日経新聞11月5日の朝刊に、生花販売チェーン「花プレンティ」(大阪市:川端秀一社長)の自己破産記事(負債総額推定34億円)が掲載されていた。当日、わたしどもの専門職大学院では、学生による「プロジェクトリサーチ」(事業企画案)の中間発表会があった。
会場のボアソナードタワー26F会議室には、ビジネススクールの客員教授として協力いただいている、柳井正会長(ファーストリテイリング)と坂本孝社長(ブックオフ・コーポレーション)が隣り合わせで座っていた。
柳井会長には、野菜事業(FRフーズ)に参入する以前から、「チャンスがあれば食品ではなく、花事業を始めてください」とお願いしていた。そんなこともあって、朝10時の発表会スタート前に、わたしが席に挨拶に伺うと、さっそく「花プレンティ、倒産しましたね・・・」が柳井さんの”おはよう”の言葉だった。
ご本人も苦笑いをしていた(ような)気がする。というのは、今春に野菜事業(SKIP)から撤退するにあたって、ファーストリテイリングとしては特別損失28億円を計上していたからである。「野菜の後は、是非とも花事業に・・」と懲りずに書いたわたしのEメールには、「しばらくは、本業に専念するつもりです」とあった。その後は、海外事業(中国、韓国、ブランド買収)と本業回帰に方向転換している。
ふたりの会話を隣で聞いていたブックオフの坂本社長は、いかにも坂本さんらしく、わたしの顔を見てニコッとつぶやいた。「小川先生、これで怖くなって他社が入ってこないですよ。花事業はおもしろいかもしれませんね」。こういう考えをするひとは少ないだろう。参入のハードルが高いことを知りつつ、坂本社長はそこに機会を見ている。
坂本さんは若いころ、出身地の山梨でオーデオ店経営に失敗している。負債総額は忘れたが、夜逃げ寸前まで追いつめられたことがあった。実際に夜逃げをしたのかもしれない。その方がそのように反応したので、花業界はやはり可能性があるのだと思ったわけである。
皆さんは、同業他社の倒産をどのように受け止めるだろうか? 坂本流か柳井流か? もっとも、わたしはいずれ、ユニクロもブックオフもどちらも花業界に進出してきてくれるものと確信している。