだ。1キロが5分20~40秒のイーブンペース。アキレス腱に不安を抱えているので、なるべく抑え気味に走る。周りは陸連登録の選手だから、4分くらいのペースで走っている。わたしは自動的に後ろに後退していく。10K地点が、54分。このままだと、1時間50分を切るか切れないのぎりぎりのペースだ。
14キロ地点からは、上りになる。ここでスローダウン。1キロ6分に落ちるが、これは計算通りの走りだ。15キロからの3KMは、1キロが5分40~50秒にペースを上げる。
最後の2キロでは足が上がらなくなる。1KMが7分近くまで落ちる。それでも、2時間は楽々切って、1時間52分38秒でゴールイン。総合553位(男子20K、1359人中)。
雨でどろどろになったゴール脇で、土屋さんがゴールに入ってくるのを待つ。予想タイムは、1時間55分~2時間。
土屋さんは、わたしより2分半遅れて、1時間55分。昨年より5分以上も記録を短縮。体力的に厳しいなか、好タイムである。石川さんは、余裕のゴールインで、予定通りの2時間14分。千田さんは、2時間24分でゴール。これも、予定のタイムである。
わたしたちが、ゴールして約15分後。突然のスコールが、ゴール地点を襲った。フルマラソンの参加者は、30キロ地点辺りで、大雨で難渋しているはずである。
なんともラッキーな20KM参加ではある。わたしたちが走っているときは、二度ほど雨が来たが、それほどの強さではなかった。ちょうどよいクーリングシャワーの感じだった。
一年越しの、田沢湖マラソンは、リベンジに成功できた。やれやれである。前日の温泉卓球が有効だったのかもしれない。リラックスとウォーミングアップ効果。
「卓球をあんなにシャカリキになってやらなければ、もうすこしタイムは上がったかもしれない」などと考えながら、たつこ姫の像から先の坂道を走っていた。帰りの新幹線の中で、そのこと(汗だくになって、そのあとは二回も風呂に入ってエネルギーを消耗したこと)を伝えた。
「でも、(レースの記録よりも)友情が大切よね」と卓球仲間の石川さんと千田さんに話したら、前夜はダブルスに参加しそこねた土屋さんも大笑い。次回からも、卓球台のある温泉宿をさがすことにしよう。記録は二の次で。
つぎは、10月9日の流山マラソン(10K)を挟んで、10月30日の大阪マラソン(フル)になる。アキレス腱には、やはりかなりの負担がかかっている。