ドーム完成前の後楽園球場のお天気予測: 石橋会長(㈱ウェザーニューズ)との久しぶりの会話

気象情報会社の「㈱ウェザーニューズ」(本社:東京都港区)の石橋博良会長と、昨日5年ぶりでお話をした。わたしからの「追っかけ取材」である。10年ほど前に、石橋さんから伺った「後楽園球場の天気予測」について、かすかに記憶に残っていた。その事実を『ビッグトゥモロー』の来月号(連載:値段のカラクリ)で紹介するための確認の電話だった。


10年前に、同僚の嶋口教授(当時、KBS)からの紹介で、石橋社長(当時)とお知り合いになった。2000年ごろ、『チェーンストアエイジ』で「当世ブランド物語」を連載していたので、天気予報会社の創業時の話を石橋さんに伺うことにした。対談の内容は、ブランド物語で前編・後編にわけて、内容を記事の形で掲載されていた。
 ところが、対談中に伺って、おもしろいのでどこかで取り入れたいと思っていたが、そのままで「お蔵入りに」なっていたエピソードがあった。後楽園球場の「お天気おじさん」の話である。10年ぶりで、そのときの話を紹介する機会が、『ビッグトゥモロー』の連載で可能になった。つぎのような話であった(詳しくは、来月号の『ビッグトゥモロー』で紹介される)。
 昭和50年代、天蓋がなかったときの後楽園球場では、雨が降ると、当然のことながら野球の試合や野外コンサートは中止になる。来場者は約5万人いるので、そのために、夕方からの試合では、お弁当などを準備しなければならない。天気の読みを誤って、弁当の発注を間違えるとすべて廃棄損になってしまう。後楽園球場には、「お天気おじさん」(天気予報の名人)がいたらしい。ライト側のスタンドの一番上に登って、雲や風の様子を見ながら、夕方からの天気を予測していた。平均的には、たぶんよく当たったのだろう。しかし、人間の経験と勘による予報なので、外れることもあった。外れてしまうと、弁当を食べるひとがいなくなるので、数百万円の損害になる。

 文京区の災害情報提供のために、当時から公共機関に「オーシャンルーツ」(ウェザーニューズの前身、米国の同名子会社)から気象情報を流していた。後楽園球場は、そのことを何かのルートで知って、ある時期から、ゲリラ豪雨などの天気情報を購入するようになった。夕方からの試合開始に向けて、弁当の発注にどうするかで、石橋会長(当時は、オーシャンルーツ社長)から、気象情報を購入することにしたのである。
 「情報提供の価格は、月額30万円だったですね」(石橋会長)。一日1万円である。「リスクプレミアムが5~10倍になると、明らかにビジネスに持っていける」(石橋会長)のだろうである。つまり、ピンポイント天気情報がないときは、月平均で150~300万円の余分な弁当の廃棄損を記録していたことがわかる。もちろん、コンピュータ技術を駆使して「後楽園特別チーム」を編成したオーシャンルーツではあっても、100%の確率で雨を予測できなかっただろう。お天気予測名人がいた頃の廃棄損は、たぶん月額でその倍の300~500万円はあったのではないだろうか?
 後日談である。このサービスは、東京ドーム(ビッグエッグ)が完成する1988年まで続いた。「その後は、福岡ドーム(開閉式)で天蓋を空けるかどうかを決めるために、ウェザーニューズ(1986年~)のサポートチームが活躍した」(石橋会長)。
 現在、屋根がついていない後楽園遊園地(ラクーア)では、「ネットの天気情報(元は、ウェザーニューズや日本気象協会が提供)や契約しているケーブルTV(お天気チャンネル)から、お天気の様子を見ている」(東京ドームの岩瀬マネジャー)とのことであった。
 
<補足情報>
 同社HPから株式会社ウェザーニューズは日本に本社を置く世界最大の気象情報会社です。世界32都市15カ国/地域(日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、オランダ、イタリア、フランス、オーストラリア、中国、台湾、韓国、マレーシア、インド、ネパール、ブラジル)に展開し、600人を超えるスタッフにより24時間365日世界中の気象を毎日観測・解析・分析・予測をしています。気象は一瞬も止まることなく刻々と変化するものであり、時として人命に直接関わるほど私たちの生活に大きな影響を与えます。ウェザーニューズはこうした休むことのない気象の変化を常にとらえ、世界最高品質の気象コンテンツサービスを企業・法人向け(海運、航空、道路、鉄道、自治体、流通事業者など)および個人向け(携帯、インターネット、BS、CATV、放送局等)に展開しております。