昨日の昼過ぎに、松島さん(JFMA専務理事、元キリンビール)から電話をいただいた。ショッキングな事件は、今朝の新聞でも明らかになっているように、麒麟麦酒による花事業子会社(KF&G)のオランダファンド会社への売却である。日本の花産業にとっては、多大なる損失である。
先々週、サントリーとキリンの話しが破談になったときに、わたしは周囲の人に笑って言ったものである。
「これで、花部門だけが、キリンF&Gとサントリーフラワーズが合併したらおもしろいよね。親が離婚したのに、子供が結婚」。
そんな事態は起こりようがなくなった。種子や苗の開発には、実に長い時間を要する。10年は当たり前、通常は15年から20年を要する。新品種の開発に時間が足りなかったキリンは、25年前、榎本専務の時代に、次々に欧州の種苗会社を買収した。
オランダ(菊:フィデス)、スペイン(カーネーション;バルブレブラン)、英国(菊:SGP)、フランス(ジャガイモ:ジャビコバ社)などである。北欧の輸入会社までに手を出したこともある。国内では、フラワーゲート(花門)や第一園芸(苗部門)を買収している。米国ではツワイフォードなど、100を超える海外子会社を買収した。
そして、いま、選択と集中。21世紀のこの段階で、それらすべての資産を手放すことになる。日本企業では、ファンド会社であっても、キリンの花部門を買収する企業はまずいないだろう。この経済状態である。残念至極。日本の花産業は、根っこ(種子の世界)から苦難の道を歩き始めている。
守重副会長(インパック社長)からの朝のメールである。
「(前略、キリンは、)25年前、僅かの間に一気に300億円を超える規模の会社に成長させました。松島氏はキリンアグリバイオカンパニーの社長をお勤めになっていましたが、今回のニュースには心境複雑だと思います。」
25年間の先人たちの努力に対して、しばし黙祷である。ここで育った花業界の人たちは少なくない。金で買えないものもある。事業経験と人材の蓄積、そして、貴重な遺伝資源。それらは、日本国家としても戦略的な商品である。