第二回「徳島すだちプロモーション@ヤオコー上里店」の“堂々の”報告である。連日の実演販売で(わたしも売場に立って8箱分を売りました!)、かなり疲れている。結果は、初日(8月29日、土)は4万円、二日目(8月30日、日)には、全員で5万8千円を売りあげた。関東の食品スーパーの店舗として、すだちを10万円近く売ったのは、たぶん最高記録である。
関東圏では、「すだち」の認知度がほとんどない。そうした販売場所でのキャンペーンであった。すだちが旬の8月とはいえ、この売上げ数字は記録である。実績としては、上里店のすだちPI値が、8~11(来店客100人当たり購入点数)をマークした。
初日は、夕方の二時間(4時台と5時台)ともに続けて、PI値が11+を記録した。つまり、来店者の100人に11人が、すだちを買ってくれたことになる。前回より、わたしたちのすだちプロモーションが進化した。その理由を以下では説明したい。
日曜日は午前中から昼過ぎにかけて、販売がピークを打った。関連販売で売るすだちのような商品は、売上が早めに落ちる。時間帯別に、販売の明確な傾向が見えて、非常におもしろかった。ゆっくりと買い物をする環境がないと、認知度の低い提案型の商品は売れないらしい。細かい売上データは、現在、ヤオコーさんのほうで集計中である。
さて、スタート時は、不安の連続だった。土曜日の朝、わたしが家から出かけに、最寄り駅にカバンを忘れてしまった。そのままいったん戻って帰るなどの事件があって、不吉な予感がした。杞憂ではあったが、無意識の緊張感など、わたし本人も実はいろいろと考えるところが多かったからと思える(人ごとみたいだが 笑)。ぎりぎりどうにか、上野駅で新幹線に乗れて、東京駅から来た7人のチームに合流した。
本庄早稲田駅で上越新幹線を降りて、ヤオコーがある「ウニクス上里」(SC名)に到着すると、「選挙の日は、店舗への来店者がいつもより増える」と、高崎地区販売担当の塩原部長から聞かされた。選挙の日は、消費者が遠出をしないからそうである。すだちプロモーション実行班に、この情報は吉報である。
それなのに、関東地方には台風が接近している。キャンペーンには、大きなマイナス要因である。上里店の須藤店長も、天気(台風)と販売目標値の設定(10万円)で、緊張気味である。企画リーダーの花畑さんは、先月より大きくなったお腹を抱えて、こちらも、いつもはゆったりぎみの顔がややこわばって見える。JA全農徳島、徳島県庁チーム、応援のゼミ学生たちも、どうなることかと緊張気味のスタートだった。
結果としては、おかげさまで、台風の動きが遅く、二日間の来店客数もほぼ予定通りだった(両日ともに4000人+)。いま現在、8月31日の夕方になって、わたしが住んでいる千葉県白井市でも、風雨が激しくなってきている。高い成果を上げられたのは、以下の要因があったからである。
前回との違いは、初日(土曜日)のミーティングのあとも、飲み会で翌日の戦略を練ったこと。量をたくさん売るために、当初の箱売り(40個入り)の価格で、初日598円を、塩原部長と須藤店頭とわたしとが相談の上で、ワンコイン(500円)にさげることにした。初日の4万円から、2日目の約6万円に、翌日は、売上を上げることができた。さらにが、販売方法に、以下の工夫を施した。現場での反省を踏まえて、すぐに翌日に修正を加えたのである。
試食のマネキンさん(販売要員4人)に、二日目はとくに入念に、お客さんへのトーク内容を、朝礼できちんと説明した。その内容は、チームリーダーの花畑さんが説明した基本的な商品知識である。これがないと、マネキンさんとお客さんの会話が成り立たない。一声をかけないと、試食だけで、すだちは売れないのである。
とくに、二日目には、40個入りの500円パックを売りたかった。生で絞ったすだちが、「どんな食べ物にでもあうこと」、「絞ったすだちは香りよいこと」、「お肉や、餃子や、うどんや、お豆腐や、多様な食べ方があること」を、埼玉の人たちに知らしめることが必要だった。会話の中に、疲労回復効果、美肌効果など、すだちの特性をいれるようにともお願いをした。
旬のすだちは、約1~2ヶ月は、冷蔵庫においておけば保存が保存可能である。そのように説明してもらうことで、会話の中身についての指示を徹底した。全農徳島のすだち生産者である鍛冶さんが、すだちの特性をマネキンさんやゼミ生に直に説明してくれた。現場でも、徳島のチームが、徳島弁で、マネキンさんをサポートしてくれたことがとてもよかった。
もうひとつの成功要因は、保存方法に関して、売場にジップロック(保存用パック)を置いたことである。ヤオコーでは当日、一個が99円で販売されていたので、関連販売の陳列場所に一部の商品を移してもらった。実際に、すだち8~9個をジップロックに入れた状態を、店頭で示して、お客さんに説明する方法を採用してみた。これは、箱を売る場合に、大いに説得効果があった。
補足情報である。ヤオコー上里店で、すだちキャンペーンが始まる前の7月中(7月1日~23日)は、上里店の4週間でのすだちの売上は、5千円だった。一ヶ月前にHPで紹介したように、第一回のすだちプロモーション・キャンペーンでは、初日(7月24日)に、1万1千円、二日目(7月25日)に、1万4千円。合計で、2万5千円のすだちを販売した。販売の中心は、3個パック99円(単価33円)だった。塩原部長が、わたしからの提案で、バックルームで急遽作ってみた10個入りパック198円(単価20円)は、初日から20個単位で売れていた。
キャンペーン終了後も、8月28日まで、この値段で販売を続けた結果、約1か月の売上は2万5千円だった。合計で、5万円の売上になった。とくに、販売のためにマネキンさんをつけたわけではない。青果売場だけでの販売である。こうした準備があって、第二回のキャンペーンを迎えていた。
当日配布されたチラシには、徳島すだちフェスティバルが掲載されていた。わたしも今回は、学者としてではなく、現場で実務を担当するものとして、多くの教訓を得ることができた。以下は、そのポイントである。
(1)現場での改善の大切さ
陳列方法や商品づくりは、現場でどんどん修正してよい。最初は、すだちのばら売り(一個39円)と3個パック(99円)だけの商品提供だった。バラでは効率が悪すぎることはすぐに分かった。7月の初日、その場で、塩原部長と10個入りを作ってみた。値段は、その場で、須藤店長が決めた(198円)。説明すると売れることがわかった。
この経験から、8月の第二回は、箱売りをすることを決めた。値入れの関係で、初日は598円(40個入り)だったが、あまり売れなかった。二日目は、一箱はワンコイン(500円)の値段に下げてみた。40箱近く売れたが、値段だけでなく、タオルの景品をつけたこと、たくさん売るためのトークと保存方法の説明が決定的だった。
(2)仮説の大切さ
仮説がないと、何事もアクションは決まらない。リーダーの花畑さんが、「すだちラリー」(売場を回って各試食コーナーでスタンプをもらい、ゴールしてアンケートに答えると景品がもらえる)を着想したのには理由がある。一年間の研究プロジェクトを通して、すだちがメインで売れる商材ではなく、関連販売で売れる商品であると考えたからである。
この仮説が、ヤオコー売場で、見事に実証することができた。店内の数箇所のコーナーで試食をして、その場に陳列されたすだちを購入したひともいれば、ゴールのあとで、箱買いをしてくれたひともいた。関連販売とラリー方式を結びつけた勝利である。また、数字はまだ詳しく分析していないが、すだちをかけるために、やや高めの商品(高価な豆腐、かに、しいたけ、サーロインステーキ)が売れているらしい。
(3)ミーティングと漸進的な改善プロセス
チームでの「テストマーケティング」なので、事前事後のミーティングが大切である。当日の朝のミーティングだけでなく、終わってからの反省会がふたつの意味で大切だった。参加意欲を高めるためと、実務的な売場陳列、商品作り、販売方法の改善のためである。
実際に、試食を担当したマネキンさんたちは、ヤオコー上里店での体験(ミーティングへの参加)などはしたことがなかった。自分たちの意見が翌日の関連販売(すだちラリー)に、具体的に反映されることがなかった。初めての快感に、今回も自ら志願してヤオコー上里店に来ていただいた。
実務的には、はじめから、関連販売やすだちラリーの結果がわかっていたわけではない。もともと、関東圏の人たちには、すだちは高級食材のイメージが強い。名前さえ知らないか(かぼす、ゆずとの、名前の混同)、ほとんど食べ方がわからない。そのひとたちに販売するためには、店舗側もお客側も、だんだん慣れていく(買い方と食べ方の両方で進化していくこと)が肝心である。そのためのステップを作ることが、ヤオコー100店舗の中で、上里店(須藤店長はじめ、すばらしい店舗運営スタッフチーム!)を選んだ理由である。大当たり!であった、
(4)ヤオコーの特性とすだちの商品力
このような企画(すだちの関連販売と全店を使ったスタンプラリー方式)ができたこと、ならびに、結果を出すことができたのは、パートナーさんの質(クッキングサポートのような、商品提案ができるパート従業員集団の存在)とヤオコーさんの社員の質(売場づくりや新しい商品づくりにチャレンジさせる体質)によるところが大きい。
また、すだちという商品の特性によるところが大きかった。絞ってかけると、なんにでもあう商品なのである。
是非、皆さんも、スーパーでお買い求めください。おいしいです。わたしは、ヤオコー上里店で箱買いをして、千葉の自宅に戻りました。千葉ニュータウンのヤオコーでも、すだちの大量陳列を期待します。