晩夏の贈り物: 熟したブドウと旬のこと

金沢に住んでいる友人の北本さんから、熟成したブドウを送っていただいた。デスタン株式会社社長の北本さんは、仏様に供える「榊」とお菓子に使う「葉っぱ」(さくら、かしわ)を中国から輸入している。葉っぱビジネスでは国内最大シェア。日経ビジネスにも登場したことがある「フランス系日本人」である。


年末には、「三笑楽」という地酒を、夏の終わりには、自家製のブドウを贈ってくださる。わたしは、季節が来てそれらを食するのを楽しみに生きている。やや大げさだが、北本さんの面白いところは、すこしだけだが「贈る季節」を外すことである。外しているのではなく、ずれるのである。
 その理由は、果物やお米が旬のぎりぎりを狙うからである。贈呈してくれるのは、日持ちのしない完熟した商品である。旬とはもともと、そのようなものである。収穫の季節を前倒しにしてきた結果が、旬が来る前に、われわれは無理やりに完熟していない緑の野菜や果物を食べさせられる。だから、いまの野菜や果物はおいしくない。デスタンさんの葡萄は、旬のぎりぎりに到着する。はじめから、「先生、日持ちはしないからね」と言われているので、覚悟して食べる。でも、だから甘い。

 毎年の暮れにいただく三笑楽は、一升瓶が二本。濁り酒と清酒のペアセットで、宅配便にて送られて来る。その年にわずか、ひと樽しか作らない生酒を樽ごとわけてもらって、友人たちに配るのだという。特別な酒ではあるが、これも日持ちはしない。とくに、濁り酒は正月中に飲みきってしまわないと、生きているから発酵して酸っぱくなる。
 昨年からいただいているブドウも、弟さんが栽培しているぶどう園で、自らが摘み取ったものらしい。昨年に続いて、4種類のブドウが白い箱に詰まっていた。
 「デスタンさんからですよぉ」。お礼を電話ですると、わがやのいたちが甘いものが好きなのをご存知のようで。
 「そちらの動物(いたちの花丸)にも、食べさせたら良いですよ。じゅうぶんに甘いですから」

 猛暑も少し和らぎ、朝夕の気温差も出てきておいしい葡萄を収穫するシーズンが来ました。ところが今年はゲリラ雨でたくさんの雨が降り、実が割れるなど葡萄にも少なからず影響が出ました。 (中略) 昨年どおり、藤稔(黒の大粒)、マスカットベリー(黒の中粒)、ロザリオビヤンコ(グリーン)、安芸クイーン(赤)を収穫しました。お届けする方のことを思い浮かべながらひと房、ひと房摘んでいくのは楽しいものです。それでは、4種類の葡萄の違いを味わってください。
 2008年9月4日 日ごろの感謝を込めて・北本