秋田への帰省#1:五能線で日本海の絶景を観る

 台風12号が東に逸れて、無事にJAL161便で羽田から秋田空港へ。本日は、リゾートしらかみ3号にて、弘前経由で青森の浅虫温泉まで。グリーン車の指定席はもちろん満席で、海側のシートも取れず。窓口で切符を渡してくれた女性の駅員さんに、「(日本海の絶景は)展望デッキに出てごらんください!」とアドバイスをいただいた。


生まれ故郷の能代駅で、しらかみ3号は10分ほど停車している。駅の改札口前にはバスケットボールのボードとリングが設置されている。短い時間のだが、電車が停車している時にフリースローが楽しめるのだ。5人ほどが投擲の順番待ちをしている。
 駅員さんから乗客に手渡されたボールが、首尾よくバスケットに落ちて行くと、順番待ちの観客から歓声が上がる。田舎町らしいのどかなホームの風景だ。
 地元の能代工業は全国高校総体など全国制覇した優勝が38回。最近はインターハイの決勝に残れなくなったが、この栄誉ある記録に三年間貢献したのが、のちに渡米してプロになった田臥勇太選手だ。
 田臥選手は、本当は神奈川の出身だが、加藤監督を慕って能代にバスケット留学をしてきた。高校野球でよくあるケースなのだが、日本人のほとんどは田臥くんは秋田県人だと思っている。都合の良い取り違えなので、わたしはそのことを否定しないことにしている。

 電車はこれから五能線に入って海岸線を走る。子供のころに海水浴を楽しんだ岩館を過ぎるあたりから、千畳敷のあたりまでは、日本海を見下ろす絶景が続く。不老不死温泉あたりから見る夕日はすごくきれいなのだが、今日は午後一番での通過になる。
 リゾートしらかみ3号の終着駅は弘前だ。奥羽線に入ったら川部駅で急行列車に乗り換えて、本日は青森駅まで。本日は能代を一旦スルーして浅虫温泉まで行くことになっている。
 浅虫温泉は、その昔に一度だけ親父に連れられて行ったことがある。しかし、町や温泉の様子がまったく記憶に残っていない。青森の温泉では、サン婆さんに連れられていった日景温泉の方が記憶が鮮明だ。微かな硫黄泉だった。

 浅虫温泉に行くのは、企業派遣で法政の経営大学院に来ている院生のプロジェクトのためだ。吉川くんを派遣してくれた、みちのく銀行の上司とミーティングをする約束になっている。話し合いの議題は、浅虫温泉の再生計画。大久保ゼミのプロジェクトだ。

 わたしは夕方少し前に到着するが、青森駅までは吉川くんが迎えに来てくれることになっている。彼のプロジェクトテーマは、夕食と宿泊の分離でインバウンド顧客を増やすこと。
 そのために、町の飲食店と温泉旅館同士の連携の仕方を変える案は、本当に実現が可能なのかどうか。また、みちのく銀行の社内プロジェクトとして立ち上げることができるのか。話し合いと現地視察でその検証を試みる。
 今回の秋田への帰省は、50年ぶりの同期会に参加することが本来の目的だ。そのついでに、院生を助けるために1日、青森に向かうことを思いついた。さて、その結果やいかに?

 リゾートしらかみ号は、そろそろ海岸線に沿って走り始める。
 日本海の絶景とブナの森に抱かれた神々しい白神山地の姿は、文章だけではうまく伝えることができない。