欧州ツアー#4: IPM視察を終えて、ケルン大聖堂からライン河畔を上る

午前中に、IPM、国際プランツメッセを3時間視察してケルンの街へ。大聖堂のステンドグラスを楽しみ、夕陽のライン河を上っている。ケルンの大聖堂は、鎌倉時代に作り始めて、明治の初めに完成している。霞ヶ関ビルの高さの建造物を、約600年の歳月をかけて作り続ける根気はどこから来たのだろうか?


この疑問は、ガイドさんの説明ですぐに解決した。信仰心と思いきや?財源は、金持ちのチャリティ資金ではない。実のところ、聖堂の建設資金はライン川の通行税からきているとのこと。
 お城と思われたゲートは、外敵から領地を守る砦だった。物流の拠点でもある関所ならぬ砦で、通行料を巻き上げる。その資金がケルン大聖堂の建設資金に投じられた。
 600年間、砦は物流の要衝として機能し続けたわけだ。産業革命がもたらした重工業の発達で、鉄道と道路網が発達することで、水運の重要性が低下するまで、お城の砦は機能していた。そして、教会も宗教も社会の結節点の役割を果たしていた。

 さて、話題を本日の視察先のIPMに戻す。パリのメゾンエオブジェは、対象分野を拡張しすぎてテーマが拡散してしまっていた。デザインの展示会から、なんでもありの見本市になり求心力を失った。エッセンのIPMは逆に植物の時代を反映して活気を取り戻している。
 会場で待ち合わせた育種家の坂崎潮さんによれば、「まあ、いつもと同じで変わらないですね」と言うが、フランスからドイツに来てみると、経済状態はドイツの方が活気を帯びていると感じる。
 パリの街中で見た食品スーパーのFranprixより、デュッセルドルフの空港で見たREWEの方が、キレイで清潔で客の身なりも良かった。よく売れてそうでもあった。
 IPMを誘致しているエッセン市は、昨年から展示会場のリニューアルを断行している。景気の回復もあって、投資資金が確保できる見通しが立ったかららしい。

 新しくなった展示会場は、見違えるようにモダンで明るい作りに変わっていた。例えば、イタリアやスペインから、植木の業者がオリーブの樹木など、大ぶりの植物を展示していた。あの薄暗いゾーンを歩いているとは、かつては、トンネルの中を歩いているような陰鬱な気持ちになったものだ。
 しかし、今や、ゾーン7のエリアは、LEDのライトで煌煌と照らされている。昔は盆栽然としていたオリーブの木が、見違えるように生き生きとして見える。新しくなった舞台と照明装置が植物の商売にプラスに作用していることは間違いない。

 会場に展示されている植物は、基本的に仕立てが小ぶりになっている。デンマークのパビリオンが、工事が間に合わなかったのか、仮設のプレハブの最初のエリアにある。
 デンマーク人は元々、鉢物を可愛らしくラッピングする傾向がある。入り口から入ってすぐのゾーン14は、彼らが特権を行使してきた占有エリアだ。明るくなった建物に展示された、バラやカランコエなどからはじまる鉢花とミニ観葉の展示は、ナチュラル&コンパクトのトレンドか以前よりさらに強調されている。
 大きくてきらびやかなファッションが廃れて、色合いも優しいパステルカラー調のものが目立つ。こうした植物の世界においても、金ぴかやゴージャスは息を潜めている。コンパクトでkawaiiが舞台を席巻している。