大地震や原発事故に罹災して気がついたこと

 昨日は、都心部で大規模停電が勃発するとの風評があり、帰宅は冷や汗ものだった。都営新宿線(市谷~本八幡)、京成線(京成八幡~京成船橋)、京成バス(天沼公園~鎌ヶ谷大仏)、新京成バス(大仏~西白井)のルートを乗り継いで、二時間かけて無事に帰宅できた。


最後の帰宅バス(鎌ヶ谷大仏~西白井駅)は、乗客がわずかにふたりだった。道中はすごく暇なので、しばしその男性と話した。わたしと同じくらいの50歳台後半だろう。

 このバスには、北総開発鉄道が開通する前に、何度かお世話になっている。バスが来る時間間隔が長いこと(1時間に一本)、終バスの時間が早い(9時ごろ)。だから、あまり当てにならない、不便極まりない路線だと思っていた。
 しかし、である。西白井の住民は、それでも、こうした代替的な交通手段を持っている。こうして苦しくなったときは、大いに助けになる。そのありがたみがよくわかる。昨夜は、停電のために新京成線が止まってしまった。
 それでも、最近になって、北総開発鉄道と並行して、「スカイアクセス特急」(~成田空港)が走るようになった。北総線は、成田国際空港や羽田空港までの足を確保するために、優先的に車両を走らせてくれる。列車も最新で建物の設備も新しいので、たぶん他の鉄道よりは頑丈である(憶測!)。地震やその他の災害には強そうだ。
 
 こんな発見は、大地震にも遭遇しなければ、知らずに終わったことだろう。不幸なことだが、つぎのようなことも、そうしたことのひとつである。
 わたしの周囲には、外国人の友達が多いひとたちが、けっこうな数がいる。大震災後の福島原発事故で、放射漏れの危険が増している。そのニュースを聞いて、知り合いの数人は、そのむかし世話をした外国の友人たちから、「○○さん、こちらから航空券を手配します。すぐに、わたしたちの国に、家族の皆さんと一緒に避難して来て下さい!」と暖かいメールをもらっている。
 海外のメディアは、日本の大規模な被爆を本気で信じている。たしかに、その危険がないわけでもなかろうが、おそろしいのだが、しかし。
 彼らは、本心から、悲痛な叫びで友人たちに切符を送ろうとしている。 もっとも、わたしも海外にTOMODACHIや移住した日本人の友人はたくさんいるのだが、誰からも受け入れの申し出は受けていない。ちょっとさみしい気がする。
 
 そして、昨日はとうとう、知り合いの日本人女性が、「先生、わたしは、フランスに脱出することを決めました。先生もせめて千葉からは脱出してください」というメールを受け取った。
 この女性は、外資系のサービス業に従事してマネージャー(日本支社長)である。本国(本社)から、「いまの日本は危険なので、即刻退去するように」と伝えられたという。
 原発事故の危険が判明してすぐに、彼女は名古屋のホテルに退避していた。たぶん、本国からの指令だと思われる。
 日本事務所のふつうの従業員たちは、どうするつもりなのだろうか。フランスの本社が、マネジャー同様に受け入れてくれるのか。そのまま放置されてしまうのか。

 彼女はいま、本社が手配したのだろう、エールフランスで関西空港から出国する準備を整えているはずである。本日の便である。
 わたしは、一晩おいてから、今朝になって、彼女にメールを送り返した。 「△△さんは、フランス人だったのですね」。
 外国人の成田からの退去が増えていることは知っていた。でも、日本人のなかでも、こうした行動に出てしまうひとがいる。複雑な気持ちである。
 先ほど、関西国際空港から、彼女のメールがあった。「わたしは変でしょうか?」。正直に言えば、わたしには正解はわからない。

 断っておくが、彼女は独身である。関西出身だが、本人も両親もともに生粋の日本人である。数年前に妻に先立たれた実の父親は、東京の病院に入院している。実妹夫婦も東京住まいだ。
 彼女は、パニックに陥っているのだろうか。それとも、用意周到なのだろうか。あなたは、この話をどのように受け止めるだろうか。