講演レジュメ: ダイヤモンド流通フォーラム流通倶楽部(第8回会合)

今月は講演とパネルの司会が多い。9月17日には、「ダイヤモンド流通フォーラム流通倶楽部」で講演を行うことになっている。全体のテーマは、「価値創造 ブランド・ロイヤルティとストア・ロイヤルティ」である、4人の講師が登壇するが、わたしはトップバッターである。講演1「変わる企業価値 創造的ブランド構築とこれからの流通」のレジュメを、HPにアップする。


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1 ブランドを巡るふたつの特集
・ 『チェーンストアエイジ』2009年9月1日号(特集)
  「ディスカウントストアブーム 破壊と革命の狭間」
   低価格PBとNBの安売り
 ~ どこにも「ブランド価値」という表現は出てこないが・・・
 
・ 『MJ(日経流通新聞)』2009年9月4日号(一面)
  「PBの衝撃 NBの逆襲」
  低価格PBに対するNBの反撃 ~ 差別化の方法
    嗜好性の強調
複数社のコラボレーション(キリン、みつかん)
イベントプロモーション(ハルスカレー)
健康()、オーガニック(米国の事例)

 ・ ここから見えてくるものは・・・

 ・ 2008年度 ブランド価値ランキングから
   ネット企業以外に、流通ブランドは、ひとつもランクインしていない
  考察: ウォルマートのように、
売上高が40兆円を超えたのに、「ストアブランド」は、
ブランドとしての価値を認知されていないのだろうか?

2 サントリーの動きが今を語る?:ふたつのエピソード
(1) サントリーのワイン部門と花部門
・ メーカーと小売り 競争と協調行動
・ 経営統合発表の余波
サントリーのワイン部門担当者 → 国内と海外 キリンは?
    サントリーの花部門 → 「青いバラ」の行く末は?
・ ところで、サントリーの企業価値(ブランド価値)はどうなるのか?
   報道によれば、 
株式時価評価は、キリン2:サントリー1

(2) サントリーの対小売り戦略
・ カインズの自社開発ワイン「リコ・リコ」
   サントリーの協力 チリワイン(750ml 448円)
・ 7&iなどへのPBビールの提供

3 そもそもブランドとは何か?
(1) 顧客価値の方程式
商品の顧客価値 = 品質 ÷ 価格
・ 顧客価値を上げるには、
① 品質を上がるか? 
② 価格を下げるか?
③ 商品(ブランド)の認知を上げるか? 
④ 商品が入手可能な場所を増やすか? 

(2) ブランドの基本機能
   ①所有権表示機能  誰が何を?
     「誰が責任をもって作って製造・販売しているのか?」
    ②品質保証機能   どのような品質で?
     「買って安心、使ってうれしい、その性能がすばらしい」
    ③宣伝広告機能   どのメディアでどのように伝えるのか?
     「顧客コミュニケーション手段」

(3) 消費者へのベネフィット(ブランドが選ばれる理由)
    ①機能的ベネフィット
      燃費がよい、汚れが落ちる、おいしいなど、
物理的な属性、機能、性能 
    ②情緒的ベネフィット
      気持ちが良い、うれしい、心地よいなど、
目に見えないけれど、心理的な価値を提供
    ③自己表現ベネフィット
      自分の信条やライフスタイルをブランドで表現する

4 3つの質問: ブランド・ロイヤリティのハザマで
(1) NBの強みは?
・ 嗜好性: 味の弁別性
例:ブラインドテスト
テスト1: コークとペプシ、
テスト2: ポカリスエットとアクエリアス
・ バラエティシーク度(飽きっぽさ)には
   メーカーは、多品種で対応してきた
・ 消費者の多品種志向(多様なアイテム)
    すばやい商品の改廃
    細かにニーズに対する対応
    絶え間のない製品ラインの拡張

・ 流通のカバレッジ(歴史的な考察)
 米国のマーケティング発達史
(テドローの3段階説+グローバリゼーション)
 ①分断の時代   ~ 地方市場の分断
 ②統合の時代   ~ 全国市場の成立
  ③細分化の時代  ~ さまざまなブランドの分化
(セグメンテーション)
  ④国境が無くなるマーケティングの時代
 ~ グローバルブランド、グローバルリテイラー 
   
(2) 歴史的な考察
「ブランドは、どこで生まれたのか?」
・ 起源1 中世のヨーロッパ
 → プレミアム・ファッション・ブランド(HLMV:ルイヴィトン、グッチ)
・ 起源2 19世紀中ごろ
 → 米国中西部 五大湖周辺 P&G(アイボリー石鹸)、コーク
     マーケティングの歴史の中で、流通は、「ブランド」ではなかった?

(3)PBの生存領域は?
・ スケールエコノミー 店舗数の拡大
例: 3000億円、3万SKU → 1SKU平均1000万円 
・ 高い収益性
    NBに対して、20~30%の+粗利益
・ 生活に根ざした商品
   MJの特集でPB向きとされた商品グループは、
    第1群: 豆腐、納豆、缶詰、ミネラルウォーター、乾メン、漬物
第2群: ケチャップ、牛乳、インスタント味噌汁、
スパゲッティ、パスタソース、茶系飲料

5 NBとPBの競争
(1)小売業販売額に占めるPB比率
トレンドとサイクル
  トレンド 右肩上がり(小売りの上位集中度)
  サイクル アコーディオン(景気に左右される) 
  国別の傾向  欧州(PB比率60~80%)
> 米国(20~40%)
> 日本(5~10%)
・ ブランドの類型とプレミアム価値
  GB(グローバルブランド)
 > NB(ナショナルブランド)
 > LB(ローカルブランド)
 > PB(プライベートブランド)
 > CB(ジェネリックス)
・ 日本的PBの展開
無印良品 MUJI
イオンのトップバリュ

(2)ブランド・ロイヤリティとストア・ロイヤリティ
 ・消費者が忠誠を誓うのは、メーカーか?小売か?
 ・消費者は、いま何を求めているのか?
   商品について
   サービスについて
買い物環境(JRC)
 ショートタイムショッピング?
イージーケア
値段を見ないで安心して

(3)ストアブランドは、本当に強いのか?