オランダの情報戦略が、公開(オープン)から閉鎖(クローズ)に変わるのはなぜか?

 山本清子さん(オランダ在住)から、何度かメールをいただいている。花き協会とフローラホランドの代表者と、10月にIFEXで会合を持った。その後、ユルンくん(フローラホランド)や守重さんと連絡を取っている。情報開示に関して、オランダでは大きな動きがあるように感じられる。


山本さんからは、「来年度から、オランダ花き協会は、販売統計や価格データをあまり外に出さないようにするようですよ」との情報をいただいた。必然的にそのようになるだろう。わたしたちが予想していたことが、実際に起こりはじめている。
 一昨年来、イギリスのスーパーを訪問していて、花束加工の担当者が述べていたことがあった。「小売チェーンで寡占化が進んで、切り花の調査データが外に出なくなった」(ズベッツルーツの担当者)。花の値段や供給量が公に発表されなくなったのである。
 情報を握っているのは、ごく一部の市場関係者とチェーン小売業者になる。加工と生産をする側は、蚊帳の外に置かれていることを懸念していた。
 
 オランダでは、どうだろうか?
 この数年間で、切り花の海外生産が増加している。花市場の統合・合併によって、オランダ花き協会は、もはや生産者組合としての国内基盤を失いかけている。それと交代して、市場での支配力は、欧州唯一の花市場となった「フローラホランド花市場」(協業者としての「ランドガルト(@ドイツ)市場)」に移ってきている。
 公的でオープンな存在としてのオランダ花き協会が、このままでは機能的に後退していくだろう。そうなると、「(フローラホランド市場も、)商品情報をあまり外には出さないようになります」(山本さん)となる。
 市場は私的な「民間組織」である。情報的には、閉鎖系組織である。海外産品が主たる商材であるから、もはや国内生産者を代表しているわけではない。むかしの生産地市場とは、いまや立場が異なる。
 一般の国内生産者会員に向けて、内部情報を開示するメリットは少ない。グローバルなソーシングの情報は、戦略的に利用されるだろう。国際市場を牛耳ろうと思えば、海外生産と販売の情報は、それ自身が財産である。
 
 ポイントは、オランダ花市場の役割が変わったことである。アルスメール市場とフローラホランド市場の合併時点で、すでに予想されていたことである。オランダの花市場は、グローバルな情報ハブと供給面での独占的な市場支配を目指している。だから、アジア最大の展示会(IFEX)の実力を見学に来ていたのだろうと思う。
 しかし、中国を中心としたアジア地域は、オランダ人がもっとも苦手なエリアである。直接は手が届かない場所になりかけている。日本だけが、唯一まっとうな人材と情報を持っている。いまの段階では、アジアでもっとも秩序のある市場が存在している。
 おそらくは、グローバルに戦略を立案する上で、わたしたち(JFMAとその周辺の花産業者)の動向が気になったのだろう。その評価は、彼らの目にはどのように映ったのだろうか?

 守重社長(インパック)の判断によれば、「欧州の花小売チェーンは、オランダ(市場)の思惑とは別に、熾烈な価格競争に突入している」らしい。従来は品質を追求してきた英国のチェーンが、このところ、変調をきたしているとのこと。
 1年間でも現地の状態を見ていないと、局面はずいぶんと変わっていくものだ。のんびりとアフリカに行っている場合ではないのかもしれない。