企業とのコラボレーション(フィールドワーク)の15年間を総括する

 昨日(2月7日)の学部小川ゼミ・フィールドールドワーク最終発表会では、二年連読で「ナチュラルローソン班」が優勝の栄誉に輝いた。準優勝は、6年前にしてはじめてカインズ班が獲得した。その他の二チーム(シェアードブルワリー班とランナーズ班)も実績では他の二チームに負けてはいなかった。

 

 勝つか負けるかは、その時の運が作用する。勝っても兜の緒を締めよ。負けて腐ることはまったくない。昨夜の涙は無駄にはならない。世の中に無駄な事件は絶対に起こらない。

 事件は学生たち、とりわけ今年度で卒業することになる4年生はご苦労さんでした。二年間で、最終的に入賞できなかった学生もいると思うが、これだけ自由に活動できることは、生涯でたった一度だけ。学生のときだけ。そのことは卒業して社会人になってから初めてわかるようになる。

 

 さて、2004年のエキュート大宮からはじまった15年間のフィールドワークの活動を総括してみたい。 

 このロングランの教育プログラムは、わたしの教師としての基本理念の変更から始まっている。教育を重視する立場の研究者として、あるときから(35歳くらいを境目にして)、通常のマーケティング教育に疑問と不満を感じるようになった。40歳少し前のことである。机上の空論だけでは、学部教育が世の中から遅れていく。

 遠い昔の経験をいえば、現在イオン傘下にある「ハックドラッグ」が20年前に合併した相手方の食品スーパー(静岡県三島市の「キミサワ」)で、出店調査の実施にゼミとして参加したことが、フィールドワークのはじまりだった。元秘書だった本村千浪の世代が、最初の実習生だった。

 その後、経営学部がインターンシップ(企業研修)をはじめるようになるが、わたしがこの科目の最初の担当者が小川だった。その後、わたしが学部長に就任してから、花王から客員教授にきていただいた陸正さん(のちに、千葉商科大学教授)や、一昨年まで経営学部長を務めてくださった竹内淑恵教授(元ライオン)らが順番にマーケティングの企業研修を担当することになった。

 

 そのころ(1994年に夜間の社会人向け大学院HBSを創設)から企業との取り組みをはじめていたが、学部小川ゼミとしては、学生を企業研修に直接出すことはしなかった。

 取り組みの変化が起こったのは、2004年の専門職大学院の開校だった。院生プロジェクトの補助(練習課題)として、学部生も参加して、院生と一緒に市場調査や商品開発、プロモーションの企画を企業とコラボレーションすることなった。最初の事例が、エキュート大宮(JR東日本ステーションリテイリング)の開業である。

 本当に偶然に、ショッピングセンター協会のセミナーで、エキュート事業の責任者だった鎌田由美子さん(現在、(株)カルビーの執行役員)と知り合うことになった。うまくいくかどうかもわからない駅ナカ事業の混乱に乗じて、学生と院生の6チームを、大宮エキュートに投入した。一年間をかけて、店舗の運営やプロモーションの改善提案をして、ボアソナードタワーでの最終発表会に臨んだ。懐かしい想いでである。

 

 その後、3年生と4年生・全部で24人いるゼミ生(男女半々)が、年間を通して4チームに分かれ、企業と特定課題で取り組みをはじめるようになった。大学院の教室(101教室)ができてからは、10月に中間発表会を、2月には最終発表会を開いて、院生やOB、一般企業のひとにも最優秀チームの選考に加わっていただいた。

 これまでにフィールドワークにご協力いただいた代表的な企業は、以下のとおりである。錚々たる企業群が名を連ねている。

 ・ユニクロ、INGNI、ハニーズ、青山フラワーマーケット、ロック・フィールド、東京ドーム、カインズ、ヤオコー、松川弁当店(米沢市)、シーラック(焼津市)、ナチュラルローソン、イシダ(京都市)、アールビーズ(『月刊ランナーズ』)など、多数の企業組織との共同プロジェクトを経験させていただいた。

 

 これからの課題は、教育研修プログラムとして、もっと具体的な成果が上がるプログラムに企画を持っていくことだろう。しかし、ハードルを高くすると結果だけを求めることになってしまう。それでは、大学教育には不適な方向かもしれない。

 なお、学生が企業体験を通して働く楽しみを得られるプロジェクトが選択肢にあってもよいだろう。今年度から取り組んでいる「魚津プロジェクト」など、ゼミ全体で取り組むテーマは切り口として新鮮だった。これから、京都府のプロジェクト(「海の京都」)を研究室として受託することになっている。ゼミ全体として取り組みプロジェクトではある。

 わたしに残された時間は、あと4年間(いまは66歳だから70歳まで)。それまでに、フィールドワークをやり切って教育の場を去ることにしたい。