皆さんはどのようなタイプの手帳をお使いだろうか?3日前、「青山フラワーマーケット」の井上英明社長と会食した。そのときに、それぞれが愛用している手帳の話になった。
わたしが万年筆で手帳に新しいスケジュールを書き入れているのを、井上さんは”好奇の目”でながめていた。下手な字でごちゃごちゃ書いているだけでなく、わたしの手帳には小さな円いシールがたくさん貼られている。とてもカラフルなことが、彼の目を引いた一番の理由らしい。ご自分のは、ペン入力の電子手帳である。
「経営アカデミー」の講師を務めてきたので、わたしは20年来、社会経済生産性本部(旧・日本生産性本部)が創案・発行している「生産性手帳」を愛用している。これがなかなかの優れもので、一ヶ月分が見開きになっている薄手の手帳である。経営学部の同僚では、わたし以外に2人の先生がこの手帳を使っていることを確認している。今橋隆教授(交通経済論)と藤村博之教授(人的資源管理論)のふたりである。
毎年暮れになると必ず届くので最初は使い始めたわけだが、一度使い始めるとこの手帳はどういうわけか手離せなくなる。使い続けている第一の理由は、薄手でポケットに抵抗無くすっぽりと収まるからである。それ以上に、一ヶ月が見開きになっているというレイアウト上の機能特性が、決定的な愛顧の要因かもしれない。電車の中などで手のひらにのせて見開きで眺めていると、2~3ヶ先をクリアに見通すこことができる。長期の計画が立てやすいのである。
わたしの場合、たぶん普通の人とは手帳の使い方が違っている。矢作敏行教授(流通論)が採用しているアイデアを借用して、市販の円型カラー・シールを併用しているからである。矢作先生の方式は、最初は”秘密っぽく”て怪しげだと感じたが、やってみると利点が多いことに気がついた。
日常のルーティン業務については、事柄を細かく書き込まずにシールの色で仕事内容がわかるようにしている。たとえば、「黄色」の円型シール(直径約8㍉)は、学部の授業(マーケティング論、演習)を、「青色」のシールは学会や大学院などの研究会を表している。ほぼ毎週の繰り返し行事なので、いちいちの仕事の内容を手帳には記述しない。もともと書き込むスペースが少ないので、空間を節約するという意味がある。書き込みがすくないと、手帳そのものが汚れない。ついでに言えば、「緑色」は外の仕事(コンサル、講演、取材など)、「オレンジ」は学内の仕事・会議(教授会、学部長会議)、「赤色」は花関係の仕事(JFMA関連)、「ピンク」はマラソンの大会エントリーを表している。
色で仕事を区別しているので、いま自分がどのタイプの仕事に時間を多く配分しているのかが一目瞭然である。それを月単位で見ることができるのが、この方式の最大の利点である。一週間が見開きの手帳を使うという手もあるが・・・実際に使ったこともあるが、中長期の計画立案には別の欄を使わなければならない。それでは二重の手間がかかる。一時期、ランニング手帳で週間見開き方式を採用したことがあるが、途中で挫折してしまった経験がある。理由は同じである。マラソン大会のエントリーように、ターゲットとした大会の3、4ヶ月から調整をはじめる場合、一週間単位では中長期の見通しを立てることがほとんど無意味である。自分の体のコントロールには、月単位の計画が必要である。
井上社長にわたしが勧めたのは、まず「アナログ手帳」に戻ることである。そのうえで、月単位の「見開き型」の手帳を選ぶことである。デジタル手帳を推奨しないのは、現状では表示画面が小さすぎることにある。スケジュールの表示が階層構造になっているので、どんなに機能性に優れたマシーンを選んでも、手のひらサイズである限りは、長期で物事を考えることには本質的に不向きである。
というわけで、「経営者は電子手帳を使うべきではない」とわたしは思っている。シャープさん(ザウルス派)には申し訳ないが、それが本日の結論である。もし異論があるようであれば、ご意見をお寄せください。もしかすると、改良型のシール付き電子手帳が存在しているのかもしれないので。