中国共産党批判の記事が満載:『ニューズウィーク日本版』(2021年3月30日号、4月6日号)

 本日もネットで話題になっている「中国共産党のウイグル族抑圧」に関する記事。ニューズウイークは、基本は民主党寄りのメディアである。最近も、「共産党と戦うウイグル女性」(4月6日号)と「中国に対峙するバイデンの外交に思わぬ足かせが」(3月30日号)と中国ネタが多くを占めている。米国の雑誌記事は、中国ネタばかりだ。欧州や日本はほとんど興味の外にあるらしい。

 

 バイデン大統領になったら、対中政策は、中国寄りになると思いきや。予想に反して、トランプの遺産を引き継ぐ形になっている。論調も、共和党政権時はトランプの中国政策に批判的だったが、民主党が政権を奪回しても、外交政策の基本はほとんど変わっていない。

 ただし、3月30日号のタイトルが示しているように、米国が中国に対して振り上げたこぶしを下げることはそう簡単ではない。軍事的・経済的・思想的な脅威は収まっていないからだ。人権問題に対しては、欧州企業(ZARA,H&M)が中国からいやがらせを受けている。日本企業(ユニクロ)も、CM出演を中国人俳優が辞退するなど、微妙なブラフ(脅かし)をかましている。

 ターゲットにされている柳井さんは、「政治問題には関知しない」との態度を表明している。売上規模が大きい中国市場で、中国共産党の反感を買うことは避けたい。そもそも中国重視というより、中国経済圏の規模が大きすぎる。生産の現場は縮小気味だが、消費市場としては利益が出ている。

 

 本音のところでは、政治問題には首を突っ込みたくない。日本政府の立場もユニクロに近いと思われる。たとえば、商社では、伊藤忠商事が典型例である。岡藤会長の前任者、丹羽社長のころから伊藤忠商事は中国寄りだった。中国へのコミットメントが半端でなく強い。

 投資規模も小さくない。中国ビジネスがこけると、商社全般が大きな収益基盤を失いそうになる。その点でいえば、トヨタ自動車も似たようなものだが、トヨタは米国のコミットメントがそれよりは大きい。どちらを取るかとなると、欧米路線に味方するだろう。

 

 「ニューズウイーク」の論調は、基本的には人権重視である。人権問題をテコとして中国を批判する立場である。

 何をいいたいかといえば、日本の利害は、中米どちらも大切にしたいのだが、企業によっては中国依存度がより高い企業(業界)と、米国依存度が高い企業(業界)があるということだ。

 政治家も同じである。旧民主党は、反米・中国寄りだが、日本企業の利害は「また裂き状態」にある。どちらに転んでも、痛い目をみる。「蝙蝠戦略」(立場を鮮明にしない)を取らざるをえない。とはいえ、わたしは、政治的・軍事的には、日本は米国寄りにならざるを得ないとみている。

 結局は、軍事的な利害が最終的な態度を決めることになる。根本的には、地政学的なリスクもあって、日本は中国寄りにならないだろう。米中両方をうまく操作したいと、日本の政治家や経営者たちは考えているように思う。そんなに簡単ではないが、すくなくとも人権問題にはあまり首を突っ込みたくはない。

 ミャンマーに対する政治判断でも、いま明確な態度を表明することは、日本にとって何のプラスにもならないからだ。さて、この先はどうなるだろう。