まだ速報値なので正確なデータを公表できないが、今年度(5月)のJCSI調査で、セブン-イレブンとローソンの顧客満足度が大接近していることがわかった。昨年度は、セブン(70.9点)が、ローソン(64.9点)とファミリーマート(64.9点)を大きくCSスコアで引き離していた。
セブン-イレブンの顧客満足度が下がっているわけではない。そうではなくて、ファミリーマートと比べて、とくにローソンのCSが急上昇しているのである。その差が2点以内に接近している。セブン-イレブンのお家騒動もあって、メディアでの取り上げられかたも、玉塚会長・竹増社長ラインには好意的である。
しかし、その一方で、玉塚氏がCEOのまま会長に棚上げされてしまうのではないのか。ローソンに対する三菱商事の影響力が増すことを懸念する声もある。ご本人は、国内(玉塚会長)と海外とM&A(竹増社長)の役割分担を強調しているのだが、わたしも、本音を言えば、玉塚さんがこれまでのように独自路線を切り開けなくなることを懸念しているひとりである。
それは社内の事情なのだから、わたしなどが外野からとやかく言う立場にはない。経営のかじ取りと役割分担がうまく調整できることを願うばかりだ。
ともあれ、来週発表になる予定の「2016年度第一回のJCSI調査」の結果に注目していただきたい。時系列でみると、セブン一強(5弱)の時代がそろそろ終わりかけていることが分かる。
さすがに、コンビニエンスストアも、成長時代から飽和と分化の局面に差し掛かっている。日本のコンビニエンスストアでは、①シニア対応が始まったばかりである。だが、「近くて便利」の先にあるのは、それとは別の価値観のような気がする。たとえば、②ローカルな消費文化への適応、③健康や美容のニーズに対する対応、④便利さとおいしい食事とのバランスだろう。
セブン‐イレブンが独走できたのは、鈴木イズムの成功に見られるように、コンビニエンスストアの便利さと商品開発力(ユニークさとニーズの取り込み)へのフォーカスにあった。業態革新のコンセプトで、徹底的に便利さと効率が追求されてきた。そのおかげで、置き去りにされているのが、②と③であろう。
ローソンがセブンを超えられるとすれば、②ローカルと③健康・美容が突破口になると思っている。三年以内にそれが起こりうると考える根拠を探るために、7月には、ナチュラルローソンの消費調査を実施する。若い女性に焦点を当てた「健康や美容コンセプト」が、差別的な優位性を獲得できる可能性が、都市部以外でも存在するものなのか?
7月の調査では、成城石井も評価の対象とすることになっている。2つの”飛び道具”に加えて、三番目には、農業分野への事業展開がある。ローソンファームの取り組みついては、明日、前田本部長がIM研究科で講演(マーケティング論授業内)をしてくださることになっている。
ナチュラルローソンや成城石井は、圧倒的に都市消費者の支持を得ている。地味ですぐには利益に直結しないが、ローソンファームの取り組みにも期待している。10年前に予言したように、衣料品業界に続いて、日本の食品小売りチェーンは、「SPA(製造小売業)」に向かっている。