JFMA欧州ツアーで、スイス最大の都市チューリヒにいる。スイスは、全土で人口700万人、チューリヒには、そのうちの37万人が住んでいる。豊かな町である。
朝8時半に、ミグロの本部を訪問して、花担当マネジャー、ニコル・メイヤーさんのレクチャーを受けた。彼女を6年前に日本に招待している。以下は、ミグロの概要と、チューリヒ近郊の店舗視察の記録である。1月26日。
ご存知の方も多いと思うが、スイスは一人当たり切り花消費額が世界ナンバーワンの国である。日本の約2倍、年間約8000円である。常々、日本の花産業は、この国を目標にすべきと主張してきた。ミグロは、そのスイス国内で、花の販売額シェアの約半分を握っている。ちなみに、会員数200万人、生協組織のミグロは、MIROSとスペルで書くが、Sは発音しない。ミグロと読む。
ミグロは、小売、製造、卸、金融、旅行など、いくつかの事業単位から成り立っている。販売高は、2、5兆円である。小売部門はそのうちの約65%、約1兆4千億円を占めている(1ドル=100円換算)。花部門は、小売の約1、9%である。花部門全体では、260億円の売上がある。販売高の約2%という花の構成比は、イギリスのテスコと同等である。ミグロは、国内を10のエリアに分けている。それぞれが、地域生協と呼ばれる連合体である。フランスとドイツの国境に海外店舗を実験的に展開しているが、国内にほとんどの店舗がある。現在は、601店舗を持つ。
花部門は、2年半前に青果部門から独立した。14人のバイヤー(本部4人、各地域に一人)で、運営がなされている。ニコルさん曰く、「花部門は規模が拡大して、地位が向上した」。誇らしげに話してくれた。昨年は、さすがに、約2、6%、売り上げを落としている。小売店舗の多くは、MMタイプと呼ばれる、売場面積2000~4000平方メートルの食品スーパーである。標準店は、700~800坪。花売場は、95%が有人のインショップ形式を採用。5%のみが、セルフサービスである。ロス率は8~12%。セルフの売場は、一日5万円の売り上げがある。標準的なMMタイプの店舗では15~20坪で、日販15~20万円である。なお、粗利率は、32、5%である。効率が高い。来店客の調査と商品の構成は別途に示す。
ミグロの特徴は、商品と売場、マーケティング全般の標準化が進んでいることである。花売場の事例を見てみる。
(1)商品
80%が全国共通、残り20%がローカルで調達する商品である。全国で売られるものは、基本的には、オランダ経由(輸入商社、加工会社を利用)である。ただし、一部は、ケニアなどから直接に調達される。フェアトレード商品などである。
ローカルの商品は、地産地費のサマーフラワーや苗ものが中心である。環境保全(ビオ)を強調している。この場合は、10の地域生協が独自に仕入れている。
ラベルに星マークが付いている商品群が、このブランドである。季節性、旬を訴求している。
輸入商品は、35cmのバラ15本5フラン(450円)など、バジェットラインと呼ばれるブランドで売られていた(構成比5%)。逆に、上のラインとしては、セレクション、というプレミアムブランドをもっている(同1~3%)。
(2)価格
下は、モノブーケが5フランから始まる。7、9フラン、12、9フラン、14、9フラン。基本は、4つのプライスラインである。品質と単価でラインを決定。プライスラインにあわせて、本数を調整している。
ミックスブーケは、14、9フランと24、9フラン。だいたい、バラもチューリップも、販売価格は、1本あたり7~8フラン(60~70円)見当で価格づけされていた。
これは、全店共通のようである。4店舗を見学した。ただし、アクティベーションといって、30%程度の値下げプロモーションを実施していた。このやり方は、全店共通である。
(3)販売方法
什器が標準化されている。バケツは、外側がブリキ、内側がリサイクルのプラスチックバケツ。陳列什器は、スタックが出来るタイプのユニットを採用している。
プライスカードやPOPも共通である。ディスカウントもプログラム化されている。基本的には、5日間の日持ち保証がなされている。
(4)PB商品
資材は、花瓶やカラーサンドなど、ガーデン部門(ドイトガーデン)と共通なPBを採用している。600店舗で規模の経済性が働くのだろう。競合のコアプより、資材の価格は安い。棚スペースも、標準化されている。
ミグロの花部門をまとめてみる。あたらしい典型の発見であった。有人の売場で、最低10万円の日販。花の価格は、ミディアムレンジ。品質はかなり高い。シンプルながら、店舗も商品もデザインが優れている。なお、街中とショッピングセンター内の花専門店をニ店を訪問した。こちらも、レベルがかなり高い。スーパーとのすみ分けがうまくなされている。