12月7日の設問に対する解答である。 日本の吉野家は、これまでは牛丼単品経営であった。牛丼だけを受注して素早く提供するには、サービスカウンターとテーブルが一体になっている「馬蹄形」が望ましい。人時生産性が高く、作業動線がもっとスムーズになるからである。
1979年に出店した米国1、2号店(コロラド州デンバー)では、日本と同じ形のカウンターで、かつ牛丼(ビーフボウル)の単品経営であった。カウンター席数も日本の約5~6倍であった。ところが、結果はさんざんであった。自動車社会でテイクアウトの比率(約50%)が高い米国で、単品メニューでは充分な売上を上げることができなかった。
その後はしばし低迷が続いたが、米国では80年代に入るとダイエットブームが訪れた。ホワイトミート(鶏肉)に対する需要が生まれ、相対的にはヘルシーなビーフボウル(レッドミート)へのニーズだけでなく、チキンボウル(鶏丼)、ミックスプレートなど複数メニューを提供することで客数が増えてきた。複数メニューをこなすには、目の前で盛りつけをする日本式の馬蹄形カウンターでは、作業動線が悪くなる。キッチンを後方に置かざるを得なり、テーブルとサービスカウンターは自然と分離することになった。マクドナルド、ケンタッキー方式である。
もちろん、女性客が多い米国では、男性客がもくもくとカウンターで食べる姿もあまり美しいものではなかったかもしれない。現在、西海岸の吉野家(吉野家ウエスト)は80店舗まで店が増えている。ニューヨークにも別会社で3店がある。なかなかの人気である。
中国に吉野家を持って行ったのは、日本人ではない。1991年に、香港で吉野家を展開していた現地企業が、サブ・フランチャイズを展開するので、北京に出店したのがはじまりである。香港のFCは、容易に想像できるように、米国と日本のオペレーションを比較して、米国型を選んだ。なぜならば、アジアでは、牛丼と鶏丼に加えて、豚丼も人気を博したからである。わたしも経験したが、中国語圏内ではミックスプレートがもっともポピュラーな食べ方になっている。これで答えはおわかりいただけたと思う。中国では、メニューのアイテム数が多いので、とてもではないが馬蹄形では商品をうまくサーブできないのである。
92年からしばらく低迷が続いた北京の吉野家ではあるが、2001年~2003年まで年率60%で売上が伸びた。2004年でも売上対前年比110である。吉野家は上海にも11店舗出店している。「はやい、やすい、うまい」の基本コンセプトは不変である。中国では、それにプラスして、「きれい(清潔)、フレンドリー」が人気の秘訣である。