何年かぶりで、工場見学を体験してきた。東京郊外、多摩地区の日野市にある自動車の組み立て工場の見学である。鈴木さんという現場担当者の方に、1時間ほど案内していただいた。トラックのアセンブリー工場を見ていると、日本経済の先行きがよく見える。
二年前に依頼されて、この自動車会社の社内CS評価システムを構築するお手伝いをさせていただいている。昨日は、同社でCSがダントツトップだったある販社が、「なぜ高いスコアを獲得できているのか?」を現地で調べてきたので、同社幹部向けの報告会で本社に伺った。せっかくなので、同じ敷地内にある工場を見学させていただいた。
リーマンショックで経済的に被害を受けたのは、この自動車会社も同じである。数年前の一時期、ピーク時には一日に97台をはきだしていた製造ラインは、直近では一日27台に落ち込んでいた。数か月前の状態である。それが、数カ月の間に、ボトムからは2倍に製造台数が回復している。受注が増えたからなのか、この工場は「静かな活気」が満ちている。
工場部門で働いている従業員は、現在約2千人(部品工場も合わせて、全体では5千人)。そのうちの9割が、「正規従業員」である。ようやく、操業度が黒字すれすれまでもち直してきたことになる。全国から集めてきている「期間工」が、2千人いたという。ピーク時には、全体で五千人近くの工場労働者が、ここで働いていたことになる。東京郊外でも、たいへんな雇用創出力なのだ。
言葉だけで知っていた「ラインストップ」(不具合があった場合に、黄色い紐を引いてライン全体を止める行為)が、実際に行われている現場をはじめて見ることができた。部品を積載したカートが移動式で、製造ラインと一緒に動いていくシステムは、興味深かった。TQCの成果や、こまごまとした工夫が日本の自動車工場では、いまだに地道に進められている。
この工場から、大型トラックやバスが海外向けに輸出されている。一昨年訪問したバラ園があった「エクアドル」向けのトラックを、組み立てラインで見つけた。横浜港から出船して、首都キトーに着くまでは、約1カ月かかるそうだ。中南米の景気は悪くないのだろうか?などと考えてしまう。
中国向けのトラックは、重量を支える「ばね」の大きさが半端ではない。「同じ30トン車でも、中国向けは丈夫に作ってあるのですよ」と案内の鈴木さん。過積載がふつうなので(罰則がないのかな?)、通常の倍の安全性を見て、重たい部品を装着するらしい。
自動車工場からは、世界経済の動向と輸出先のお国柄がよく見える。日本の政治はどうなるにせよ、景気の先行きは暗くはなさそうだ。自動車株は、「買い!」かもしれないですよ。(笑)