本日(9月23日)は、朝の3時半に覚めてしまった。うとうとしているのも時間がもったいないので、ネットに接続してメールなどを返信している。10月末のIFEX2008(国際フラワー展示会@幕張メッセ)でセミナーの講師をお願いしているフローラホランド花市場のユルン君から、幕張で開催前日に会いたいとのメールがあった。中南米の国、エクアドルの首都キトーからの返信には、彼もびっくりするだろう。
以下は、ガイドさんの話や街で見かけた光景から得たエクアドル(首都キトー)の情報である。日本には、ほとんど紹介されていない話である。
バスに乗って外の景色を見ていると、南米の町がみなそうであるように、エクアドルでも道路は山の尾根伝いを走っている。日本では、だいたいが谷筋に道路を走らせものである。キトー市は、12個の火山に囲まれた盆地に展開された丘の多い町である。南北に長い町で(南北40キロ、東西4キロ)、人口は約200万人。
3つのブロックに分かれている。南に行くにしたがって、スペイン統治時代からの伝統的なコロニアルスタイルの建物が多くなる。わたしたちが滞在している新市街は、現代的な建築のホテルに囲まれているブロックである。
エクアドル全体の人口は約1200万人である。20%弱が首都に集中して住んでいることになる。道路の渋滞もかなり激しい。土日には、旧市街には一般の乗用車は入れないらしい。ひとびとはトロリーバスで動くしかない。トウモロコシとポテトを主食としていて、ビールやワインなど食べ物はおいしい。
昨日は、スウェーデン人が経営している農場「ネバダローズ」を訪問した。北欧人が所有している農場はめずらしいらしい。主都キトーからは、南方面に120キロほどの小さな町(サントルシア)にあるバラの農場である。2002年に、若手経営者のジョン・ネバドさん(35歳)の父親(野菜の卸売業)が、約10億円を投じて建設した農場である。いまは、約600人のワーカーが働いている。託児所や食堂が完備している。フェアトレードの認証を持っているだけに、労働環境などもすばらしい。
標高4800メートル級の活火山を見ながら、アンデス山脈の背骨の部分を、パンアメリカン・ハイウエイを、エクアドルの地図の北から南に走ったことになる。ちなみに、本日(9月23日)は、北の方面に40キロほど行くことになっている。2つの農場を訪問する。花束加工場とバラやカスミ草の育種農場として有名なエスメラル農場である。
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ガイドさんの話で一番びっくりしたのは、この国の経済基盤が、農業収入や観光資源ではなく、石油と海外送金から成り立っていることを知ったことであった。一番がアマゾンの石油採掘からの収入である。言われてみれば、これについてはそうかなと納得する。しかし、二番目に国の経済を支えている重要な資金源が、海外からの送金であった。主都の人口とほぼ同じ数のエクアドル人200万人が、海外に出稼ぎに出ているのである。最低でも一人年間20万円(月間の国内最低賃金が200ドル)は送金しているのだろうから、少なく見積もって4000億円を海外からの送金で稼いでいることになる。
国民所得の3番目が、農業収入である。西の海岸部で栽培されるバナナや各種の野菜、アンデス中央高原の花の栽培から得ている収入である。以前は麻薬の原料になるコカの栽培が盛んだったが、いまは公式的には栽培されていないことになっている。コロンビアやチリからコカの葉を輸入している。コカ茶は、寒い国なので、体が温まってなかなかおいしい。
バラの輸出額(粗収入)を計算してみたが、それほどの額にはならない。たとえば、エクアドル全体では、400社が総栽培面積で5000ヘクタールの農場を経営している。そのうちの3500ヘクタールがバラ農場である。
ネバド農場のように、40ヘクタールで推定16億円を売り上げているのは例外で、通常はその半分の生産性であろう。2メートルを超す背高で大輪のバラを育種しているからである。国全体では、花の生産(輸出)額は600億円と推定されている。
世界中の30カ国に、バラを中心に切り花を輸出している。花は即座の現金収入が得られること、そして、米国などが麻薬撲滅対策で輸入関税(tariff)を免除してきたことが強みであった。米国経済がバブルぎみだった2000年代前半は、バラ農場が投資対象になっていたらしい。
いまは、サブプライム問題もあって、輸出と生産がやや頭打ちの状態にある。農場の拡張期は終わっている。ネバダ農場でも、労賃が上昇したこと(大統領布告で最低賃金が2度上昇)、福利厚生を手厚くしていることもあって、販売額に占める労働賃金(福利厚生含む)の割合がほぼ半分になっている。以下は、通訳の海下さんがジョンさんの父親から得た情報である。
10年前のバラのコスト構造は、バラ一本あたり原価10セントに対して、販売額は40セントであった。30セントの粗利があった。ところが、現在は、一本あたりの生産コストが35セントに上昇。そのほとんどがチンゲン上昇分である。一本の卸単価は45~50セントである。10~15銭としか利益が出なくなった。
余談ではあるが、エクアドルでは初等教育に父母が負担する費用がゼロである。しかも、教科書と朝昼の2食を政府が無償で支給する。いつか、中南米ではこの国の子供たちの学力が上位にくるかもしれない。