大学院客員教授訪問記(2):アイリスオーヤマ・大山健太郎社長

 一昨日、仙台のアイリスオーヤマを訪問した。大山健太郎社長に会うためである。大山さんには専門職大学院の客員教授をお願いしているので、その挨拶を兼ねて夕食会を設定していただいた。社長室長の岡本さん(青梅マラソン仲間)と3人であった。岡本さんとは、来月は大連までご一緒する約束を取り付けた。


大山さんには、これまでも夜間の社会人大学院でたいへんにお世話になった。今回もこちらから客員を頼んだので、東京から仙台まで出向くことにした。2時間で宮城にはたどり着ける。仙台に立ち寄るのが礼儀というものであろう。
 アイリスオーヤマは大連に従業員5千人の中国工場を持っている。7年前に進出して、当初は日本から「償却済みの」金型を持ち込んで、プラスティック成型品を作っていた。しかし、現在は、家具・什器など木工品や金属製ラックなどの組み立て品が生産の中心である。
 日本でも、アイリスオーヤマは、東北電力、七十七銀などと並ぶ地元仙台の人気企業である。中国でも事情はほぼ同じで、優秀な地方の学生をたくさん雇用している。今年は有名大学の学卒を数百人規模を採用することになったと自慢げである。中国事業は順調に見える。
 なお、本当のことを言えば、1994年に大山社長にはじめて会ったとき、当初はアイリスは海外には出ないはずであった。それが2年後にはあっさりと翻意し、米国、中国(大連)に進出することになった。経営者の言うことはあまり当てにならない。自信ありげに講演では話しているが、大山さんも朝令暮改の例外ではない。
 さて、中国市場の話になると、大山さんとわたしの考えはほぼ一致している。2時間半ほど話し込んで、一致した点を以下に個条書きにしておくことにする。

(1)ダイレクトチャネルの形成条件
 中国は戦後共産主義政権の成立で、全国流通を担う中間流業者が育たなかった(もしかして戦前はあったかもしれないが、少なくとも50年は消えたままである)。そこに、海外から小売業者が入ってくると、直販型の小売業(メーカー・リテイラー)が成功する可能性が高くなる。自社でダイレクトチャネルを作らないと、販路が拓けないからでもある。

(2)日本型流通チャネルへの相乗りするか、さもなくば・・・
 日本から進出するメーカーや問屋で、自社製品を真剣に売ろうと考えるならば、日本的なチャネルに乗るか、自らが直販チャネルを構築するしかない。コンビニ=ローソンに乗ったのが「キリンビバレッジ」であり、百貨店=伊勢丹に乗っているのが資生堂である。そうでないとすれば、SPAが有利になる。理屈は、前述のように中間流通が存在しないからである。

(3)日本のメーカー自らがSPAナチェーン展開すべし
 日本製品に対する中国人消費者の受容性はきわめて高い。となれば、日本から持ち込む製品は、排他的なチャネルを構築して売る方がよい。日本では問屋の壁に阻まれて、あるいは、小売業とのコンフリクトで小売り直販ができなかったという制度的な制約は中国にはない。したがって、メーカーや問屋で、小売りチェーンを展開する千載一遇のチャンスである。市場が大きいから大きく稼ぐことができる。日本国内でちまちまやるより、やはり中国である。
 タオルの内野が生産段階で成功すれば、そのまま小売りに食い込めるし、アイリスオーヤマは、国内ではホームセンターに遠慮して自店を展開できないが、中国ならば誰にも文句は言われない。資本力と商品があるので、誰にも言わせないことができる。
 
(4)日本からの製品輸出の可能性
 中国人はメードイン日本の製品を好むかもしれない。アッパーエンドの商品に関しては、もしかすると、金持ち層は高い日本ブランドを購入することになる。コスト高ではあっても、高い品質とブランドがあれば、日本から高級品を輸出することができるし、年に限定されるが、輸出市場が生まれことも考えられる。

 そんなわけで、わたしは大山さんの次の手が読めている。書かないで欲しいらしいので、今回はオフレコのママにしておく。お気づきだろうか?皆さんは。トヨタも松下も、中国では日本のチャネルとまったくちがった展開を始めるはずである。