第一回「花産業と小売店の経営」(2008年7月1日)の当日レジュメである。授業は、7月1日、13時~ 場所は、アルカディア市ヶ谷である。授業終了後(16時~)に、川越の青山マフラーマーケットとヤオコー南古谷店をフィールドワークする。宿題も参照のこと。
1 日本の花産業の特徴
・生産・消費規模では世界第二位(1.2兆円)
米国に続いて、世界シェアで9%もある
・全体の消費金額も小さくはないが、
誰もが儲からない産業になってしまっている
・30年前、スーパーマーケットや専門店チェーンはどうだったのか?
社会的に低い地位、長時間労働、低賃金、そして・・・30年後の今は
<5つの壁>を克服するためには・・・どうしたらいいのか?
<特質> <対応策>
(1)経営規模が小さいこと → 生産者は、協業によりロットを大きくできる
ただし、品質を揃える努力をすること
小売店は、チェーン化することで克服
(2)商品が安定供給できない → 定番品(大産地、輸入品)との組み合わせ
(四季があるため) 逆に、季節性を活用することを考えるべき
(3)最終粗利が小さい → 回転率を高める経営にもっていき、
ロス率を低くする方法を工夫する
(4)事業経営がなされていない → 花を特別な芸術品として扱わないこと
システム的に物事を考えるようにする
(5)生活の中に花が浸透しない → ライフスタイル提案が鍵になる
花を扱う基本の欠如、消費者教育に注力すべき
しかしながら・・・個々の小売店でも努力できることはあるのでは?
一つの結論 = マーケティングの基本を徹底的に実行すること
2 小売店経営にとって大切なこと
(1)顧客対応 = マーケティング → 顧客満足と再来店
(2)組織対応 = オペレーション → 店舗作業と本部業務、効果と効率
(3)人材確保 = 教育研修とスキルアップ → OFFJTへの教育投資
(4)データ分析 = 客観的な情報に基づく経営 → 他店比較、ベンチマーキング
(5)資金調達 = 無理のない成長、経営の安定性
3 消費者にとって、どのような(花)小売店が理想なのか?
(1)「安心ショッピング」の3条件(JRC・渥美俊一氏)
①客が店で値札を見ないで買えること
②品質や機能を吟味しない(しなくてよい)
③商品をテイスト(好み)だけで選んでいる
(2)「楽しい買い物が実現できる」 その根拠は・・・
①<わかりやすい> 値ごろ価格が明らかであること
→ プライスポイント(主たる販売価格帯)が顧客にわかるので、
価格に関する余計な説明は不要だから
具体例: 「デフレ勝者6社のプライスポイント」
とくに、ユニクロと無印良品の価格分布(「チェーンストアエイジ誌」実例)
②<信頼できる> 店舗(ブランド)と販売員(接客技術)の信頼性
基本的に、小売は「リピートビジネス」である。
顧客が再来店することを前提に、ビジネスが組み立てられている。
事例:JCSI(日本版顧客満足度調査から)
百貨店・GMS・フィットネスクラブで
CS(顧客満足度)に貢献する要因は何か?
③<いつも新しい発見や驚きがある> ライフスタイルの提案がある
TPOS(Time, Place, Occasion, Life Style)別の商品提案
小売店が、地域の生活の豊かさを実現することに貢献していること
→ ただし、ブランド(業態)が提供する場面には絞り込みが必要
人間は、多くのことを覚えられない
(3)セルフサービスかフルサービスか? その役割の違いは?
<課題1> 「ヤオコー」(南古谷店、若葉ウォーク店)の花売場を見て欲しい
①量販店の花売場は、セルフで運営されるべきなのか?
②「インショップ」で運営されるとしたら、その販売形態はどのようなものか?
③売上、来店客数、売場面積、品揃え、顧客特性などのデータを見て、
「3 サービス業の顧客接点」をデザインせよ
④参考にすべき他の売場はどこか?
どのような着眼点を利用して、結論に至ったのか?
各自が観察記録とデータを見て、結論について解説せよ!
3 サービス業としての小売業(顧客接点のデザイン)
(1)店舗の基本コンセプト
・誰に、何を、どのように → 提供する価値は?
・USP(他の店にない差別化のポイントは?)
・(専門店であれば)立地の選択
・サイトの選択(SM、SC内であれば、店内の位置)
(2)店舗デザイン
・店舗(売場)のデザイン
・売場レイアウト
・商品の陳列方法(什器、バケツ、黒板)
(3)MD(商品関連の決定事項)
・基本的な品揃え
・プライスポイントと陳列量
・商品の補充方法(頻度)
・ロス管理(値入れ、マークダウン、廃棄ロス)
(4)店頭コミュニケーション
・POP、黒板の活用
・チラシ、リーフレット
・接客の仕方
・インターネットの活用
(5)その他サービス
・清潔感の演出
・店員の教育
・ギフト対応
・デリバリー
→ JFMA編集(2005)『クイックハンドブック』草土出版
4 小売店経営の効率(2007年:S=しまむら、F=ユニクロ)
(1)一店舗でどのくらい売ればよいのか?
・店前(売場前)通行量、立寄率、注目率
・一品単価、買上点数
・客数、客単価(平日、土日別)
・平均店舗売上高 (S=3.0億円、F=7.6 億円)
(2)目標粗利益率
・値入率 (2006年 S =35.4%)
・値下率 (2006年 S = 5.0%)
・ロス率 (2006年 S =0.58%) → (2006年粗利益率 S =29.5%)
・粗利益率 (S=30.6%, F=49.5%)
(3)最終利益
・売上高純利益率 (2006年 S =4.6%) 小売業は3%あれば立派か?
・利潤分配率 (S=31.0%, F=34.0%)
・賃金分配率 (S=26.1%, F=20.9%)
・家賃、販売経費率
(4)生産性指標
・坪効率 (S=97万円/坪・年、F=302万円/坪・年)
・労働生産性 (S=1183万円/人・年、F=1467万円/人・年)