2009東京マラソン前夜

こんなに準備の良いマラソン参加は、記憶にある中では、はじめてのようだ。はじめて走ったフルマラソンのホノルルも、寒さで凍えそうになったニューヨークシティも、昨年春に走ったばかりのパリマラソンも、日本からの出発間際まで、いったい集合場所がどこで、スタートはどこからなのか、調べようとする気配さえなかった。自分のことがである。


それからみれば、2009年の東京マラソン参加は、いったいどうしたことなのだろうか? 2日前の20日には、すでに東京ビッグサイトでエントリーを済ませてしまっている。ふだんなら、今日(21日)も締めきりに間に合わずにまだ仕事をしていて、エントリーも、夕方のぎりぎりになったに違いない。
 差し迫った原稿もあるのだが、のんびりとクリーニング屋に出かけていた。冬物のセーターやら、着古して来年はどうしようかと思っているスーツなどを洗濯に出した。受付のおばさんとは、このごろ、すっかり顔なじみになってしまった。
 妻の名前のスタンプ帳を差し出して、セールで値引きしてもらうのと、割引券を使うのではどちらがお徳なのかをたずねてみる。変わらないのを知ってのことである。いつもの癖で、わざと聞いてしまう。
 「どっちも変わらないですよ」と予想通りの答えが返ってくる。自宅からせっかく携帯していった割引券は役に立たない。500円券は使用されないまま、またしても持ち帰ることになる。暗黙の了解なので、ふたり顔を見合わせて笑う。
 駅前のマツモトキヨシの駐車場に車を止める。何日前からか予備がなくなってしまったJ&Jのベビーローションやら、バンテリンやらを買い込む。コンタクトの洗浄液もかごに入れる。商品を補充しているお姉さんに、「ワンステップのパッケージが見つからないんだけど」とたずねると、わたしを気持ちよく棚まで導いてくれた。
 レジのお兄ちゃんは、2009年3月で切れてしまうポイント800点の存在を教えてくれなかった。現金を受け取ってから、そのままキーを押す手で、「お客さん、あと一週間で切れてしまうのポイントが、800点分ありますよ」
 レシートに記入してある数字をみて、わたしに示してくれた。
 「知らなかったよ。そんなら、現金を払う前に言いなよ。お兄ちぇん」と文句を言ってみた。不機嫌そうな顔になった。バンテリンを返品して、ポイントを使っても良かったのだが、もう一本追加で予備にバンテリンを購入した。もちろん、ぽんと交換だから、その場で無料である。
 原稿を書くのを途中でやめて、そんなふうにしていたら、夕方になった。昨日も今日も、一歩も走っていない。体力温存である。完全休養は、明日の朝9時には解ける。9時10分、東京都庁前、先頭のAブロックからスタートになる。実力ではない。スポンサー枠のおかげである。
 二回目の東京マラソン参加である。前回は、21歳で走った。今回は、57歳で走る。目標タイムは、3時間57分。永遠のライバル、歌手の郷ひろみが、NYシティマラソンで記録した3時間45分は、敢えて今回は狙わない。次のお楽しみに、大切にとっておくことにしている。
 第1回目のときのゴールは、お台場だった。今回は、東京ビッグサイトである。無事に、市ヶ谷から水道橋を経て、日比谷公園まで。いったん品川を折り返して、銀座から浅草へ回り込む。20K地点から30Kへ。浅草雷門で二度目の折り返しから戻って、ふたたび銀座へ出る。歌舞伎前を通って晴海通りへ抜ける。豊洲から東京国際展示場前の野ビッグサイトまで。ゴールしたら、気持ちがいいだろうな。(笑い)
 シミュレーションしながら、今夜は「おやすみなさい」。