日常的に携帯メールを交換している卒業生ママさん(元ゼミ生・院生)が数人いる。サントリーのワイン会社に勤務している堀(松尾)英理子さんもそのひとりである。彼女からはときどき、仕事の相談や問い合わせのメールが来る。
わたしのほうも、これまで彼女にはずいぶんと助けられている。先月まで3ヶ月間、JFMAは研修生として、フランス人女性のポーリンさんを受け入れていた。松島専務理事が、キリンアグリバイオの社長時代に、欧州の関連子会社でお世話になったフランス人社長の娘さんが、日本で実務研修を受けたいということで、JFMAが身元を引き受けることになった。
来日したポーリンさんは、松島社長との面談で、花業界のほかに食品分野などでマーケティングの研修を受けたいという希望をもらした。彼女の実家が、チーズを扱っていること、ビジネススクールを卒業した後で、将来は日本とつながりがあるマーケティングの仕事に従事したいと彼女が考えていたからである。
来日して1週間。急なことなので、簡単には受け入れ先が見つからない。困っていたわたしたちに助け舟をだしてくれたのが、堀さんである。サントリーとしては、前例の無いことだった。にも関わらず、彼女は粘り強く上司を説得してくれた。その努力が実って、ポーリンさんは一ヶ月間、サントリーのワイン部門で特別に研修を受けることができた。
ボジョレヌーボーがちょうどは入荷したころだった。タイミングよく、彼女はサントリーの輸入ワインのプロモーションに一役買うことができた。先月27日に、ポーリンはフランスに帰国していった。チューター役を引き受けてくれた堀さんは、偶然にも2月末にフランスにワイン研修に行くことになっている。おそらくは、返礼としてポーリンが堀さんをパリで接遇することになるのだろう。
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その堀さんから、一通のメールをもらった。一昨日のことである。わたしが、その前日に、ちゃんこ料理を楽しみ、その前々日にはチェコ料理を美味しく食べた話をメールしたからである。
小川先生、チェコにちゃんこ、バラエティに富んでいますね。うらやましいです。子供が久し振りに発熱し夜中慌てました。母親がいるので私は安心して出勤です。こういう時、普通のママなら、在宅勤務で仕事ができるようになりました。サントリーの在宅勤務制度は育児や介護だけでなく、申請が認められれば誰でも利用できます。育児中の女性のほとんどが取得してます。家から会社のイントラネット、全社共有ドライブが見れますので、電話が頻繁にかかってくる会社にいるより、格段に仕事が進みます。使い分けてうまくやってます!堀
この話を、堀さんと仕事をしている元ゼミ生の女性マネジャーにメールをしてみた。彼女が勤務しているのは、大手の調査会社である。即時に、彼女から返信があった。
小川先生 うちの会社は在宅勤務は認められてないんです。ハンドリングするデータの問題と思います。子育てなんとかマーク認定されてますが、実態は個人が勝手に何とかしてやってるだけ。だから辞める人や重荷になってる女性は多いです。誰も真剣に取り組んでない。人事部も未熟です。Tより
会社によって、子育て支援の対応はずいぶんとちがうものだ。Tさんの会社に同情するとすれば、機密情報をあつかっているので、在宅は難しいのだろう。その点から言えば、サントリーはすばらしい会社である。先進性が証明されたことになる。女性社員は(たぶん、男性社員も)、その恩恵に浴している。キリンと合併して大丈夫かな、と心配になるくらいである、、、
IT技術の革新(社内イントラネットの普及)が、在宅勤務を可能にしている。堀さんのメールにもあるように、子供が熱をだしたときに、いくつかの企業では、在宅で仕事ができる環境が整いつつある。かつて、オーストラリア人(シドニー大学ビジネススクール教授:ジャック・ウッド)から聞いた「テレワーキング」が日本でもはじまっている。あとは、もうひとりの卒業生Tさんの会社の人事部が、結婚・出産した有能な女性たちが辞めないよう、子育て支援の制度つくりにまい進してもらうことだろう。
民主党政権は、子育て支援に積極的である。しかし、「子育て手当て」を支給するよりは、働くママさんに自由な時間と働きやすい職場環境を整えるほうが、少子化対策には有効そうである。