解説は不要だろう。民主党は、対中・対米の外交交渉の手腕を含めて、後継首相には小沢氏を選ぶべきだった。シナリオBを選んだ時点で、政党として瓦解する道を選択したことになる。気の毒だが、民主党内はもはや、首相となるべき人材が払底してしまった。
坂道を転げるように落ちていくのは、もともと理念を共有していない烏合の集団だったからである。野党的に振舞っているうちは良かった。しかし、経済政策も国家としての長期目標もばらばらな政党に、とても未来などあるはずがない。
あとは、最終的に、国民から見放されるタイミングを待つだけになった。もはや時間の問題である。わたしが予言したとおりである。菅首相が勝利した時点で、挙党体制が取れなければ、政治団体として結束はむずかしかった。
もともと知恵がある集団なわけではない。旧自民の方法論とネットワークを最大限に利用しなければ、予算も外交も乗り越えることができなかった。
それなのにである。代表選挙の後はといえば、党内喧嘩に終始してしまった。アホじゃないかと思う。子供の喧嘩じゃあるまいし、妥協や寝技を行わなければ、とてもではないが党内が収まるわけがない。対立構図を消し去るために、そして、難局を乗り切るには、妥協と協調しかないのにである。
「政治的な未熟さ」と言ってしまえばそれまでのことだが、財界人もひどいものだ。中国に経済的な人質(現地工場や利権)をとられているので、現政権の弱腰を後押ししてしまった。これも情けない出来事だった。
この先に、わたしがもっとも恐れるのは、民主党政権がつぶれて、政治が右傾化に向うことだ。またしても、いつか来た道である。民主党のリベラルリズムが、無能の烙印を押された後では、われわれ日本国民は、信頼できる代替政党を持っていない。いまさら自民党でもあるまい。この国の政治も外交も、経済ももたないのだ。
暴走を繰り返してきた無能政権のあとに、英雄を待望する雰囲気が満ちる時が来る。軍事的にはタカ派で、どちらかといえば「国粋主義的な傾向」をもつ政治家が、そこに登場する間隙ができる。この国の平和と自由を脅かす動きが、もしかして再び、、、
人も国家も、第二次世界大戦後の日本がそうだったように、絶望の淵から這い上がれる希望を抱くことがきるときはまだしも。経済的に恵まれない一団が、リベラルな金持ち層(HAVES)に敵意を抱き始める。そのような集団が、メディアをジャックしたとき、わたしの心配が杞憂ではなくなる可能性がある。
杞憂が杞憂であることを、切に願うばかりである。中道右派が結集して、早々に保守連合を組織すべきときである。その中心に、若いリベラルな政治家が欲しい。経済政策的には、小沢一郎の主張する方向性が正しいのだ。経済が復活しなければ、すべてが絵空事である。
何度でも言おう。緩やかなインフレと若者のための所得再分配。そして、経済を立ち直らせながらの雇用創出。疲弊した地方には、新しいダムと新幹線と高速道路が必要だ。ただし、予算を透明に再配分すればよいではないか。
ダムや新幹線が悪いわけではない。官僚主導が悪いわけではない。その結果として、予算の配分の仕方が、お手盛りでまずかったのだ。何でもコンクリートのせいにすべきではない。人にカネを落としても、民主党のようなバラマキだと、誰にも何のメリットも感じられない。
手術のタイミングが遅れれば遅れるほど、この先、日本の右傾化の芽は大きくなる。是非とも、それだけは避けたいものだ。いまのように、多くの人々が希望を失いかけているときが怖いのである。