相原修、嶋正、三浦俊彦(2009)『グローバル・マーケティング入門』日本経済新聞出版社(★★★★)(改訂版)

『グローバル・マーケティング入門』は、日本ではじめての一般ビジネスマン向けに書かれた「国際マーケティング」の入門書である。わかりやすく書かれているのが、本書の第一番目の特徴である。相原氏は、日経文庫『ベーシック マーケティング入門』で、三浦氏は、有斐閣の『マーケティング戦略』(共著)で、テキスト・ライティングの達人である。しかし、共著者3人の本来の専門は、国際マーケティングである。グローバル・マーケティングの入門書を刊行するには、最適のチームである。
 本書の2番目の特徴は、トピックスとテーマがフレッシュであることである。評者もたくさんの専門誌や書籍を読んでいるほうだと思うが、それでも、本書ではじめて出会う概念や会社名、著書・著者がたくさんあった。例えば、「ボーン・グローバル企業」、「(ブランドの)先願主義」、「グローバル・コモディティ」などである。海外の事例も、適切で過不足がない。


全体は、8つの章から構成されている。最初の2つの章(第1、2章)は、グローバル市場のマクロ的な動向についての解説である。第3章で、世界の消費者の今を素描した後で、続く2つの章(第4、5章)では、企業側のグローバルなマーケティングの方式を扱っている。後半部分の3つの章は、製品政策に関する第6章「価値の創造」、コミュニケーション戦略に関する第7章「価値の実現・伝達」、国際的なサービス事業を扱った第8章「グローバル・サービスの展開」からなる。
 多少の難点を言えば、分量(278頁)の関係で、コラムや事例がコンパクトすぎて、やや内容的に厚みが欠けていることが指摘できる。ただし、もう少し詳しく知りたい向きには、きちんと参考文献が巻末に用意されている。全体的な印象である。本書には、流通業の関係者があまり目に触れることがない概念や企業などが登場している。グローバルな市場を知るために、本書は大いに参考になるのではないだろうか?
 最後に、蛇足である。本書と拙著『マーケティング入門』は、偶然にも、同じ出版社(日本経済新聞出版社)から、同日(7月24日)に発売になった。著者の相原教授と三浦教授とは古くからの友人である。出版直後に、「どちらもたくさん売れてくれるとうれしいですね」とメールを交換した。