全国各地から、花ギフト関連の情報を集約している。生産と販売について、定性・定量の両方のデータを集めている。母の日(5月8日)に向けて、ギフト市場には薄日がさしている。つい数週間前には暗雲が垂れ込めていたのが、まるでウソのようだ。その理由を解説してみたい。
海外の雑誌を読んでいる人は、このことをご存知かもしれない。3月から4月にかけて、英文の雑誌には、日本国内のネット販売が好調だったことが報道されている。楽天とヤフーでは、国内の物流が寸断されて、一時期は売上を落としていたが、海外のブランドをネットで販売している専門ショップは、震災から少ししてからは、売り上げが伸びていた。
4月第2週の頃になっても、百貨店など、首都圏を中心に営業時間が短縮されていることから、ネットショップには代替需要が入っている。とくに、誕生日などの高級アクセサリー、ブランド衣料品などのギフト需要が好調である(”BUSINESSWEEK”2011年4月第二週など参照のこと)。
その背景には、人々が震災以来、親しい人の間で、互いの安全を確認する「人間関係の復活・確認需要」があるのではないか。わたしも、震災を機会に、ずいぶんとたくさんのひとに電話をしている。また、秋田県の出身で、茨城県境の千葉県北部に住んでいるので、たくさんの人から「安全確認の電話」をいただいた。
つまり、ひとびとの人的なネットワークは活性化されているのである。そこに、本日の「日経新聞」で3月の決算が発表された。予想に反して、大手の製造業のほとんどは、増収増益である。アジアを中心に海外事業が好調なためである。
3~4月の落ち込みは尋常ではないのだが、それを打ち消すほどの勢いである。この先は、部品供給でマイナスは出るだろうが、増益基調に変わりはない。 したがって、春闘の妥結を見ても、給与水準が下落する兆候は全く見られない。東北の被災地は、たしかに雇用状況は厳しいが、復興需要のスターは目の前に迫ってきている。
母の日に関していえば、海外からの花の供給は、5月の連休を前にして、大きく減少している。3月の相場の下落を見て、海外の生産地は日本市場に対して悲観的になっているからである。
「大震災と放射能汚染で花どころではない」という思いこみが海外のビジネスマンにはある。えてして、思惑は逆に作用するものだ。輸入商社は、リスク回避に走っている。需要が逆転しても、いまからでは商品の手当ては間に合わない。
国内産地は、関西方面はもちろんのこと、東北地方でもすでに、生産活動は回復している。複数の大規模花栽培農場の社主と話したが、母の日の供給に問題はない。大規模なところから、受注は順調に入っいる。
心配をして電話したわたしが、拍子抜けするくらいにあっさりと、「まあ、思っていたほど落ち込まず、いい感じですね」と明るい声で語ってくれる。全国の産地で、これには例外がない。
ネット系の販売では、すでに対前年をうわまわりはじめている。店舗でも、母の日のオーダーは、昨年対比を超えて順調である。専門店でも量販店でも、販売の見通しは思ったほど悪くない。
本ブログで再三にわたり主張してきたように、贈り物としての花は、こうしたきびしいときだからこそ、必要なアイテムである。花産業の未来に対して、決して悲観をすることはない。