【学生感想文】岩崎 達也 , 高田 朝子(著)『本気で、地域を変える』晃洋書房

 読書感想文優秀者3名を掲載する。
(海津まりな、根岸佳祐、吉沢成夏)

 

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「本気で地域を変える」を読んで   18F0226 海津まりな

 本書は地域を変えるためのノウハウを様々な事象を述べながら細かく説明している。確かに現在、新型コロナウィルスの影響でインバウンド事業が打撃を受けたため、多くの地域が新たな形を考えなくてはならない状況に陥った。しかし私の住んでいる地域はもともとが観光地でもなければ大きな建物があるわけでもない。特に思い入れもなく私自身地域を変えたいと思ったことがなかった。そのため、私にとって地方創生は想像しづらかった。
 しかし読み進めていくうちに、この本が述べているノウハウは地域だけでなく、身近な組織を変える際にも同じことが言えるのではないかと考えた。そこで実際に私が経験したサークルの体験談を本文の内容に沿って書いていこうと思う。

 組織を変えることにおいて一番共感したことは、新しいことを始める難しさである。私はよさこいサークルに所属している。この本にも、北海道の「YOSAKOIソーラン祭り」が若者による新たな取り組みの成功例として挙げられていたが、実は私も大学2年生の時に参加している。しかし2020年はコロナの影響で中止になってしまい、毎年参加していたその他20個のお祭りもすべて中止になってしまった。
 私のサークルは毎年同じ時期に同じお祭りに参加していたため、ある程度のスケジュールが決まっていた。しかし対面の練習もできなくなり、ましてや踊りを披露できる場はゼロとなった。何を目標に活動すればよいのかも分からなくなってしまったのである。
 私は最後のサークル生活を楽しみたいと強く思っていたため、何かできることはないかと考えていた。同じように考えていた仲間はいたものの、大半が保守派であった。他のよさこいチームも様子を伺うばかりで活動はしていなかった。そこで私は同じ意思を持った仲間と、『オンライン練習』を始めようと動いたのである。

 これから私の体験談を、本文第6章で述べられていたレヴィンの3段階モデルに沿って考えていく。
〈解凍段階〉
 まず『オンライン練習』をすることを同学年に提案したところ、「画面上だけで振りつけがわかるわけがない」「新1年生なんてなおさらだ」などと反対意見が多数だった。これが3段階モデルの解凍段階にあたる。

〈移動段階〉
 そこで「このまま何もしなかった場合どうなるのか」「本当にこのまま時間が過ぎてしまって後悔しないのか」を問いかけ、丁寧に想いを語った。練習方法も細かく考えて提示した。それにより賛同してくれる仲間が少し増え、一度試してみることになった。やってみると案外うまく行き、良い評判がコミュニティ内に広がることで日に日にオンライン練習の参加人数が増えていった。これが3段階モデルのうちの移動段階である。

〈再解凍段階〉
 そしてオンライン練習が主流となった頃、サークルの代表が今まで参加したことの無い新しい披露の場の話を持ってきた。それは例年よりも日程が早く、このままの練習では到底間に合わないスケジュールだった。しかしゼロになったお祭りにみんなで踊れるチャンスの兆しが見えたのである。これこそ最初は反対意見がほとんどだったが、オンライン練習がうまく行っていたこともあり、何回も話し合いを重ねた結果挑戦することにした。
 目指す目標ができたことにより、多くのメンバーが協力してくれるようになった。練習方法も次第にブラッシュアップしていった結果、どのよさこいチームよりも早く、踊る場を手に入れ披露することができたのである。この成功例を見て、他のよさこいチームも活動を再開し始めた。これが3段階モデルの再凍結に位置するだろう。

〈結論〉
 この経験から、何か新しいことを始めようとした時、人は従来の考え方からなかなか抜け出せない生き物で、気持ちを動かすのには時間を要することを改めて実感した。しかし現状を理解し未来を提示することで、抵抗しない方が得な状態を作ることが成功への第一歩となることがわかった。今まで自分の体験を後から分析する機会がなかったため、今回本文に沿って分析をすることで自分たちの取り組みが成功した理由を改めて知ることができ、良い機会になった。
 現在の日本では、コロナウィルスの影響で失ってしまったものがたくさんある。しかしこれを機に地域だけでなく様々な組織が従来の考え方を見直す良いきっかけとなったのではないかと感じている。少なくとも私は、この状況下だったからこそ、周囲と協力して困難な状況を乗り越える貴重な経験ができた。今後社会に出た後も、同じような状況にぶち当たることがあるだろう。その時は今回学んだマネジメント法を活用したいと思う。

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「本気で地域を変える」を読んで   18F0419 根岸佳祐

 「地域活性化」、「地域づくり」。こんな言葉は今まで何度か聞いてきたことはあるが、実際にはどのように行い、どのような手順が必要なのかということまで意識したことはなかった。だが本書を読んで、具体的にはどのようにすればいいのか、何が必要なのかなどを知ることができた。

 本書を読んで印象に残っている点が大きく二つある。まず一つ目は「変える」ための三要素についてである。何かを変えるという行為には三つの要素が不可欠で、一つ目は人。二つ目は「こうなりたい」という将来図と「現状はこうである」という明確な状態の把握。三つめは一歩を踏み出す勇気であった。
 一つ目の人としては、所属はどうであれ、その組織や地位のためにやり遂げようというかなり強い意志を持った人の存在は不可欠であるということ。
 二つ目の明確な状態の把握というのは、逆算的思考で目標と現状の間のギャップを埋めていくということ。
 三つ目の一歩を踏み出す勇気はどんなことを始めるとしても初めの一歩を踏み出さないと何も始まらないということ。思いを持った人は多くいる。しかし、どのような方法でやればよいのかわからず混沌としているのが現状。そして「こうなりたい」という具体的な将来図をかける人、持てる人は少数であること。その「こうなりたい」という気持ちも、現状を把握し、自分たちはどうなりたいのかを真剣に考えた結果として生まれるものである。そして最も重要なのは描いた「こうなりたい」を実行するために踏み出す勇気であり、行動であるということ。この三つがそろわないと何も変化しないということは「気づいているようで気づけていない点」であるということを感じることができた。

 自分自身も今までの生活の中で「こうなりたい」という具体的な将来図を持てることはでき、実行するために一歩を踏み出す勇気も持つことができた。だがしかし物事がうまくいかなかった経験が何度かある。それがなぜ上手くいかなかったのかは、目標から今の現状の間のギャップを理解し、それに向けた対策を行っていなかったからであると本書をよんで理解することができた。今までの私はただ行動を起こすだけで、逆算的思考を持ち合わせることができていなかったため、今後はこの思考を意識しながら生活していきたいと思えることができた。

 本書を読んで印象に乗っている二点目は、「マインドセットを変えるには時間と手間がかかる」ということだ。人を動かすリーダーの心得としてこれは理解しておかなければいけないと感じた。

 人個人の「こうあるべきだ」というものは長年の育った環境や生きてきた環境の影響を受け形成されえていくもので、生活習慣に根差したマインドセットは変化させるのには時間と手間がかかるそうだ。例外として何らかの危機に直面した時に最も素早く変化が起きる。
 いずれにせよ、通常の状態において人はすぐには変化しない。地域は生活の基盤。地域に対して時間を重ねてできた思い、強いマインドセットがあるであろう。人一人でさえマインドセットをすぐに変えることは難しいのに、それを集団、地域として変えていくということはとても時間を有するものであると感じた。
 だがそこでも丁寧にきちんと地域の「こうなりたい」を説明し、理解を得る。最初から変化を喜ぶ人間など確かにいないであろう。それでも腰を据えて説明することや、自ら実現に向け取り組んでいる姿勢というものを見せていくことで相手も少しずつ変化していくのではないかと考えた。

 このことから個人でも集団、組織でも最初から相手の気持ちをすぐに変えることを目的とせず、目的に向かって必死に取り組む姿勢で相手に寄り添っていきたいと考えることができた。
 本書をすべて読み終わり私の地元について改めて考えるきっかとなった。私の地元は栃木県の佐野という場所である。2013 年のゆるキャラグランプリで佐野のキャラクターであるさのまるくん」がグランプリを獲得した。のにもかかわらず現在、栃木県は魅力度ランキングが最下位の 47 位という結果である。
 栃木県全体で、まずはマインドセットを変えることは難しいということを念頭に置きつつ、目標設定とそれに向けた栃木県に今足りないものの現状分析を行うことで少しずつではあるが、地域の活性化につながるのではないかと考えつくことができた。

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「本気で、地域を変える」を読んで   18F1636 吉沢 成夏

 リーダーシップを発揮できた経験が私にはない。現在はアルバイトにおいてリーダーを務めている。だが、人を動かすことの難しさに直面している。本書では、組織行動学の視点から、それぞれ異なる価値観を持つ人を一つの方向へまとめるため必要とするリーダーシップについて述べられている。ここでは本書の内容に沿って、今後の改善策を考えてみたい。

 前述のとおり、私はアパレル販売のアルバイトでリーダーを務めている。目標は日々の売上目標を達成することだ。しかし、各々アルバイトに対する認識の違いがあり、全員が一致団結して目標達成の為に動けていないのが現状だ。スタッフ 16 名のうち 13 名は売り上げに対する貢献度が低い。売上目標達成が実現するのは、残り 3 名のスタッフが出勤している日、または好天や休日など外的要因に恵まれた好条件の場合だ。

 しかし、そんな日も週 4 日。あと 3 日は全くと言っていいほど数字がとれない。このままでは店舗実績は悪くなる一方だ。私はこの現状に危機感を覚え、どうにか店舗全体を一つの方向に向けなければならないと感じた。
 こうして初期改革リーダーになったが、人の心を動かし、集団を一つの方向に整えるために、私はどう行動するべきか。本書では、マインドセットの変化が始まるには 3 つの条件が存在する。①危機感②利益③挑戦、による変化だ。一つでも条件に当てはまれば人の心は動くと述べられている。

 私は①危機感に着目した。3 つの条件で一番人の心を動かしやすいのが危機感の認知である。組織行動学によれば、組織改革は、危機が目に見える形で迫ってきて初めて多くの人を巻き込む。同様に危機が可視化され目前に迫ると人々は初めて、事態が他人事から自分事に変化する。この時にこそ凝集性が高まり、組織をまとめることができる。
 今年、退職者が 3 名出た。コロナウイルスによる売上不振が原因だ。つまりクビだ。退職者の選定は店長が行い、業務に対する意欲で決定した。店長は店舗の雰囲気を考慮し、リーダーである私のみ知らせた。私はこの事実を伝えるべきだと考えた。この組織を変えるために、危機感の共有をするべきだ。一人一人のモチベーションが低いあまり、売上がとれていない。結果、人件費予算が削減され、出勤希望が大幅に削られるかもしれない。再び退職者がでるかもしれないという危機感を与えようと思う。無気力なスタッフは、「自分の働きなんてどうせ関係ないから大丈夫」と楽観的に考えているのだろう。そんな彼らに私はこの事実を周知させることで、危機感を与え業務に対する意識改革を実行し、スタッフのベクトルを一つの方向に束ねていく。

 危機感の共有によって、マインドセットに変化が生じる。そして、組織行動学によると 3つのステップを踏むことで組織は変化すると述べられている。
 1 つ目は、新しい方向性を示す。目標を常に掲げ、周囲に言葉で語ることだ。2 つ目は実行する協力者をつくる。その際に、新しい方向に向かうことで、彼らにとっての「お得」を説明することが重要だ。そして 3 つ目は小さな成功体験を持つこと。これによりモチベーションが維持され活動が継続される。この 3 つのステップを考えていこう。
 まず、私は卒業生と連絡を取り、恩恵を尋ねる。以前、一人の卒業生に、「アパレル販売していてよかったことはありますか?」と問いかけた。そこで、将来活かせる営業スキルが習得できると聞いた。例えば、顧客のニーズを汲み取る力、また提案を断られても落ち込まないメンタルなど、どのようなシーンで役立つのかを聞いた。スタッフの 8 割が学生であり、これは彼にとって非常に「お得」な情報だと考えられる。同様に多くの卒業生にメリットを聞き出し、「お得」をさらに説得力あるものにしていく。
 その完成された「お得」を伝え、目標達成が意味のあることだと共有することで協力者を作る。協力者の選定には、まず影響力のある人間を引き込むことがポイントだと述べられている。私は大学一年生の川上君(仮名)を選ぼう。一番後輩である彼の意欲が上がれば、先輩は焦燥感に駆られ、やらざるを得ない環境が作れる。先の危機感を利用したものだ。

 そして、新しい仲間の小さな成長を評価する。接客に失敗したとしても、いいアプローチができていたら、それは成功として褒めちぎる。その些細な成長に気づき、伝えることで彼らにやりがいを実感してもらう。やっていることが無駄ではないことを強化し、モチベーションを維持することができる。

 この 3 ステップを経て、彼らが目指す方向と行動が良いものだと周囲も感じ、行動変化後の自分がプラスに働くことを予測させることができる。結果、組織は 8 割の方向を統一することができる。残り 2 割は抵抗勢力と呼ばれる。本書では、完全に抵抗勢力と合意形成を狙う必要はないと述べられている。抵抗勢力のために方向性を曲げてしまうと、これまでの協力者のモチベーションを下げることにつながるからだ。これらを踏まえ、8 割の方向性統一を目標に、実際に組織変革を試みたい。

 今回学習した組織行動学のリーダーシップは、皆にとっても必要な時が来る。人は組織に所属する。学生時代は部活にアルバイト。社会人になれば企業という組織に入り、さらに区分けした部署に属す。そして人は次第に経験が蓄積され、組織を牽引する役割を担うことになる。近い将来私にも組織を動かす立場が任されると予測する。そうであることを願う。組織行動学のリーダーシップを振り返り、今後の組織マネジメントに活用したい。