大学院のプロジェクト発表会:17年間の総括(2005年~2022年)

 連休の2日間に渡って、大学院のプロジェクト報告会(卒論判定会)が、2つの教室(zoom会議室)で行われた。いまオンラインでの発表会は終わりかけている。わたしにとって、今回が教員として評価会参加が最後になる。いまわたしが所属しているAチームが、Bチームより30分ほど早く終わったので、17年間を総括しておきたい。

 

1 創業時から基本理念の変化

 2005年のIM研究科の創設時は、<B型:ビジネスプラン型>のみでプロジェクトをスタートさせた。B型は、何らかの形で新しい事業を起こすことが必須である。そのため、事業計画書を作成することが必要だった。大学院創業の3年目からは、わたしが発案した「MBA特別コース」(診断士プログラム)が始まったこともあり、<B型>だけのプロジェクトでは不便を感じる学生が増えてきた。

 そのため、ここ10年ほど前からは、<T型:特定ビジネス課題解決型>というカテゴリーを<B型>に付加することなった。しばらくがB型とT型が半々だったが、今年度に関しては、「T型7:B型3」の比率になった。T型とB型の 割合が逆転するようになり、このところは、2年制の夜間大学院(経営学研究科)と同じような論文スタイルのプロジェクトが増えてきている。

 創業者としての気持ちを正直に述べると、新事業を起こす<B型>のプロジェクトに取り組む学生が減っていることは、少しばかり残念である。これは、入学してくる学生とカリキュラム内容を反映したものである。良い悪いは別にして、時代の流れではある。

 

2 プロジェクトの実現確率

 研究科を創設した狙いは、<B型>に取り組んだ学生の中から起業を通して社会を変える人材を養成することだった。実際にプロジェクトのアイデアをもって起業した学生は、ごく少数である。2005年から17年間で指導したゼミ生約60人(グループ指導では約120名)の中で、実際に起業した学生は2人である。

 もちろん独立診断士として活躍している卒業生は、決して少ないわけではない。また、卒業後に自社の経営トップとして大いに活躍してる学生の成功確率はかなり高いと言える。ただし、新規事業への開発に取り組んだ事業の先行きは不明である事例もある。このケースがいまは大きいように思う。

 

3 総括

 今年度で7割を占めていた<T型>のプロジェクトでも、実際には起業につながりそうなプロジェクトをたくさん見かけた。わたしが評価を担当した学生では、「社会的な課題」に取り組む学生が多かった。特徴的だったのは、彼らは、自治体(県・市)を休職したり、地方銀行から派遣された院生であった。

 この傾向が見られるようになったのは、ここ数年のことである。おそらくは、本研究科に入学してくる学生は、将来の社会問題を先取りすることにセンシティブなのだろう。このことは、企業社会の変遷を反映しているとも思える。本研究科の未来の姿を暗示しているように見える。