エール大学のふたりの教授によって昨年書かれた「環境マーケティング」の書籍である。本のタイトルを意訳すると、「環境をお金に変える戦略」とでもするのが適当だろうか?もっと気のきいた翻訳の仕方もあるかもしれない。
内容は、三ツ星である。良い本だが、ものすごくお勧めできない理由は、以下の通りである。評価できる点は、枠組みが素敵であること。これは後に説明する。欠点は、環境を測定する、数値化するといいながらも、実例が数社に限られていること。数値例はまったく出てこない。この点については、大学教授といいながら、コンサルタントが書いた本のスタイルである。アカデミックには不満な内容であった。
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内容を紹介していく。最初に、本書は「エコ波乗り企業」(Green-WaveRiders)の紹介から始まっている。パタゴニア、HP、3M、Nike、日本ではトヨタなど。こうしたグリーン企業は、株価(時価総額)が近年、その他企業とくらべて大きく上昇している。そんなイントロダクションであるが、マクドナルドやフォードが、エコ波乗り企業の範疇に入っているのがわたしは気にいらない(第一章;Eco-Advantage)。
第二章(Natural Drivers of the Green Wave)は、なぜなエコ波乗り企業にならなければならないか?現代的な環境要件を列挙したものである(以下は、かなり意訳している)。(1)気候変動、(2)エネルギー問題、(3)水資源の枯渇、(4)生物多様性(の消滅)と土地資源の有効利用、(5)化学品、有害物質、重金属による環境汚染問題、(6)大気汚染、(7)廃棄物処理問題、(8)オゾン層の破壊、(9)海洋汚染と漁業資源、(10)森林の消滅、の10個の要因をあげている。正しい。
第3章(Who’s Behind the Green Wave?)は、プレイヤーの紹介である。企業を中心にした5つのプレイヤーとして、消費者(地域)、投資家、企業、オピニオンリーダー、政府や監視機関を上げている。
これまでが、第一部の入門部分である。第二部は、エコ優位性(Eco-Advantage)をどのように利するべきかについて、「エコ波乗り戦略」が述べられている。環境マネジメントの枠組みを、上半身(Upside、翻訳が汚い?)のマネジメントと下半身(Down Side)のマネジメントによって分類している。上半身(首から上)は、「収益」に関連する部分のマネジメントで、エコ・デザインとエコ・マーケティングとエコ・製品開発。それにプラスして、エコ的なサービス部分を可視化(見える化)すること。下半身(首から下)の部分は、「コスト」と「リスク」に関係する部分である。コストは、エコ効率上昇、エコ費用削減、価値連鎖上のエコ効率に分類されている。
ここまで読んだところで、残り(第3部以下)は飛ばし読みしてしまった。従来の3R(Recycle, Reuse, Reduction)に加えて、環境文化システムの再デザイン(Redesign)が提案されている。枠組みはおもしろいが、実現性はあまり議論されていない。
感想: ちょっと時間が無駄だったかな?めずらしく読書投入時間を後悔してしまった。