中越地震のボランティア活動に参加していたゼミ生の名和敬之君(4年生の元ゼミ長)から、10月の読書感想文(課題図書:ブラットバーグ他(2002)「顧客資産のマネジメント」ダイヤモンド社)が送られたきた。
感想文そのものは、本筋からややズレてはいたが、その中に興味深い観察記録があったので紹介したい。
地震から約一週間後、ひとりのボランティアとして、新潟の救援活動に参加していた名和君が、現地で同じく救援活動に協力していたメーカー各社の、善意からではあるが、どこか生々しく赤裸々な姿を上手に表現してくれていた。日清食品さんは、怒らないで感想文を読んでいただきたい。ある観点からすれば、そんな風にも見えると言うことである。
* * *
この本(課題図書)を読んでいる頃、私(名和)はちょうど新潟県でボランティア活動をしています(注記:名和君は、神戸淡路地震でもボランティア活動に従事していた経験を持つ)。毎日、多くの企業から救援物資が届けられ、村中の被災者に配る作業をしました。私たちボランティアにも食料などが配られます。不謹慎な考えかもしれませんが、救援物資を寄付する企業にとって、その広告効果は絶大なものになっていると思います。救援物資自体がトライアル商品にもなるし、なんといっても企業のイメージアップは絶大だと思います。
食料品の救援物資のトライアルに関して言えば、被災地の人のニーズは「食料」であって、「暖かくて、おいしい食料」ではありませんでした。そのため、消費者ニーズのハードルが下がり、この本で言う「トライアルにおける消費者の期待に応えられない」というリスクは一切なくなると思います。もちろん、企業側は善意で送ってくれているのだと思いますが、企業のブースのようになっていたり、多くの新商品もありました。中でも目立っていたのがインスタントラーメンメーカーの日清でした。お湯を入れるワゴン車には、「カップヌードル」のロゴが、まるで都バスのようにラッピングされており、何百メートル先から見てもそれとわかるくらい目立っていました。そしてコミュニティFMを聞いていると「今日は、~市の~体育館前に日清のワゴン車があります。」などというPR活動も抜け目なくされていました。
また、興味深い体験ができたのが、災害直後の物資の少ない状況から、多くの物資が届けられ、ある程度被災地者の物資に対する選択肢が増えるまでの間の被災者の心理の変化でした。物資が増えてくると、やはり被災者の人も物資の選択権が発生します。それが定価の高いものを好む人もいれば、普段からロイヤルティを持っている商品を選ぶ人、新しい物好きな人、お金を出してでも近くのスーパーに行って欲しい商品を買う人というふうに、日本で何十年とかけてきた、生産者志向から消費者志向へと変わっていった市場をほんの一週間で目撃した気分になりました。ほとんどの商品が無料か、それに近い金額で提供されているにもかかわらず、そういった消費者行動が見られるということは、価格のついた商品を選ぶ時は更なる消費者の厳しい視線が注がれることは容易に想像がつきました。