先週、本HP「リサーチ&レポート欄」に掲載した学生の感想文に対して、『ベーシックアパレル』の著者、桜井多恵子さんからお返事をいただきました。ありがたいことです。ありがとうございます。ご本人の許諾を得ましたので、本HPにそのまま全文を掲載させていただきます。
小川孔輔先生
学生の方々の感想文の御送付、ありがとうございました。
1.福島さんがお書きになっていたとおり、男性用が女性用より値段が高いという事実は1980年代のアメリカで問題にな っていました。製品化において生地の用尺が多く必要ということが、その理由になっていました。そこで婦人用の専門店チェーンの”Express”が”Express Man”を始めるときに、「男性用は女性用より値段が高いという常識があるから、製品化が楽だった」と打ち明けていました。しかし、今日では各社ともに低価格を追及してきた結果、格差が縮小しています。
2.値段の高いものを着ていると立派に見えるかというと、そうではありません。福島さんも歳をとるに従ってだんだんわかります。①服装全体のトータルコーディネート、②サイズがぴったりあっていること、もちろんゆとりも適切にあること、③服装と動作が連動していること、つまり着こなしていることだと思います。それは1点豪華主義ではなく、全体の調和でその人が立派に見えることです。
3.小林さんのような普通の女の子が楽しく買物ができないのは値段が高いことと、作る側売る側がトータルコーディネートを考えてくれていないからです。欧米の若い女性はその点幸せです。だからルイビタンやシャネルなど、高級ブランドは欲しがりません。ユニクロも先の2つの条件で欧米のチェーンに遅れをとっています。
4.しかし9月にオープンしたスエーデンのホットファッションのチェーン、H&Mには失望しました。売価が欧米と比べて2~9割高です。日本人は値段が高くても買うと考えているなら許せません。
5.水野さんが書いているように「日本人は欧米人とは違う」ことは確かにあるでしょう。しかし共通の点のほうが多いはずです。美しいものはどの国の人が見ても美しいし、安いものが好きなことも共通です。チェーンストアはまず共通点を標準化することが絶対原則です。30数年前にマクドナルドの日本進出の指導を我が社が手がけたとき、日本人がハンバーガーを食べるだろうか、とうい疑問を多くの関係者が投げかけました。しかしおいしいものは誰が食べてもおいしいのです。日本人はその例外ではありませんでした。
部外者の意見は特に参考になります。われわれの指導不足で若い皆さんが楽しい買物体験をできない状況にあることを、申し訳なく思っています。
ありがとうございました。
2008年10月22日 桜井多恵子