渥美俊一先生の近著『チェーンストの商品開発』(ダイヤモンド社)を読んでいる。いろいろとおもしろい部分が他にもあるのだが、気がついたのは、商品開発にあたってチェーンストアが「やってはいけないこと」を列挙していることである。禁止事項を守るのは、けっこうむずかしいものである。
同じような話を最近、どこかで聞いたことがあるな。そう思っていたら、青山フラワーマーケットの井上英明社長が、自社の経営で「やってはいけない項目」を列挙していたことを思い出した。
今年の1月、JFMAの新春セミナーの講演メモ(JFMA松島専務理事作成)が残っていたので紹介する。
●青山フラワーマーケット 井上社長 14:45~16:00
「お花屋さんのお店作りとは? 青山フラワーマーケットの戦略!」
(中略)たくさんメモあり、、、
*やらないことを明確に
・ドライフラワー、プリザーブドフラワーは扱わない
・法人需要はやらない
・ホテルに入らない
・店舗スタッフを本社が採用しない
やってはいけないことのガイドラインである。働く人は、しごとがやりやすい。やるべきことを考えて、それを実行するのはたいへんである。しかし、明記されていることをやらないようにすることは、いとも簡単である。
わたしの記憶によると、「仏花とカスミソウを扱わない」と井上さんは以前は言っていたような気がする。昭和花き研究会(福島県会津)の菅家さんが、それを聞いて憮然としていた様子を覚えている。
このふたつは、店舗立地によっては、扱わないようにするのは実は難しい。いまはたぶんリストから取り下げているはずである。
例えば、日暮里の店は、谷中の墓地が近いから仏花が置かれている。店をのぞくと、よく売れていた。現場スタッフの意向は、社長といえど無視はできないだろう。
(注)この記事を読んだ菅家さんから、一昨日にメールがあった。
カスミソウと輪ぎく、スタチスとレザーファンは、いまだに仕入禁止商品だそうです。
徹底している。
渥美先生の場合も、同様なチェックリストが列挙されている。著書からの引用をお許しいただきたい。
*頻発する間違い 156~158ページから要約して引用 (商品開発時に起こる不祥事。特に多い商品の用途・品質・機能についての錯覚)
A NBと中身はほとんど同じで、価格は1~2割安い
B 品目ではなく品種グループ単位での販促
C 用途の説明ミス
D 目先がちょっと違う品
E コモディティ・グッズ(すでにNBが量産体制に入っている品)
F バイヤー個人の発明品
G コーナー制(店内の一部を仕切り臨時の壁面で囲った売場)
H 配色無視
I 試売が行われていない
(J)
K 自社の社員とパートナーがまるっきり買わない品
経営者にとっての行動指針として、「やってはいけないリスト」は有効である。わたし自身は、新しいことにチャレンジしたくて、いつもうずうずしているタイプの人間である。きちんとやるべきことを積み上げないといけないときには、新しいことにチェレンジすべきではない。
長年の間、毎年ひとつは新しいことにチェレンジしたい。20%の努力(時間)を新しいテーマに投入すべきであると考えてきた。
しかしながら、今年に関しては、新しいことには挑戦しない。そういう年にしたいと思っている。究極の「やってはいけないリスト項目」である。さて、できるかどうか、、、