『マーケティング入門』は、全部で700ページを超えました!

6月発売予定のテキスト『マーケティング入門』は、第7章「マーケティング・インテリジェンス」を残すのみになった。「まえがき」と「あとがき」を考えている。机のまわりに積んである校正中の16章分(第15章と第7章を除く)のゲラを見てみた。なんとなく不安になり、全体のボリュームを計算してみた。初校ゲラを累計すると、次のような頁数になってしまっていた。


第10章「価格決定の理論」を書き直してからは、ボリュームのことなど、あまり考えないで書いていたのだが、細かく計算すると・・・

 小川孔輔(2009)『マネジメントテキスト マーケティング入門』日本経済新聞社

第1部 マーケティングの考え方(100P)
 オープニング事例① ユニクロ(ジョルダーノの買収提案)
  第1章 マーケティングの仕組み(38P)
  第2章 マーケティングの発達史(29P)
  第3章 マーケティング計画の立案(33P)
第2部 顧客と競争環境の分析(165P)
 オープニング事例② トヨタ自動車(車種統合、マークXの発売)
  第4章 マクロ環境分析(34P)
  第5章 顧客の分析(35P)
  第6章 市場戦略と競争対応(41P)
  第7章 マーケティング・インテリジェンス(50P?未定)
第3部 マーケティング意思決定(260P)
 オープニング事例③ 上海錦江麒麟(午後の紅茶と生茶の移転)
  第8章  製品開発(1):開発のプロセス(60P)
  第9章  製品開発(2):新製品の普及と予測(28P)
  第10章 価格の決定(1):価格づけの理論(30P)  
  第11章 価格の決定(2):価格決定の実務(29P)
  第12章 コミュニケーション活動(1):広告宣伝活動(33P)
  第13章 コミュニケーション活動(2):セールス・プロモーション(39P)
  第14章 流通チャネル政策(1):代替的経路選択(36P)
  第15章 流通チャネル政策(2):小売業の経営とロジスティックス
     (55P:投入原稿から類推)
第4部 広がるマーケティング活動(105P)
 オープニング事例④ マクドナルド(地域別価格制の導入)
  第16章 ブランド論(41P)
  第17章 サービス・マーケティング(30P)
  第18章 マーケティングの社会的役割(34P)

 以上、合わせて、645ページになる。しかし、「まえがき」と「あとがき」(5P)、索引(30P)はこれに含まれていない。これで、680ページである。それに、上記には、ふたつのケース(マクドナルドとトヨタの章末事例が含まれていない)。これが20P分、さらに、各章には二編ずつコラムが挿入されるが、10章分はまだコラムが挿入されていない。プラス10P。つまりは、いまのままで進行すると、この本は、全部で710頁になる。
 売価も、当初の600ページで3200~3400円の設定から、3800円くらいになるかもしれない。気がついてみたら、厚さが通常の本ならば、3冊分になっていた。上・中・下でもおかしくはない。
 日本経済新聞出版局編集長の堀口さんは、2月に500頁を越えてしまうことが明らかな段階で、「もう、覚悟はできてますから・・・」と。お手上げのようだ。これで、売れたら勲章ものだろう。いや、売れるはずである。コトラーの「原理本」は800ページである。値段が8000円を超えているのだから、わたしの本に価格競争力はある。
  *   *   *
 以下は、「あとがき」に書くつもりの原稿である。
 この本のキャッチコピーは、「日本人の、日本人による、日本人のための、マーケティングテキスト・ブック」。執筆動機は、健全なる民族主義にある。時代に逆行しているように見えるが、消費行為や商品・サービスは、グローバライズが完全にはできない代物である。欧米から日本へのブランド移転と、東アジアへのマーケティング技術の移転研究をしてきたから、そのことを断言してよい。
 民族のビジネス史と消費財を創造してきた企業家の歴史は、民族の代表者の語り部が書くべきである。その語り部とは、テキストライターのわたしのことである。アメリカ人には、日本人の消費感性はわからない。そうなのだ。商品やサービスは、基本的にドメスチックなものである。
 「いつまでも、コトラー、アーカーは恥ずかしくないですかね。日本人の学者さんたち!満足しているのだろうか?日本のマーケターの皆さん!」
 これが、読者に伝えたいわたしからのメッセージである。いま、食品の世界でも国産が見直されているように、日本には日本の経営やマーケティングが存在している。日本企業には、実績に見合ったプライドが必要である。
 よくわからない欧米ブランドや店舗名やテレビ番組の名前を、テキスト中の事例として読んでも、その商売(マーケティング)の記述にリアリティはないだろう。マーケティングはエキサイティングでなければならない。五感のどこかを刺激して、感覚的に興奮させない内容は、マーケティングとして正統派とはいえない。
 うすうすそのことを知っていながら、だれもこれまで、「労多くして評価が小さいテキスト書き」にはチャレンジしてこなかった。
 堀口編集長は、わたしの意図を見抜いて、700頁をくれたのである。ディテールなしには、マーケティングに真実味はない。「神は細部に宿る」のである。この本の出版を知ったら、大方のマーケティング研究者はショックを受けるはずである。前人未踏の全18章、710頁、参考文献1000冊、そして、最小限に抑えてある英文論文。
 日本人のマーケティング史は、実務家たちからこそ喜ばれるはずである。わたしたちの先輩学者が手を抜いてきたのだから。日本企業は、いい加減、アメリカ追従に辟易している。日本企業の独自性に、もっと日本人の学者がスポットライトをあてるべきであろう。
 本に登場する企業は、きわめてドメスティックである。基本的に、日本企業と日本製品と日本の流通サービス業が主役である。欧米企業とその製品は、日本への進出企業に限られている。言い換えれば、マーケティング入門と題しながら、実は、戦後日本の「マーケティング実践史」を書いたことになるのかもしれない。
 文章は、執筆中の「小川町物語」みたいに平易である。完成まであと5日、出版まであと50日。しばしお待ちください。